共選を担当いたしましたおさ虫です。
たかこさんの選評が出ましたので、私も選評(と言うよりコメント)させていただきます。
時節に合った題で、作りやすい題は無いかと悩んだ結果、この題を選びました。5文字なので上五にも下五にも使える事もあってか題を読み込んだ句が何と9割を占めていました。雪女と聞くとラフカディオ・ハーンの「怪談」を連想してしまいます。このお話は朝ドラにも登場しているはずです。ですが雪女は他にも沢山いるのです。どんな雪女が出て来るか、ワクワクしながら選をさせていただきました。意外だったのは、怖ろしい女としてよりも、可愛いい女として読まれた句が多かった事です。奇想天外な雪女や雪の降る日に衆議院選挙がありましたので高市さんダブらせた句もありました。そんな中で私の心に刺さった秀句と佳句についてコメントさせていただきます。
秀1 雪しんしん白いおんなの物語
確か時実新子さんの言葉だったかと記憶していますが「題はヒント」と言うのがありました。題を意識し過ぎると題の説明っぽい句になり勝ちです。単なる「ヒント」ぐらいに考えて、そこから発想を広げていった方がいい句が出来るという事だと思います。
この句、題は読み込んでいませんが「雪女」と言う意識が読み手にはあるので、「白いおんな」=「雪女」と読むでしょう。でも、そう読んでしまえば単なる「民話の前置き」で終わってしまいます。句はやがて題を離れて独り歩きします。その時はもう、雪女は読み手から消えています。そして「白いおんな」って何だろう?「物語」って何だろう・・と興味を示すはずです。この句は雪女と言う題から出発して白いおんな=自分を詠んだものと解釈しました。さてどんな物語が隠されているのか。句の姿形も申し分なく、「し」の韻の効果もあって耳触りの良い句に仕上がりました。文句なしの秀句だと思い、秀1にさせていただきました。
秀2 冬季五輪みんな鮮やか雪女
冬季五輪の句が数句ありました。全て選手を雪女に喩えた見立ての句です。時は今、五輪中継真っ盛りですから、この中から1句、秀句を選びたいと思い、この句をピックアップさせていただきました。「みんな鮮やか」がピッタリの表現だと思いました。表彰台に上る選手の顔はみんな鮮やかでした。男の選手もいるのに何で雪女?と思われるかも知れませんが、それを言っては野暮。男か女かよりも技の素晴らしさに感動しているのですから。雪面を疾走し宙を舞う姿、とても人間業とは思えません。あの人たちは皆、「雪女」だと思いました。
秀3 真夏にはビキニ姿の雪女
ナンセンスな面白さがある句と言う事で秀句に頂きました。ユニークな発想の句が山ほどありましたが、面白さと膝ポンの両方を持っていたのがこの句でした。この句も怪談の雪女から大きく飛躍しています。冬にスキー場でカラフルな衣装を着て、はしゃいでいる若い女性を雪女に喩えたとすると、彼女たちは夏には沖縄かハワイの海でビキニ姿ではしゃぐのかも知れません。若いですからね。だとすると、さほど現実離れした話でも無さそうですよ。
雪女みたいな妻と五十年
この句、なんと薄情な夫・・と読んでしまえば身も蓋もありません。私は逆の意味で読みました。雪女は細身で美人、それに多産系で子煩悩。情が熱くて男に尽くすタイプでしょ。そんな女性と金婚の五十年を迎え・・羨ましい限りです。自分の妻をあからさまに褒め千切っては川柳になりません。この句のように貶すと見せかけて実は誉めている・・これが味わい深い句になる秘訣だと思います。ちょっと深読みしないとわかり難いですがいい句だと思いました。
ぽっちゃりの雪おんなではダメですか
雪女を男目線で読んだ句が多かったです。恐ろしい女なのにそんなことは横に置いて、色白で細身で美人・・どうしても男は好色の目で見勝ちです。なので、ちょっとセクハラ気味の句もありました。この句が面白かったのは「ぽっちゃり」を持ってきたことです。ぽっちゃりの雪女を登場させたのはこの句だけでした。笑えました。「ダメですか?」と口語調で迫って来るスタイル、これも一種のお色気かも。
白ずくめ今日の私は雪女
この雪女にも怖さは全くありません。鏡の前に立っているファッション好きの一女性。自分を雪女に喩えています。もちろん可愛いい雪女が想像できます。この季節、街を歩くと帽子からマフラー、手袋、コートまで白でコーディネイトした女性を見かけます。清楚と言うより高貴な気品すら感じます。なかなかいい感じです。「~ずくめ」という言い方、川柳ではあまり見かけませんが、いい表現ですね。
美しい妻に出逢えた雪の夜
この句も題を読み込んでいない句なので目を引きました。「雪の夜」と「美しい」「出会う」でやっぱり雪女を想像しました。自分の妻を美しいと誉めて、それを句にするなんて・・許せん!と一瞬思いましたが、よく読むとそうでも無さそうです。私なりに解釈すると、この夫は普段、妻を美しいとは思ったことが無かったのです。ところが雪降る夜道でふと見た美しい女性、一瞬雪女かと思ったが、よく見たら、何との自分の妻ではないか。雪に化かされてしまったなあ、と言う句だと思いました。
雪女夏はお岩がお当番
これはユーモア句です。想像もここまで来ると笑えてきます。雪女がビキニ姿になると言う句は先ほど紹介しましたが、この句は四谷怪談の「お岩さん」になるのだというから愉快です。しかもそれが「当番で」と言うから二重に笑えます。雪女さんも組合か一座を持っているのでしょうか。まるで元締めがシフト組んでいるみたいに面白い句に仕上げましたね。
選句は苦しかったけれども、お蔭でたくさんの雪女たちに逢えました。私好みの雪女もいましたよ。また次回もよろしくお願いします。