目次10月号
巻頭言  「 速達 」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり

・没句転生
・前号印象吟散歩
誌上互選
特別室
・ほっとタイム
・ポストイン     
・お便り拝受
・各地の大会案内他
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

柳歩            中山恵子
たかこ

柳歩
柳歩

清水信

 









 

巻頭言
速 達

  昔、速達料金を勘違いしたことがある。定型の郵便物に270円分(速達料金)切手を貼り、ポストに出した。
「料金不足」で戻されてきて始めて間違いに気づき、二重のショックだった。

   ところが、今も同じ間違いをする人はけっこう多くて自分だけじゃないことに安堵する。それと別に判ったことに、速達の料金不足の郵便物は、速達扱い(他の郵便物とは別に)で戻されるのだ。案外知られていないことだろう。
それともう一つ、速達に相当する料金分の切手は貼られているが、「速達」と朱書きがされていないと、普通扱いとなる。現にこういう例はよくある。親切心で速達扱いにしたいところだができないのである。

    この速達郵便、日本では1911年東京・横浜地区に行われたのが始まりだそうだ。
郵便物を少しでも早く送りたい時は、集配局の窓口に出すこと、決して通りすがりのポストに入れないことだ。またそんなに大きくはなく重いものを速達にするなら、「エクスパック」で送るととても値打ちである。
250グラム以上一キロ以内なら定形外料金が580円プラス速達料金370円で950円にもなる。エクスパック(別売りしている)で送れば500円で日本中速達で配達してくれるのだ。

速達で来たのは虹が消えたあと
  (番傘川柳一万句集  紫蝶)
郵便局の窓口にある飴もらう
                        夢草
せっかちが速達で出すラブレター
                       柳歩
速達にしても締切過ぎている
                        たかこ
 

                                                                                                                                                    たかこ

すずか路より
前科前歴なしでも恐い顔である 坂倉広美
わたくしの笑顔待ってる人がいる 鍋島香雪
宝刀はまさかの時に取ってある 上田徳三
陽のあたる場所で大きく息を吸う 井垣和子
ふるさとの空気はサプリメントだね 青砥英規
鈍行のお陰で美しい夕陽 竹内そのみ
平和な日祭り太鼓がよく響く 鈴木章照
名産をたらふく食べて消えた愚痴 山本鈴花
新米に梅干しひとつこれも贅 沢越建志
老人が元気だ税が重くなる 山本 宏 
おはようの声かけ朝を光らせる 疋田真也
安いからバナナばかりを買ってくる 木村彦二
秋彼岸孫のかわいいお念佛 鶴田美恵子
政治には遠く政治にいびられる 寺前みつる
お義母様なんでもハイと言っておく 秋野信子
秋はそこ靴がだんだん軽くなる 山本喜禄
体調も日々調えて喜寿の坂 吉住あきお
畑仕事も独り暮しも三年目 内山サカ枝
反対とだれか言うのを待っている 橋倉久美子
落ちこみは部分月食程度です 北田のりこ
とおくまで来て見覚えの鰯雲 多村 遼
まんじゅうを放り込みたい口で寝る 高橋まゆみ
台風と行きも帰りも旅をする 東海あっこ
もうちょっと太ってみたい秋だもの 鈴木裕子
点滴の器具をお供に行くトイレ 小嶋征次
頼られる多忙の愚痴は弾んでる 小林いさを
損してるようで続いているお店 加藤吉一
農薬を毎日食べて長寿国 岡田敏彦
惑星になれない月が光ってる 長谷川健一
親孝行できずじまいの墓参り 竹内由起子
デパートが消えスーパーが町はずれ 水野 二
ニガウリは生きる辛さを知っている 安田聡子
主夫業に専念します妻の留守 瓜生晴男
切り札のハートのエースはなさない 羽賀一歩
青い灯のパトカーだからほっとする 上田良夫
カラスにはノーネクタイがよく似合う 吉崎柳歩
伸び悩むことも成長した証 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」
152号から                                                         中山 恵子

生命線に時々息を吹きかける         山本  宏
  この頃、めっきり細くなって来た生命線。限りある現を生きる中で、今せいいっぱい出来る事って何だろう、息を吹きかけてみると永遠の命が生きてきそう。

何とまあ草取る庭の広いこと           鈴木 章照
  夏中放っておいた草が茂ってしまい、仕方なく草取りを始めるとまあ坪庭が大庭園の様に思える。それでも、まだ草を抜く体力と気力のあるうちは幸せ。せっせと頑張ろう。
 疋田 真也
  ノーと言えない性格。本当に困りものですね。ほら私も、たかこさんの口車に乗ってカラコロ糸車を廻している一人なのよ。

新婚の娘「ノラって何なの?」           東川 和子
  「人形の家」の夫と子供を捨てて家出した新しがる女よなんてママは言えません。野良着でもきて、野良仕事をしてのらくら野良猫とたわむれるのもいいものよ。
 
いいないいな二人揃っている夫婦       井垣 和子
  ええ?揃っていなくても夫婦なの。この頃は夫婦でも、一階二階で別々の生活、同居人という夫婦の方が円満なのよ。天界の夫は今。

