川柳の作り方  R.3.10.20 鈴カルカレッジ講座資料から     吉崎柳歩

●川柳づくり十の心得

  @川柳は人間を詠む共感の文芸
     句のどこかに人間の息遣いがあること。
   A川柳は5・7・5などの韻文である
     他に8・9、9・8など17音字の24音節の韻文である。
     俳句は「感じて」もらう。川柳は「頷いて」もらう。
   B川柳は口語体で作る
     俳句の切れ字「や」「けり」「かな」は原則用いない
     差別語や低俗な言葉は用いない。難しい言葉は避ける。
   C季語は入れる必要はない
     季語は入っても構わないが入れなくてもいい。
     歳時記は不要だが、辞書はあったほうがいい。
   D川柳は言葉遊びや駄洒落ではない
     (例)汚職事件まずお食事に誘われる
     (例)いい家内10年経ったらおっ家内
   E川柳は一読明快でありたい
     耳で聞き、あるいは目で読み、すぐに句意が解ること
     一句一章、欲ばらず言いたいことを一つに絞ること。
   F川柳には雑詠と題詠がある
     自由吟と課題吟とも言う。題詠に埋没しないこと。 
   G川柳は万物が句材となる
     喜怒哀楽・穿ち・発見・滑稽・洒脱・抒情・情念・生活・仕事・恋愛・友情・お酒・スポーツ・現世・来世
   H川柳の基本は観察である
     よく見て発見する。発見(見つけ)した「こと」を川 柳にする。感動のもとになった「こと」を川柳にする
   Iまずは身近なところから詠もう
      毎日の生活の中で体験したこと、見たこと、読んだこ と、聞いたことなどで、心が動いたとき、その「こと」 を川柳にしてみよう。 

●雑詠(自由吟)の作り方

   ○初心のうちはシンプル(単純)に、575で
      原句  朝起きて顔を洗って歯を磨く
      例句@定年の朝もやっぱり歯を磨く
          A初出社息子も5時に目が覚める
       いままでの朝とは違う「こと」を詠もう。
      原句 糟糠の妻と暮らして50年
      例句 うるさいと思いながらもまだ夫婦    梶井良治
       なるべく具体的に自分たちの「こと」を詠もう。
   ○佳句の例
        食べてすぐ寝たので牛になった牛   西山竹里
        あっという間に解体される一軒家    田沢恒坊
        バイキング卑しい顔になって食う     太秦三猿
         夫婦別姓離婚をしても分からない   佐藤千四
        変わり者と思っていない変わり者      戴けいこ
         老人も犬もしたくはないおむつ      橋倉久美子
         まっすぐに停めたつもりの駐車場   青砥たかこ
        人生が終わってしまう探し物       湯浅和枝

●題詠(課題吟)の作り方
 
   ○題詠で陥りやすいこと          
  ・皆が似たようなことを詠んでしまう(第一発想) 
  ・過去に詠まれたことを詠んでしまう
  ・課題を説明した句、報告した句になりやすい
  ・課題に凭れ(寄りかかり)やすい
  ・頭だけで作ってしまい心がお留守になる
  ・一句の中にいろいろ詰め込みすぎる
   ○題詠を作る上での心得          
   ・課題の言葉の意味を正確にとらえる 
    ・基本は雑詠と共通(EHI)
    ・易しい言葉で、シンプルに表現する
    ・課題を適切に消化する。課題の言葉が動かないこと
    ・自分独自の新鮮な着想を心掛ける    
    ・リズムが良いか口誦してみる      
    ・なるべくたくさん作って予選する
   ○添削の例
   課題「拭く」  拭きとってあげる彼女をいたわって
            拭き取ってあげるのが自分なら「彼女」は変だろう。
         ○拭き取ってあげる貴女の涙なら
   課題「靴」  お気に入り玄関待機させている    
            待機しているのが靴とは限らない。日傘かも知れない。
         ○お気に入りの靴がいつでもスタンバイ
   課題「遅い」  出来上がり遅いが見事な作品    
                            全部で17音だが、5444の文節でリズムに乗れない。
                     ○遅いけど腕はたしかな出来上がり  
      課題「悔しい」悔しいと思わないから進歩せず  
                           「良いことを言っている」教訓川柳になってしまった。
                     ○悔しいと思うわりには進歩せず  
   ○佳句の例
          「 腕 」    看護師の細い腕にもある力     西垣こゆき
                  腕章を付ければ怠けてはおれぬ  柴田比呂志
          「生意気」 生意気なところは妻に似た娘     山本 宏
                   いっぱしの口きく青い蒙古斑     木本朱夏
          「欠ける」 欠けていく月それぞれに美しい   日野 愿
                  一匹が死に一匹でいる金魚     天根夢草
          「長い」  電車より長く作ってあるホーム     圦山 繁
                   独り占めされてうんざりするマイク  樋口りゑ

●川柳の表記のしかた
  
   ○川柳では原則として分かち書きはしない
       (分かち書き)   恋人の 膝は檸檬の まるさかな
       (正しい表記)   恋人の膝は檸檬のまるさかな  
   ○一本の棒のように書き、句読点は読者が判断する
        心象句の表現方法として「一字空け」が増えてきた。
   ○漢字仮名交じり文が日本語の基本
         漢字か仮名か片仮名か、句意に沿って適切な表記を心 掛ける。無用な仮名表記、一字空けは避ける。
   ○現代文表記に関する内閣告示について
         送り仮名の法則など、合理的部分は遵守したい。