目次8月号
巻頭言 「 大会準備
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・エッセイ
・没句転生
・インターネット句会
・ポストイン     
・お便り拝受
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

柳歩
松代天鬼
たかこ
清水信
橋倉久美子
柳歩

北田のりこ
柳歩









 

巻頭言


大 会 準 備

 第五回大会も無事済んで、七月の中頃、恒例「打ち上げ」の席を設けました。のっぴきならない用がある三名を除いて十五名参加でささやかな宴が始まりました。

 ビールを注ぎに回っていると会員のYさんが、大会のねぎらいの言葉と、「少しはのんびりしてくださいよ」と言ってくれました。私は即座に、「もう来年のためにいろいろしなくっちゃ」と、笑って返したら、とても驚いたようでした。そばでIさんが、「そりゃそうやわ、会長さんはよその大会に行くことがもう大会準備やわさ」と助け舟(?)を出してくれました。

 来年は早々と、開催日はもちろんながら「アトラクション」が決まりました。
どこの大会でも苦労されるのが選者選出だと思います。「いい選者さんが出揃ったね」という声を聞くと大会の半分は成功したと言えそうです。

柳歩さんとまた、おいおい選者さんを、題を、ああでもないこうでもないと、秋の終わりには「ちらし」完成になるよう決めて行きます。二人だから多数決というわけに行かず、また少しはもめるでしょう。これもまた愉しいひとこまかも知れません。

七月例会は反省会も兼ね、「事前投句」「席題」の是非について話し合いましたが、はっきりした意見は出ませんでした。毎年なにかが違う鈴鹿の大会ということでこれも今後の課題です。今年「席題」の「題」が出迎えのプラカード、送迎のバスにも表示され喝采を戴きました。

 お礼もそこそこのうちに来年のお話でした。

                                                                                                                                                    たかこ

すずか路より
休日晴天たまには主婦もいいものだ 橋倉久美子
仕方なく帰る日があるマイホーム 寺前みつる
さあ寝よういつものグチを聞いたから 岩田眞知子
ライバルの巨人も負けたまあいいか 上田徳三
途中から眠たくなった長電話 鍋島香雪
悲しすぎますリムジンで去る棺 山本鈴花
突っかい棒なければ男生きられぬ 山本 宏
お返しにお返しが来るお付合い 沢越建志
人ひとり赦して酒のうまいこと 竹内そのみ
帰省する土産は少しひねった句 青砥英規
孫の来ぬ日曜だから仕事する 鶴田美恵子
あっという間の所為にして世に疎い     堤 伴久
温暖化に拍車をかける蝉の声 鈴木章照
母の老い心構えはできている 秋野信子
天罰を受ける私に恋の数 水谷一舟
快晴という幸せもあり庭を掃く 山本喜禄
やや冷めたおんなとこれからの話 坂倉広美
何建っていたか覚えてない更地 北田のりこ
煮詰まってゆくのはジャムを煮る私 多村 遼
二キロ程太り大事にしたい肉 鈴木裕子
ダイエット遅いとひざが訴える 竹内由起子
つまみ食いした指先を舐め直す 小嶋征次
言い訳はカレンダーへの記入漏れ 加藤吉一
黒枠に影を残した友が増え 小林いさを
駅員も手持ち無沙汰の昼の駅 水野 二
夏休み入れ知恵された孫泊まる 瓜生晴男
背を向けたひまわり一つ庭に咲く 長谷川健一
蛇の目傘出番ないけど捨てられぬ     安田聡子
納豆の粘りを少し見習おう   上田良夫
人を見て説くべし法も柳論も 吉崎柳歩
熟れすぎて腐った匂いするメロン 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」


  162号から        
                                松代天鬼

・ピーク時の生まれで強く生きられる  岩田眞知子
 作者は団塊の世代に生まれたようだ。昭和二十二年から二十四年のベビーブーム時代に生まれた世代は進学、就職、結婚などもいつもライバルが多く、生存競争が大変であった。

 ・町内に他人が増えて怖くなる     加藤 吉一
 私も鈴鹿電通学園の教官時代に、三年間鈴鹿市民であった。その頃は田園地帯が広がったのどかな鈴鹿市であった。だが今は住宅地が増えて昔の面影がなくなってしまった。作者の気持が伝わってくる。

・冗談もひんしゅくを買う通夜の席   瓜生 晴男
 通夜の席は家族、縁者、知人が故人を偲び、しめやかな雰囲気に包まれる時間である。悪い冗談は雰囲気を壊し、故人を冒涜することになる。私の句にも「通夜の席笑い上戸が居て困る」がある。

 ・紫陽花の心変わりは許せます     安田 聡子
梅雨時におなじみの花、紫陽花の色は青から赤紫に変化するところから「七変化」とも言われる。人間の心変わりは裏切りであり許せない。紫陽花の花言葉は「耐える愛」である。

