目次6月号
巻頭言 「 おまけ
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン     
・お便り拝受
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

堤 伴久・柳歩
三村 舞
たかこ

柳歩

清水信
橋倉久美子
柳歩


 
バックナンバー
20年 5月(173号)
20年 4月(172号)
20年 3月(171号)

20年 2月(170号)
20年 1月(169号)

19年12月(168号 )
19年11月(167号)
19年10月(166号)
19年 9月(165号)
19年 8月(164号)
19年 7月(163号)
19年 6月(162号)
19年 5月(161号)
19年 4月(160号)
19年 3月(159号)
19年 2月(158号)
19年 1月(157号)

18年12月(156号)
18年11月(155号)

18年10月(154号)
18年 9月(153号)
18年 8月(152号)
18年 7月(151号)
18年 6月(150号)

18年 5月(149号)
18年 4月(148号)
18年 3月(147号
)
18年 2月(146号)
18年 1月(145号)









 

巻頭言

・がんばっているとまけがついてくる たかこ
 

 アルバイト先の誰もが通る出入り口に何も書かれていないホワイトボードがある。半年ほど前までは、いろいろな催し物などの張り紙がしてあったが、掲示板が充実したようでやめたようだ。ある日赤と黒のマーカーが目に入った。ふと思いついて川柳を一句書いてみた。


 毎日一句消しては書いた。一週間ほどすると、休憩室でその川柳が話題になった。

「誰が書いてるんやろなあ、癒されるわ」と年配の男性が言っている。


 即席で思いつくままに書いていたが、少し注目を浴びるようになってからは、いい加減な句では申し訳なくなってきた。四月になってから一週間に一句、それも既成の句にした。その記念すべき一句が、書いて数分でちょっとした異変が起きた。それが上記の句である。がんばっているとついてくるのは「おまけ」であった。それの「お」が消されていたのである。いたずらではあるが、憎めない。


・休んだらきっと止まったままになる

 一月以上経った六句目のこの句の横に、詠み人知らずで、 

・時計でもたまには止まる事もある

・立ち止まり今日の自分を振り返る

この二句が書き添えられていた。思わぬ収穫に飛び上がりそうになった。本当の「おまけ」をもらった気だ。

 

大会まであと二週間となってきました、スタッフ一同心からお待ちしています。会場お間違いの無いようお越しください。

                                                                                                                                                   たかこ

すずか路より
動物は好きにんげんは大嫌い 寺前みつる
すり切れるまでにはきっと捨てられる 堤 伴久
延命装置つけぬお国の為だから 山口龍一
おしゃべりな妻へひと言だけ返す 鍋島香雪
急きたてる気へ一服をさせる雨 山本鈴花
スポットを浴びてB面畏まる 山本 宏
真っ当な意見冴えてるなと思う 沢越建志
スカスカの魂をぶらさげている くのめぐみ
食品街五臓六腑が歌いだす 鈴木章照
夜道なら昔に戻り手をつなぐ 石川きよ子
五月人形泣いて欲しがる孫に負け 木村彦二
つまらないただ道なりに歩くこと 青砥英規
憎まれる役も引き受け親を看る 秋野信子     
たっぷりの刻を過ごしている独り 鶴田美恵子
悠々自適朝から飲める酒がある 水谷一舟
あなどるとしっぺ返しをする民意 山本喜禄
誕生日亡夫の歳を十も越え 西垣こゆき
伊勢音頭また赤福を買ってきた 坂倉広美
岸壁にくだける波も痛かろう 橋倉久美子
待つことを知らぬケータイやかましい 北田のりこ
もの忘れ言い訳だけはすぐ浮かぶ 高橋まゆみ
軟らかい木の芽は虫も好きらしい 小嶋征次
都合よく忘れられてるご尽力 加藤吉一
雑草は断りもなく引き抜かれ 竹内由起子
カーネーション好きになれないままに老い 長谷川健一
夫にはどうも素直になれません    安田聡子
減反で昔の美田泣いている 瓜生晴男
競争のまたスーパーが同じ街 水野 二
脳トレが過ぎて頭が痛くなる 上田良夫
賞状の筒なら使いまわしする 吉崎柳歩
どくだみの花の白さがすき透る 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

 
 172号から                                  三村  舞

 ・雑木さえ北海道の顔で立つ   橋倉久美子

 北海道の雑木林が見えてくる。「北海道の顔で立つ」という表現に北海道の厳しさが現れている。凛とした一句。

 

・わたくしは善人ですと五七五  吉崎 柳歩

 川柳は自分の嫌なところも醜いところも吐露する文芸だと思う。だが、人に認めてもらいたいと思っているうちに、いい子ちゃんになっているような気がする。句会の秀句など狙うとき、特にそう思う。

 

・老人を初めて意識した段差   山本  宏

 老いは突然やってくる。他人事だと思っていた老い。他人事ではなくなる日。どこの段差だったか、いつのことだったか、はっきり記憶している作者。

 

・バラ園の中でもきつい加齢臭  寺前みつる

 華やかなバラに囲まれているから、よけいに加齢臭を感じてしまったのだろう。

 

