(血は澄んでいたか八月十五日)
問題提起の句でもあります。(濁る)という題に少し凭れているのではないかという気もしましたし、同じような句でも
(戦争の濁った記憶八月忌)の方が素直に題を捉えてるとも思いました。ですが、(血は澄んでいたか…)の句が私を離さなかったのです。
(濁り酒上澄みだけを父に注ぐ)
濁り酒の句は16句もあり第一発想の王道を行く句でした。ではなぜこれを頂いたのか。子供の頃、家で作るどぶろくの上澄みは一升瓶にうつし、お客さんと爺ちゃんだけの晴れの酒でした。ほとんど死語となった長幼の序を懐かしく思いました。
(国背負い濁るセーヌの水を飲む)国背負いが切ないです。
平井美智子