席題32「吹く」秀吟37句(出句順)柳歩選
 

すきま風吹いて終わった恋でした             たかこ

木枯らしが吹く前に摂る皮下脂肪                           益弘

口笛の高い音から狂い出す                 吉一 

タンポポの綿毛を吹いているほっぺ            のりこ
ゴム風船二度目は意地を張りません

伊吹颪近江の国を凍えさせ                 のりこ
吹き出しがなければ喋れないマンガ
日本人には吹っかける土産店
管楽器肺活量を鍛えねば
パレードが終わり紙吹雪の掃除

マニフェストなどどこ吹く風の大不況             閑雲

いっぱいできるせっかちの吹くしゃぼん玉         久美子
いい風が吹いてぎんなん落ちてくる
次の風に乗ろうと覚悟した葉っぱ
追い風が強すぎたのかつんのめる

台風のお陰で仕事貰ってる                   閑雲 

傷口をふうふう吹いてなぐさめる                        久美子

ほら吹きとばれないほどの嘘はつく                    久美子
直線の街ビル風が吹きぬける
吹き消したつもりの恋が燃え上がる

風が吹くのを待っているジャンプ台             久美子 
手品見るように仕上がる吹きガラス
ラッパ吹く時におへそにいる力
気合入れないと風船ふくらまず

吹き消した噂煙を上げている                  閑雲  
世界不況吹き荒れるだけ吹き荒れて

逆風に背筋伸ばしている案山子                         閑雲

四十路には吹いて踊ってなんて無理            久美子 
憂いなく風に吹かれているすすき

お灯明息で消してはいけません               のりこ 
強風に帽子押さえるよりも脱ぐ
支度遅い妻を急かせる空吹かし

人生の吹き溜りには居たくない                 益弘  
秋の陽と風に吹かれて吊るし柿


木枯らしにあえて向かって行く決意              のりこ
風の好みで美人の髪に紅葉落ち
ドライヤー必要のない父の髪

吹けば転がるボクも空き缶も                 (軸)

柳歩の「吹く」15句 久美子選

台風の無情 梨園りんご園
晴耕雨読 風の吹く日は鳥になる
運命の風が神昌丸に吹く
いらんこと言うから風が吹いてくる
口笛を吹くとペダルも軽くなる
風待ちをしているうちに取った歳
顔色も変えず大きな法螺を吹く
散骨にふさわしくないつむじ風
口笛を吹いて涙を乾かそう
ハーモニカで吹く君が代は難しい
木枯らしも一緒に入る自動ドア
尺八を吹く虚無僧のいい背筋
突風が吹いてテントが舞う祭り
千の風いま吹く風は母だろう
風が吹くばかり売れない分譲地