席題33「気持ち」秀吟44句(出句順)柳歩選
 

人民の気持ちがドブに捨ててある              伴久 
そんな気になると地獄へ落とされる
それもそうだとは思ってみるのだが
にっこりとうなずき合っているふたり
添削をなさった方の気が知れぬ
要するに俺の僻みだとも思う

お互いによいしょしている心地よさ                           益弘
気持ちから入って唄う名アリア

いつまでも回っていたい観覧車               たかこ
いい気持ちになるから恋が止められぬ

いつまでも気持ち切らさぬ挑戦者              閑雲 
いい気もちにさせてくれてる妻がいる

抱きしめてやるとほどけていく気持ち                    久美子
飲んでいるときは大きくなる気持ち
三分もいらぬ気持ちが変わるまで
気持ちいい朝だと思う日曜日

突っ込みの気持ちがぼけに届かない           たかこ  
気持ちよくお昼寝中に電話鳴る
散々だった今年へ気持ち切り替える

気持ちとは別に笑顔を持つピエロ             のりこ
クリスマス親の気持ちと子の気持ち

食べることばかり気にしている無職             伴久
「お坊っちゃまなのさ」と首相談話聞く
「たいがいになさい」と言いたそうな妻


野暮ですね没句説明したくなる               吉一 
寂しいなヤンキースから出る松井

相手には届かないのが片想い                益弘
気持ちいい夢の続きは見えぬもの

五円玉ぐらいに込めておく気持ち             久美子 
お気持ちでいっぱいになる募金箱
泡見つめながら挨拶聞く気持ち
情けない気持ちで帰る保護者会

メリークリスマス平気で言える仏教徒                        益弘

木の気持ち無視して伸びた枝を切る            のりこ 
そんな気はなかったニュートンのリンゴ

年賀状もらう気持ちと出す気持ち                      久美子
へたくそな字だが気持ちは込めてある
正直な気持ちを知っている日記                    
二度寝してとても豊かになる気持ち

来年に向ける気持ちに嘘はない              たかこ

もうここを動きたくない日向ぼこ               のりこ
犬棒かるた解説をするおばあちゃん

近づける気持ちで打てばカップイン             吉一
雪予報妻の通院気に掛かる

気持ちよく話せることじゃない話               (軸)

柳歩の「気持ち」10句 久美子選

温泉に浸かると萎えてくるやる気
気持ちより義理が優先する袋
気持ちよく出していただく額にする
気持ちでは負けぬわたしも蟷螂も
愛妻弁当妻の気持ちはこの程度
指つめて神も仏もない気持ち
抱きしめてみたいおんなも札束も
気持ちいいふりで抱かれているペット
気持ちよさそうに眠っている柩
カミさんの気持ちは足音で分かる