席題  24「 泣 く」 秀吟45句 柳歩選(出句順)
 

泣くという武器を男に盗まれる                たかこ
単純なわたしやさしくされて泣く
涙より言葉が先に泣いている                  吉一
候補者の妻の涙も板に付く
ここで泣かないと世間が狭くなる                伴久
吠えて一票泣いて二票にするつもり  
奥の手として原子炉と泣き落とし    
泣き顔になったらあとが怖ろしい    
泣くはめになるのにめげず片思い               のりこ
そんな手に乗るもんですか泣き落とし
たいていのことは泣いたら許される                         久美子
泣きません冷たい人と言われても
いつまでも泣いて周りをしらけさす
がんばった証拠のように泣いている
喪主だから泣いてる暇はありません               のりこ
おっぱいかおしめか泣き声でわかる
ハンカチでは足らずタオルがいる涙

本当に男が泣いた別れ際                      吉一
両親の前では泣かぬ身の不幸
泣き寝入りしそうな人が狙われる
泣きながら語らせている聞き上手
懸命に泣いているのに無視される                           久美子
タイミング外し泣けないまま終わる
これ以上飲ませてならぬ泣き上戸
負けて泣く子では遊んでもらえない
嘘泣きが出来て甲羅が厚くなる                   伴久
一葉の頃のおんなでしのび泣く
先生も泣いて○×付けている
泣き止んでお腹すいたという少女                 のりこ
すぐ泣いて親を味方にする妹
留守がちの家で集金人泣かせ
全没のショックで少し泣きました                 久美子
慰めてくれそうだから泣いてみる
人魂も泣く芳一の名調子
叱ってる方が泣きたくなってくる             
泣きに行くあなたの胸が頼りない
泣いたのはお酒のせいにしておこう
コンタクトも眼鏡も泣く時は不便
業平も光源氏もすぐに泣く
すぐに泣く女優になればいい男                   たかこ
人肌が欲しくて猫も鳴いてくる
泣きそうと言ってるだけで泣かぬ人                 のりこ
子が泣いて満足してる獅子頭
泣き寝入りするさと甘く見られてる
泣き付いたことは忘れてすまし顔

友だちの書いた小説では泣けぬ                (軸)

柳歩作品(久美子選)

語り部のためにもここは泣かないと
泣きに来た海で百円玉拾う
泣き真似も覚えて少女からおんな
日本の国技がしゃくりあげて泣く
つまらないドラマで泣けるのも女
図書館で子を泣かせてはいけません
友だちの書いた小説では泣けぬ
見所がある口惜しくて泣いている
泣いたってもう相撲には戻れない
よその子が泣くとほんとに喧しい
泣きたいのはこっち ぶつけたのはあっち
納棺師が泣くと仕事がはかどらぬ