席題20[待つ」秀吟58句(出句順)  柳歩選


信楽の狸が待っている飲み屋                 吉一
おたがいが道を譲って待っている                
待ち時間ゼロが取り得のホーム蕎麦                       のりこ
待合室だあれも居ないのも不安
給湯器湯が出るまでを待っている
立ち読みをしてたら足らぬ待ち時間
待つつもりなのにすぐさま呼び出され           久美子
待っててももう恋文は届かない
待ってるとなかなか届かない柳誌
悔しいが惚れた弱味で待たされる              星児
お待ちしていますと電話温かい               のりこ
クロネコはエライ待つ間もなく届く
持ち駒の角が待ってる王手飛車                             吉一
コース行く猿にプレーを待たされる
うす型のテレビを買って待つ五輪               のりこ
神様が降りてくるのを待っている                          久美子
二時間も待つほどうまいものですか
待てと叫ぶから逃げたくなってくる
帰れとは言わぬが郷で父母が待つ                          修
長いこと待たせた電話切れている
大地震待ってる人もいるだろう
新米のレジでなかなか進まない                のりこ
退院の主婦を待ってる台所
ご気軽にと借り手を待っているチラシ                 吉一 
夏休みを待っていたのに来ない孫
待ったなしで落ちる夕陽が恨めしい                       伴久
寝て待った果報を聞いたことがない
待っていてくれると思い込む男
待っているつもりはないが地震予知
締め切りは過ぎたが二日ほどは待つ             のりこ              
皆さんの笑顔を待っている鈴鹿                星児
荷物だけ列をつくって待っている
待ちわびて寝ついた頃にパパ帰る
雰囲気を高めるために待たされる             久美子
ぐい飲みと日が沈むのを待っている
あとは待つだけだと蜘蛛が汗を拭く
待たせるという作戦で武蔵勝つ                のりこ
信号機故障と思うほど待たす
終わるのを正座の脚が待つお経
長い列並ぶ間の二句三句                             良夫
待つよりも待たせるほうが気にかかる
野次馬もまだかまだかと救急車                       吉一
めじろ待つ餌にひよどりばかり来る
直ぐに行くは口癖だから待ってやる
携帯が鳴ってパターが待たされる

花粉症雨の降るのを待っている                 のりこ
待合室自分の病気まだ軽い
パパを待ついいえお土産待ってるの
そのうちに孫からきっと来るメール              たかこ
揃うまで待てずにチョッとつまみ食い               星児
寝て待てどやっぱり来ない のが果報              良夫   
返しなど要りませんよと待っている                 修
じっくりと待っていられぬのも若さ               久美子
雪解けをじっと待ってる屋根瓦
春を待つ気持ちになれぬ花粉症
待ちながら鼻毛抜くのはやめなさい   
もう一度待ったをかける心理戦
入学式まで待ってください満開は                のりこ

ウメサクラほどには待ってもらえない                    (軸)

柳歩作品(久美子選)

老眼鏡も傘も主を待っている
フェイントをかけて出方を待っている
マラソンの一人一人を待つゴール
神様も賽銭箱も待っている
山頂はいつも人待ち顔である
待ってても虫歯は自然治癒しない
禁煙席の空くのをずっと待っている
階段を降りたところで待っている