・幸せはこんな所にいぬふぐり  山本 喜禄

 暖かくなったなあと感じた春先の、ある日突然、いぬふぐりを見つけた。春の風にそよそよとなびく青色の可憐な花。それを見て幸せを感じたという。私も毎年同じ感覚におそわれる。いぬふぐりとは不思議な花だ。

 

・さくら咲き俄に活気づく散歩  山本 鈴花

 さくらでないといけない。活気あふれるさくらの道が見えてくる。

 

・春の空桜色してやわらかい   青砥たかこ

 空までが桜色だという表現がぴったりの桜。桜の魅力に浸りきっている。

 

・次々と電話のかかる午後八時  鶴田美恵子

 午後八時は動かない。にぎやかなお宅だ。きっと大人数の家族なんだろう。明るい家庭が見えてくる。

                            (川柳展望社会員 大阪府茨木市在住)
5月24日(土)例会より
宿題「 刻む 」 青砥たかこ 選と評
  切り刻み今日のストレスごみ箱へ 長谷川健一
  刻んでもにおいは隠しきれません 橋倉久美子
 止 刻んだらウナギかヘビか分からない 吉崎柳歩
 軸 百均の時計も同じ時刻む 青砥たかこ
宿題「 油 」 北田のりこ選
  ガソリンの値上げをペダル聞き流す 青砥たかこ
  乳母車に油 おじいさんを乗せて 坂倉広美
機械には油ぼくには発泡酒 吉崎柳歩
お手伝いギトギトの皿重ねられ 北田のりこ
宿題「 油 」 吉崎柳歩選
  油さえ差せば機械は機嫌良い 長谷川健一
  ガソリンの値上げをペダル聞き流す 青砥たかこ
 止 腹を切る刀へ油さしにくる 坂倉広美
油差すだけでは防げない老化 吉崎柳歩
席題「 楽しい 」 互選高点句
8点 楽しんできたことにする負け勝負 吉崎柳歩
6点 楽しいと聞かれ楽しい顔をする 吉崎柳歩
4点 試着室楽しみくれる鏡です 杉浦みや子
  楽しみは見積もり前の旅プラン 小嶋征次
  楽しくてやたらお好み焼き返す 北田のりこ
特別室

再評価・中井正義の世界

 

 いつもお送り戴く『川柳亀山』の4月号(241号)の巻頭に、坂倉広美主宰が「道標の先」という文章を発表していて、『三重歌の旅』の著者、中井正義に触れている。

 
 今秋の県民文化祭文芸大会では、小説評論部門で「再評価・中井正義の世界」を企画しているので、そのタイミングの良さに感慨があった。


「道標の先」では、歩こう会に参加して、福徳村から久我まで歩く、その道の傍らに「ほとんど埋もれている音吉道標」を見るという優雅な体験が主になっているが、更に巻尾に近いページには「音吉道標製作者」の記事があって、参考になった。製作者は亀山市東台町で中島酔石園を経営している石工の中島忠蔵であり、寄付者は勿論、田中音吉翁で、計四百九十本ほどに達したという。奇特なことで、全く驚く。

 

 奇特と言えば、現在の藤田明に先立って、朝日新聞三重版の三重の展望欄を担当していた中井正義も、文芸に対しては、奇特な関心を持っていた人であった。

 小説・評論だけでなく、短詩型文学のすべてにわたって、理解を示すというのは、本当は珍らしいことなのである。

 本誌はじめ、『川柳緑』や『川柳亀山』や『川柳よっかいち』を毎月戴いて、川柳人種の仲の良さには驚くばかりだが、つき合いの良さや、理解の温かさと、オリジナリティへの固執との関係は、どうなっているのだろうという疑問も残る。


 昔は同人誌の仲間同士でも、激しい口論や、つかみ合いの喧嘩が絶えなかったもので、他誌僚誌に対する批判や嫌悪を露わにしていたものだが、そういうのは小説・評論中心の同人雑誌の間でも、姿を消している。


「大岡昇平はなぜ三島由紀夫の葬式に顔を出さなかったか」という副題を持つ大岡昇平論が今、問題になっていて、自分も読んだけれども、そんなこと当り前じゃないかという気分が先立って、面白くなかった。

『大岡昇平ノート』(一九八九年八月、沖積舎刊)は、中井正義執心の大著である。「ながい旅」の映画化で、原作の大岡にも、一種の光が当っているし、中井も忘れ去られては悪い人なので、この秋には再考したいと思っているのだ。中井には、また前衛文学を絶対許さないという頑固なところがあって、それが面白かった。

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信

誌上互選より 高点句
前号開票『勲章 』
 1 2 忘れるという妙薬が効いてくる 吉崎柳歩
   8 百円の傘は忘れるために買う 橋倉久美子
    都合よく忘れる癖を持っている 小嶋征次
   7 妻の名を忘れぬうちに逝くつもり 山本喜禄
    パソコンに任せ忘れてゆく漢字 山本鈴花
     手荷物は三つ自分に言い聞かす 福井悦子
    大舞台決めるセリフが出てこない 岩田眞知子