目次5月号
巻頭言 「 ツツジとサツキ
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・追悼 遼さん・徳三さん     
・ポストイン     
・お便り拝受
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

堤 伴久・柳歩
木本朱夏
たかこ

柳歩

清水信
橋倉久美子
柳歩


 
バックナンバー
20年 4月(172号)
20年 3月(171号)

20年 2月(170号)
20年 1月(169号)

19年12月(168号 )
19年11月(167号)
19年10月(166号)
19年 9月(165号)
19年 8月(164号)
19年 7月(163号)
19年 6月(162号)
19年 5月(161号)
19年 4月(160号)
19年 3月(159号)
19年 2月(158号)
19年 1月(157号)

18年12月(156号)
18年11月(155号)

18年10月(154号)
18年 9月(153号)
18年 8月(152号)
18年 7月(151号)
18年 6月(150号)

18年 5月(149号)
18年 4月(148号)
18年 3月(147号
)
18年 2月(146号)
18年 1月(145号)









 

巻頭言

 

ツツジとサツキ

 

鈴鹿市は植木の生産地として有名らしい。特にツツジとサツキの生産は本市を含む三重県が全国一と聞く。

 私は、このツツジとサツキの見分け方が苦手である。サツキはツツジ科で別名サツキツツジと呼ばれるらしいから、見分けがつかなくても許されるかもしれない。我が家の前の歩道と車道を隔てる垣根の花木も、長い間どっちか不明だったが、低木で初夏に咲き出すからサツキであることがやっと判明した。

 

 このサツキは鈴鹿市の花に認定されている。

 さてツツジの方は、本市が全国一の生産量を誇っている。八百種類もあると言われ、平戸ツツジ、久留米ツツジ、クレイユキなどがある。

桜が散ると「ムラサキツツジ」が境内を染め替える、稲生神社(伊奈富神社)は県下でも屈指の神社である。このムラサキツツジも、県指定名勝となっている。すぐ近くに住みながら、このムラサキツツジが咲く頃には、数えるほどしか行ったことが無い。四月中旬から稲生山にムラサキのトンネルが現出して、大勢の観光者で賑わうというのに。

赤土でやせた土壌が生育に適しているようだ。

 

三重にはもう一か所、御在所岳のツツジが有名である。ロープウエイから望む、山頂近くの岩壁は、色あざやかなピンクのじゅうたんを敷き詰めたようできれいだ。

 

「ツツジとサツキ」双子の姉妹のような花の名前、いろいろ調べているうちに、描いてみたくなってきた。二年前、藤の花を表紙絵にしたように、今回は「ツツジ」を描かせて頂く事にしました。

                                                                                                                                                   たかこ

すずか路より
道なりと言ってカーナビ一休み 加藤吉一
新車来るたぶん最後になる車 北田のりこ
一年も待たせ三日で散るさくら 山本喜禄
甘え下手わたし可愛くない女 鍋島香雪
庭先で絵の題材が咲き誇る 山本鈴花
テープカット横一列に偉い人 山本 宏
振り出しに戻る何でもないように 沢越建志
何も言わず包んでくれた恩がある くのめぐみ
電子辞書買ったばかりに六版が 鈴木章照
お隣りの芝生のゴミが気にかかる 堤 伴久
亡き父の苦労を偲ぶ春の夜 木村彦二
雨だから見えないものも目に映る 青砥英規
農に生き農を誇りに父の背な 秋野信子     
一安心待合室で読む柳誌 鶴田美恵子
長い助走男だんだんくたびれる 山口龍一
高齢者医療の先にある樹海 寺前みつる
悲しくて飲む日の酒は胃にたまる 水谷一舟
強引な理屈が通る非常口 坂倉広美
せっぱつまらぬと仕事も句もできぬ 橋倉久美子
ロボットに教えてもらう時が来る 高橋まゆみ
灰汁抜きが大事蕨も人間も 小嶋征次
日本の春だ桜だ瞬く間 竹内由起子
名付け親はどいつだ後期高齢者 長谷川健一
藤の花みな正直に垂れ下がる    安田聡子
葉桜の元気自分に当てはめる 瓜生晴男
骨董をあさる余裕の暮らし向き 水野 二
ケイタイの在り処を電話してさがす 上田良夫
デモもない国ですんなり再議決 吉崎柳歩
ぎりぎりの線で踏ん張る足の裏 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

 
 
171号から                                 木本 朱夏

・雪折れの梅に包帯してやろう     上田 徳三

・三度目の積雪少し飽きてくる     橋倉久美子

・美しく熔けそこなった雪だるま      〃

・幸せな一日だった雪景色       竹内由起子

・古い家雪が積もればみな同じ     長谷川健一

 

 地球温暖化とはいえ、中部地方にも何度か雪が積もったのですね。私の住む和歌山ではチラチラと舞うことはあっても、積もることはほとんどありません。
 娘が札幌に住んでいたころ「いいわね、雪が降って」と言って「雪国に住む者の苦労を知らない」とこっぴどく叱られたことがあります。雪国に住む人にとっての雪は、風流に愛でるものではなく白い悪魔であり、闘う自然なのですね。
「雪折れの梅に包帯する」「美しく熔けそこなった雪だるま」「幸せな一日」等々、雪を読みながらも雪を鑑賞して楽しむ余裕があったようです。

 