バーゲンで余分も一緒に買って来る     内山サカ枝
  さあ、夏も終わりどこもバーゲンバーゲン、半額のまた半額に女って弱いのよね。結局、余分なものばかりが増えて行く。

制限を守ってもなお脂肪過多         上田 良夫
もっともなご指摘だけど聞けません     吉崎 柳歩
がんばっているとおまけがついてくる    青砥たかこ
  本当に、ままならない事が多いけれど、おまけも、脂肪もついてくるのが人生ね。

京都では京都の風が吹いている      竹内由起子
  歴史の重みには、過去を映したり、未来を映す鏡がある。京都の奥の奥には遠い風が吹く。

風のあるほうへ国旗がよく靡く         坂倉 広美
  世の中の事は、思わぬ風が吹くと右へ左へ揺れ動く。日本の未来は何を信じて行くのか。

思い出の中に潜んでいるあなた       鍋島 香雪
あの山を見てるあなたはあの町で     竹島  弘

                                                 (名古屋市在住・現代川柳 μ 会長)
 
8月26日(土)例会より
宿題「 消える 」 青砥たかこ選
  リモコンも老眼鏡もよく消える 多村 遼
  遮断機が上がると妻が消えていた 坂倉広美
 止 惜しまれるうちに消えてもつまらない 吉崎柳歩
 軸 この世から消えるほとぼりさめるまで 青砥たかこ
宿題「さすが」 小嶋征次選
  ナイスショッ!さすがですねとキャディ褒め 水野 二
  さすが父軍歌うたうと背がのびる 水谷一舟
 止 マチエールさすがさすがと詠み耽る 内山サカ枝
 軸 竿などは無くても鯛を釣る漁師 小嶋征次
宿題「さすが」 吉崎柳歩選
  内視鏡さすがの僕も泣きました 鈴木裕子
  さすがプロこんなに狭い道をバス 橋倉久美子
 止 さすが秋月が少うし肥えてきた 坂倉広美
 軸 さすが銀行人のお金でよく稼ぎ 吉崎柳歩
席題「 一等 」 清記互選 高点句
10 ふるさとは過疎だがボクの一等地 北田のりこ
 9 一等へパパの褒美の肩車 鈴木裕子
 7 汗水も一等米に報われる 瓜生晴男
  一等の孫とカメラが走ってる 内山サカ枝
  一等をあげたい母を看る妻に 小嶋征次
 
特別室
大嶋さん

 四日市川柳会の発行する月刊機関誌『川柳よっかいち』を毎号お送り戴いて、感謝している。川柳の雑誌は、全国では3百誌を超える由だが、自分のような門外漢にまで、お送りくださるのはよほど特別なことなのである。
 そこに連載されている菱川麻子、松本きりり、樋口 仁など諸氏のエッセイを楽しく読んでいる。
川柳界の人脈や交流の実態は、理解を絶するけれども、県内の作家の大部分が、県内の雑誌のほとんどを活躍舞台にしている様で驚く。
 例えば、大嶋都嗣子さんの活躍ぶりである、僕は彼女のファンだが、彼女は僕の追っかけだというので、色んな場所でよく会う。着物姿の彼女と会ったこともあった。七月一日には、僕の姿を見かけたというので、そのまま津の文学研究会(津市立図書館)へ参加して呉れた。会が終って有志が喫茶店へなだれ込むが、一足先に帰った彼女は、全員(十二、三人)分のコーヒー代を払って行ってくれたと後でマスターに聞いてしゃれたことをする人だと思ったのだ。
  四日市川柳会七月例会27名の投句者の中で「飼う」では「天地人」の「人」と佳作。「限界」では「天」と「人」と佳作、「虚」でも「天」と「地」を独占、これは凄いことである。

・愛という字を引き出しに飼っている

・少年の持つぎりぎりを抱きしめる

・限界になって積み木の崩れ方

・とても虚しい保険やさんの数字

・蜃気楼なのに信じてしまう癖

   これらが、前記「宿題」の「天地人・入選句である。選者は順次、井垣和子、松本きりり、菱川麻子である。
更に互選句「舟」に於いても、最高得点の11点に輝いているのだから、その実力は疑うべきものはない。その作は、

・絆切る音 少年の舟が出る

というものである。

   ところで、旧三重県芸術文化協会時代に親しかった、山岸しん児や、旧鈴鹿市芸術文化協会時代に親しかった新万寿郎の二人ほど、ショッキングな引退をした人たちは例が少ない。新時代のパイオニアとして注目していた人の突然の別離だった。

   近頃、大嶋都嗣子は「苔のむすところで」という一文で、旧師・山岸しん児の現役を書いてくれた。(『土曜会』に掲載し10月1日みえ県民文化祭の時に配布する。)
 大嶋さんは、西部劇の賞金かせぎのイメージとは遠い、きりりとしたしゃれた格好で今日も県下のどこかを歩いているに違いない。

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信
誌上互選より 高点句
前号開票『 台風 』
11 キャンセルをしたのに台風がそれる 北田のりこ
 9点 台風のなんとかしたいエネルギー 青砥たかこ
    台風が来てぬるま湯をかき回す 沢越建志 
    女子アナを風雨に曝し危機煽る 小嶋征次