川柳の作り方(レジュメ) H.28.10.12 鈴鹿市民大学講演   吉崎柳歩

○「書き方」と「作り方」

  @ エッセイ、詩、小説、私小説、児童文学の書き方。警句と評伝の書き方(散文)
     ・書きたいことが既に決まっている→構想(主題・仕組・内容・表現形式など、あらゆる要素の構成を思考すること)→書き方
   A 俳句、短歌、川柳の作り方(韻文)
       ・感覚、感動、発見、見つけ、見解、意見→作句の動機、発想(その「こと」を他人に簡潔に伝えて思いを共有したい)→作り方

○世界で最短の17音の表現形式(韻文)に「思い」を乗せる(作り方→詠み方)

      ・他人が書いたものを「読む」、読んで理解する、感動する、共感する  
      ・自分の思いを「詠む」、詠んで表現する、共感してもらう (俳句も川柳も)
      ・うっとりしてもらう→感じてもらう−俳句(写生が基本)
          菜の花や月は東に日は西に(与謝蕪村)                     主役は情景・季節感
     人の世を少し離れて螢飛ぶ(伊藤政美)
   ・なるほどと思ってもらう→頷いてもらう−川柳(観察が基本)
          れんげ菜の花この世の旅もあと少し(時実新子)     主役は人間とその思い
       人の歯でご飯を食べている歯医者(作者忘却)

○川柳は、一に発想、二に発想、三に表現(詠み方)

   ・発想−観察(好奇心)から生まれる(自分で磨くしかない)
   ・自由吟と課題吟
     どちらもリアリティー(現実性、迫真性)を大切に、ただし、必ずしも事実、真実でなくてもいい(虚実皮膜)
   ・課題吟は前もって「課題」が与えられてから作句するもの
     経験と考察
     入選しようという動機にすり替わりやすい
     いまさら言ってどうなる、ということでも課題吟なら言えることもある
     ・表現と表記(テクニックとしての修辞法)
   ・多読と多作(作句動機の呼び水)

○句ができたら、もっと良い表現ができないか推敲しよう

   ・言いたいことが伝わるか(読者の視点で)
   ・説得力があるか(頷いてもらえるか)
    ・リズムはいいか(口誦してみよう)

(資料)


川柳づくり十の心得
 
 @川柳は人間を詠む共感の文芸
     句のどこかに人間の息遣いがあること。
 A川柳は5・7・5などの韻文である
     他に8・9、9・8など17音字の24音長の韻文である。
     俳句は「感じて」もらう。川柳は「頷いて」もらう。  
 B川柳は口語体で作る
     俳句の切れ字「や」「けり」「かな」は原則用いない
     差別語や低俗な言葉は用いない。難しい言葉は避ける。
 C季語は入れる必要はない
     季語は入っても構わないが入れなくてもいい。
     歳時記は不要だが、辞書はあったほうがいい。
 D川柳は言葉遊びや駄洒落ではない
    (例)汚職事件まずお食事に誘われる
    (例)いい家内10年経ったらおっ家内
 E川柳は一読明快でありたい
     耳で聞き、あるいは目で読み、すぐに句意が解ること
     一句一章、欲ばらず言いたいことを一つに絞ること。
 F川柳には雑詠と題詠がある
     自由吟と課題吟とも言う。題詠に埋没しないこと。  
 G川柳は万物が句材となる
     喜怒哀楽・穿ち・発見・滑稽・洒脱・抒情・情念・生活・仕事・恋愛・友情・お酒・スポーツ・現世・来世
 H川柳の基本は観察である
     よく見て発見する。発見(見つけ)した「こと」を川柳にする。感動のもとになった「こと」を川柳にする
 Iまずは身近なところから詠もう
    毎日の生活の中で体験したこと、見たこと、読んだこと、聞いたことなどで、心が動いたとき、その「こと」 を川柳にしてみよう。 

雑詠(自由吟)の作り方

 ○初心のうちはシンプル(単純)に、575で
    原句 朝起きて顔を洗って歯を磨く
    例句  @定年の朝もやっぱり歯を磨く
         A初出社息子も5時に目が覚める
              いままでの朝とは違う「こと」を詠もう。
    原句 糟糠の妻と暮らして50年
    例句 うるさいと思いながらもまだ夫婦    梶井良治
             なるべく具体的に自分たちの「こと」を詠もう。
 ○佳句の例
     遠慮せずあくびしてよい待ち時間      伊藤忠昭
     逆立ちをしても治らぬ物忘れ         上山堅坊
     ミニパトにやや欠けている威圧感      西山竹里
     冷蔵庫の悩みを聞いている夜更け     樋口りゑ
     天気図は読めても雨は降らせない     青砥たかこ
     バリアフリーにすれば攻め落とされる城  橋倉久美子
     新聞紙になればどの頁も同じ          橋本征一路
     軽トラがないと生きてはゆけぬ村      P霜石

題詠(課題吟)の作り方

 ○題詠で陥りやすいこと          
     ・皆が似たようなことを詠んでしまう(第一発想) 
     ・過去に詠まれたことを詠んでしまう
     ・課題を説明した句、報告した句になりやすい
    ・課題に凭れ(寄りかかり)やすい
    ・頭だけで作ってしまい心がお留守になる
    ・一句の中にいろいろ詰め込みすぎる

○題詠を作る上での心得          
   ・課題の言葉の意味を正確にとらえる    
   ・基本は雑詠と共通(EHI)
   ・易しい言葉で、シンプルに表現する
   ・課題を適切に消化する。課題の言葉が動かないこと
   ・自分独自の新鮮な着想を心掛ける    
   ・リズムが良いか口誦してみる      
   ・なるべくたくさん作って予選する

○添削の例
   課題「拭く」拭きとってあげる彼女をいたわって
              拭き取ってあげるのが自分なら「彼女」は変だろう。
              ○拭き取ってあげる貴女の涙なら
   課題「靴」お気に入り玄関待機させている    
         待機しているのが靴とは限らない。日傘かも知れない。
        ○お気に入りの靴がいつでもスタンバイ
   課題「遅い」出来上がり遅いが見事な作品    
          全部で17音だが、5444の文節でリズムに乗れない。
        ○遅いけど腕はたしかな出来上がり  
   課題「悔しい」悔しいと思わないから進歩せず  
         「良いことを言っている」だけの教訓川柳になってしまった。
        ○悔しいと思うわりには進歩せず  

○佳句の例
   「頭」  頭とは連携プレーしない口           小川はつこ
        回転の落ちた頭がいとおしい       日野 愿
   「危険」心臓の悪い妻には話さない        加藤吉一
        無理したらアカンファスナー弾けそう   岩田明子
   「適当」味方にも敵にもなれる距離にいる     大嶋都嗣子
        適当に書いてはならぬ遺言書         梶井良治   
   「探る」 マイナンバーに決してわたし探らせぬ 三村 舞
        ピーマンの中まで探る嫉妬心         西澤知子    

川柳の表記のしかた  

○川柳では原則として分かち書きはしない
   (分かち書き)   恋人の 膝は檸檬の まるさかな
   (正しい表記)   恋人の膝は檸檬のまるさかな  
○一本の棒のように書き、句読点は読者が判断する
   心象句の表現方法として「一字空け」が増えてきた。
○漢字仮名交じり文が日本語の基本
   漢字か仮名か片仮名か、句意に沿って適切な表記を心掛ける。無用な仮名表記、一字空けは避ける。
○現代文表記に関する内閣告示について
   送り仮名の法則など、合理的部分は遵守したい。

  (「川柳の表記について」は省略)