買い物にポリシーがあるおばあちゃん 鍋島 香雪

 食品の産地偽装や賞味期限の改竄、異物の混入した飲み物や冷凍食品など、食の安全が脅かされています。

昔は鼻で嗅ぎ、目で見て、触ってみて、五感を駆使しての経験が物を言ったのです。今こそ、ポリシーがある頼もしいおばあちゃんの知恵袋をお借りしましょう。

 

・病気なんてコップの中の事故である  くのめぐみ

 長寿高齢化の時代とはいえ、病気と縁のない幸せな人はほとんど居ないでしょう。一病息災という言葉もあります。病気を負と捉えず「コップの中の事故」と言い切れる作者の体験でしょうか。

 

・一人だけ解ってくれたのが敵     堤  伴久

 男子ひとたび家を出ずれば七人の敵あり。家中には八人目の敵が居たりして……。それはさておき。誰も解ってくれない焦り悩みを、解ってくれたのが敵だったというのです。昨日の敵は今日の友、肝胆相照らす生涯の友になることでしょう。

 

・尖る日は春を探しに出るカメラ    山口 龍一 

・夕焼けと昔話をして帰る       吉崎 柳歩

 夕焼けをしみじみ眺めることもなく、足元のスミレに気がつかないまま、何かに追いかけられているうちに美しい春が過ぎてしまいました。反省です。

                                   (川柳塔同人・和歌山市在住)
 

4月26日(土)例会より
宿題「 詰まる 」 吉崎柳歩 選と評
  玉手箱ほど煙の詰まる喫煙車 橋倉久美子
  挨拶が詰まってもいい箇条書き 加藤吉一
 止 ちくわの穴に何か詰めたくなる料理 北田のりこ
 軸 F1の時には詰まるレールバス 吉崎柳歩
宿題「 器用 」 加藤吉一選
  手伝いに口の器用さ無用です 上田良夫
  末席でロダンのポーズ器用だね 東川和子
神様が器用に彫ったのが指紋 橋倉久美子
器用な手に医師を育てた手術台 加藤吉一
宿題「 器用 」 東川和子選
  ごはん食べながら化粧ができますよ 青砥たかこ
  器用ではとても打てないホームラン 長谷川健一
 止 タコさんになれてうれしいウインナー 橋倉久美子
器用にもレベルがあってかなわない 東川和子
席題「 困る 」 互選高点句
8点 いざという時に喪服が入らない 橋倉久美子
7点 困ってる隣の猫と奥さんに 西垣こゆき
6点 飛び乗った電車この駅止まらない 小嶋征次
5点 携帯電話持たず周りを困らせる 橋倉久美子
   困ったなプライドだけはありすぎて 青砥たかこ
特別室

小野慈美華

 

 自分は小野慈美華氏に、面識はない。

 昭和3年、刈谷市生まれ。新潟医科大学卒。大学在学中に川柳に惹かれ、卒業後、関西古川柳研究会に所属、実作と研究を重ね、現在までに次のような著作がある。

『誹風妻楊枝私注』

『川柳河豚考付薬喰考』

『川柳江戸の民間療法』

『江戸の町医者』

『江戸川柳尾張三河名所歩き』

 現在は医療法人小野耳鼻咽喉科理事長の要職にあり、尚川柳への探求の情熱を持ち続けている姿勢は感心。

 桐生久主宰の同人雑誌『矢作川』(西尾市)4号に「江戸の花見」を寄稿されていて、それを観る。

 

 花の宵今道心の沢山を

 そりゃ出たよ行かぬ事だと花の宵

 

 江戸川柳である。今道心とは、仏門に入ったばかりの人のこと、ここでは「てるてる坊主」を指し、花見を予定した前日の行事が、晴れを祈る子らの様子。

「そりゃ出たよ」は、げじげじ虫が出た意、この虫が出ると翌日は雨という俗信があり、共に桜見物の前夜のハラハラぶりを描いたもの。

 

 白壁を両の手が塗る花の朝

 花の朝女房なかなか良い女

 

 花見に行く朝の、家庭の主婦の化粧ぶりを描いたもの。

 

 ふだん着をほうりちらかす花の朝

 花の朝傘で半時程もめる

 

 花見に出かける前のトラブル。傘を持っていくかどうかでもめる状態。今時はこんなことはないだろうが、桜の見頃は毎年のことだが、ごく短い。

 本誌掲載は花見の頃を遥か過ぎての事になるだろうから、気の抜けた話題になるけれども「江戸の花見」に教えられる故事のいろいろは面白い。

 

 なんだ石碑かと一つも読めぬなり

 

 そう言えば、梅や桜の名所には、読みにくい字の歌碑、句碑が必らず建っているな。あれは無風流。

 

 定紋であたりを囲ういい花見

 

 会社や職場で陣取りを競ってシートを敷いて、身内だけで騒いでいる。これも無風流だが、仕方ないか。小野氏も80歳か、ご健康を祈りたい。

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信

誌上互選より 高点句
前号開票『勲章 』
 10 舞台裏の事情で勲章をもらう 坂倉広美
  9 勲章をもらってからは体制派 吉崎柳歩
    勲章をもらってからのいばら道 青砥たかこ
   8 勲章がひっそり並ぶ骨董屋 橋倉久美子
    勲章はないが楽しい人生だ 竹内由起子
     若き日の勲章だった向こう傷 沢越建志
    介護する妻に勲章捧げたい 瓜生晴男
    嘘一つつけず勲章縁がない 瓜生晴男