●川柳づくり十の心得
@川柳は人間を詠む共感の文芸
句のどこかに人間の息遣いがあること。
A川柳は5・7・5などの韻文である
他に8・9、9・8など17音字の24音節の韻文である。
俳句は「感じて」もらう。川柳は「頷いて」もらう。
B川柳は口語体で作る
俳句の切れ字「や」「けり」「かな」は原則用いない
差別語や低俗な言葉は用いない。難しい言葉は避ける。
C季語は入れる必要はない
季語は入っても構わないが入れなくてもいい。
歳時記は不要だが、辞書はあったほうがいい。
D川柳は言葉遊びや駄洒落ではない
(例)汚職事件まずお食事に誘われる
(例)いい家内10年経ったらおっ家内
E川柳は一読明快でありたい
耳で聞き、あるいは目で読み、すぐに句意が解ること
一句一章、欲ばらず言いたいことを一つに絞ること。
F川柳には雑詠と題詠がある
自由吟と課題吟とも言う。題詠に埋没しないこと。
G川柳は万物が句材となる
喜怒哀楽・穿ち・発見・滑稽・洒脱・抒情・情念・生活・仕事・恋愛・友情・お酒・スポーツ・現世・来世
H川柳の基本は観察である
よく見て発見する。発見(見つけ)した「こと」を川 柳にする。感動のもとになった「こと」を川柳にする
Iまずは身近なところから詠もう
毎日の生活の中で体験したこと、見たこと、読んだこ
と、聞いたことなどで、心が動いたとき、その「こと」 を川柳にしてみよう。
●雑詠(自由吟)の作り方
○初心のうちはシンプル(単純)に、575で
原句 朝起きて顔を洗って歯を磨く
例句@定年の朝もやっぱり歯を磨く
A初出社息子も5時に目が覚める
いままでの朝とは違う「こと」を詠もう。
原句 糟糠の妻と暮らして50年
例句 うるさいと思いながらもまだ夫婦 梶井良治
なるべく具体的に自分たちの「こと」を詠もう。
○佳句の例
食べてすぐ寝たので牛になった牛 西山竹里
あっという間に解体される一軒家 田沢恒坊
バイキング卑しい顔になって食う 太秦三猿
夫婦別姓離婚をしても分からない 佐藤千四
変わり者と思っていない変わり者 戴けいこ
老人も犬もしたくはないおむつ 橋倉久美子
まっすぐに停めたつもりの駐車場 青砥たかこ
人生が終わってしまう探し物 湯浅和枝
●題詠(課題吟)の作り方
○題詠で陥りやすいこと
・皆が似たようなことを詠んでしまう(第一発想)
・過去に詠まれたことを詠んでしまう
・課題を説明した句、報告した句になりやすい
・課題に凭れ(寄りかかり)やすい
・頭だけで作ってしまい心がお留守になる
・一句の中にいろいろ詰め込みすぎる
○題詠を作る上での心得
・課題の言葉の意味を正確にとらえる
・基本は雑詠と共通(EHI)
・易しい言葉で、シンプルに表現する
・課題を適切に消化する。課題の言葉が動かないこと
・自分独自の新鮮な着想を心掛ける
・リズムが良いか口誦してみる
・なるべくたくさん作って予選する
○添削の例
課題「拭く」 拭きとってあげる彼女をいたわって
拭き取ってあげるのが自分なら「彼女」は変だろう。
○拭き取ってあげる貴女の涙なら
課題「靴」 お気に入り玄関待機させている
待機しているのが靴とは限らない。日傘かも知れない。
○お気に入りの靴がいつでもスタンバイ
課題「遅い」 出来上がり遅いが見事な作品
全部で17音だが、5444の文節でリズムに乗れない。
○遅いけど腕はたしかな出来上がり
課題「悔しい」悔しいと思わないから進歩せず
「良いことを言っている」教訓川柳になってしまった。
○悔しいと思うわりには進歩せず
○佳句の例
「 腕 」
看護師の細い腕にもある力 西垣こゆき
腕章を付ければ怠けてはおれぬ 柴田比呂志
「生意気」 生意気なところは妻に似た娘
山本 宏
いっぱしの口きく青い蒙古斑 木本朱夏
「欠ける」 欠けていく月それぞれに美しい
日野 愿
一匹が死に一匹でいる金魚 天根夢草
「長い」 電車より長く作ってあるホーム
圦山 繁
独り占めされてうんざりするマイク 樋口りゑ
●川柳の表記のしかた
○川柳では原則として分かち書きはしない
(分かち書き) 恋人の 膝は檸檬の まるさかな
(正しい表記) 恋人の膝は檸檬のまるさかな
○一本の棒のように書き、句読点は読者が判断する
心象句の表現方法として「一字空け」が増えてきた。
○漢字仮名交じり文が日本語の基本
漢字か仮名か片仮名か、句意に沿って適切な表記を心 掛ける。無用な仮名表記、一字空けは避ける。
○現代文表記に関する内閣告示について
送り仮名の法則など、合理的部分は遵守したい。