 ・鈍感力そのまんまでも自信あり    上田 良夫
逞しく生きるためには鈍感力が求められる。作者は自信があり羨ましい。渡辺淳一の著書『鈍感力』がベストセラーである。環境適応能力の原点になるのが鈍感力と述べている。

・残された命へ写真撮っておく      水野 二
 川柳人にも黒枠用の写真を写真館で撮り子供に持たせている人や、自分の写真を写真館で撮って毎年更新している人がいる。心構えとして立派である。

・どの傘を差しても僕に僕の雨      堤 伴久
 
雨の日の傘を選んでも僕の雨には通じない。降りそそぐ雨は作者のこころの雨雲だと思う。傘を妻や友人の慰めとしても僕の雨には通じない。

・産め産めと産めない歳の人が言う   北田のりこ
 
滑稽なようだが深刻である。赤ちゃんの出生率は二人以下であり、少子化が進んでいる。

                                 (名古屋川柳社主幹 犬山市在住)

   

7月28日(日)例会より
宿題「 技 」 青砥たかこ選と評
  次のオトコはどの技で攻めようか 橋倉久美子
  技ありの説得に負け同意する 加藤吉一
 止 すぐ」立ち直るそれが私の得意技 北田のりこ
 軸 玉子焼きひとつも主婦の技光る 青砥たかこ
宿題「 深い 」 橋倉久美子選
  深ぶかとかぶっていても日に焼ける 鈴木裕子
  花束に深い意味など有りません 長谷川健一
 止 最後だけみんな揃った深呼吸 加藤吉一
 軸 褒められて深いとこまでかゆくなる 橋倉久美子
宿題「 深い 」 水谷一舟選
  最後だけみんな揃った深呼吸 加藤吉一
  飛び込めばどれほど深いかがわかる 青砥たかこ
 止 褒められて深いとこまでかゆくなる 橋倉久美子
深い祈り愛であなたを変えてやる 水谷一舟
席題「 願う 」 互選高点句
7点 笹の葉でゆれる無邪気な願いごと 橋倉久美子
6点 ただひとつ妻の長生きだけ願う 坂倉広美
  一勝を願う程度の寄付にする 加藤吉一
  賽銭もなく願われる流れ星 橋倉久美子
5点 お願いはひとまず聞いて投票日 鈴木裕子
 
特別室

何でもあり

 現代文学は、実態は何でもありである。川柳の世界もそうだ。最近の新聞記事から写してみよう。

(1)ED治療啓発愛の川柳募集
                 バイエル薬品

 ED(勃起不全)治療啓発のためにバイエル薬品KKが全国公募するもの。写真付きの川柳を求めている。
 同社のサイトに見るイメージ写真に合わせた「セレクトフォト部門」と、自作の写真に川柳をつける「フリーフォト部門」と二種がある。7月締切。
 ED患者は1億5千万人。日本人では約1200万。
50代以上の男性では、2人に1人が重症。医師に相談したり薬に頼るのは、全体の約5%の由。

(2)トイレの思い出川柳募集
                 TOTO社

 自宅や他家や出先きで使ったトイレにまつわる思い出を川柳にしてと公募。8月末まで。優秀作20句は、トイレットペーパーに印刷した特殊の句集として発行。今年で3回目。大人の部に加え、小学生以下を対象にキッズ賞を新設。昨年の最優秀賞は次の通り。

・開けたほうなぜか謝る閉め忘れ

 第5回鈴鹿市民川柳大会(24日、ホテル・グリーンパーク鈴鹿)には、122人の参加があって大盛会であった。

・子宝をこっそり捨てにいくポスト        中田たつお

・生まれなさいポストの外は光です        松本きりり

 これは選出された秀句の内「赤ちゃんポスト」をテーマにしたもの。

 本誌162号に、橋倉久美子が「サラ川を嫌いな理由」を書いた全て納得できる。
 その視覚で見れば、ED川柳もトイレ川柳も多分ケシカランものであるだろう。

(3)
 日中友好芭蕉俳句会とNPO芭蕉俳句文学館が、初めて、中国人を対象とした俳句を公募して、その入賞作を発表した。最優秀の作者5人を、11月末には日本に招待して、三泊四日で三重県下を案内するという。3258句の応募があった由。こういうのは、川柳でも始まるかも。

・揚子江の土手の片隅つばなかな         王蕾

 これが優秀作の一つである。江蘇大の学生らしい。

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信
誌上互選より 高点句
前号開票『 難問 』
 12 見たいのは日本人の土俵入り 北田のりこ
  ウエストの辺りに難問が溜まる 吉崎柳歩
   捨てる場所なくてもゴミは出続ける 橋倉久美子
  パパとママどちらが好きと聞かれても 鈴木章照 
    どう答え出していいのか妻の乱 水谷一舟
    札束でカタが付かないから困る 山本 宏
    難問が最後に待っているテスト 橋倉久美子