目次12月号
巻頭言 「 四字熟語
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・没句転生
特別室
・前号印象吟散歩
誌上互選
・アラレの小部屋
・インターネット句会
・ポストイン     
・お便り拝受
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

堤伴久・柳歩
青木紀雍子
たかこ

柳歩
清水信
柳歩

橋倉久美子
 









 

巻頭言


四字熟語

「三面記事」は「前代未聞」の「悪逆非道」な「殺人事件」が多い。
「幼児虐待」「放火殺人」などが「日常茶飯」である。

 また「食品業界」は「我利私欲」のために「消費期限」「賞味期限」を「偽装操作」のあげく「製造年月」まで怪しいと聞けば「鎮痛慷慨」である。これらの一連の「事変勃発」は「内部告発」によるものが多いと聞く。
 仕事先では「連日連夜」のごとく「個人情報」の「秘密遺漏」の無きよう「上司通達」がある。

 私の手元に大修館書店発行の四字熟語辞典がある。序文に四字熟語は中国三千年の文明文化が生んだ輝かしい成果である、とある。この辞典には文章表現に直接役立つと思われる2653語が収録されている。
「あ」だけで三六語。半分ほどに馴染がある。

 川柳は17文字しか使えないのにもかかわらず、四字熟語を用いる人が多い。
「森羅万象」「栄枯盛衰」「一蓮托生」「悪戦苦闘」「千差万別」などだ。これらはたった四つの漢字で強い意味を持つ。
もし、こんな熟語を知っているんだぞ、ばかりに読んだのなら「自己満足」なだけで逆効果である。

 さて、なぜこんな辞典があるかといえば「漢字クロスワード」にはまっていた時、古本屋で探し出したのである。
 今月号の巻頭言をすべてこの四字熟語の羅列にしようと思ったが、時間がないのとあまり意味がないような気がしたので「途中断念」した。

 
辞書で遊ぶのは、久美子さんの「専売特許」。ちょっと「無断拝借」いたしました。

                                                                                                                                                   たかこ

すずか路より
うなだれて犬が一匹通る秋 坂倉広美
縦横を頑と守っている畳   堤 伴久
油断などできない妻とパン焼き器 寺前みつる
秋なのに食べたいものがすぐ言えぬ 山本 宏
現役のときより解説の江川 上田徳三
誕生日なのに普通の晩ご飯 鍋島香雪
プライドを捨てた夫の割烹着 山本鈴花
愛される毬はころころよく弾む 沢越建志
つぐみ群れバレエのように絵のように 鈴木章照
満点でないから続く夫婦かも 竹内そのみ
最後には自分で決めるしかないか 青砥英規
ピンポンでセーブしている体脂肪 鶴田美恵子
昼寝して生命ながらう介護室 木村彦二
センセイのお荷物お持ちいたします 秋野信子
物思い妻にお金の減る早さ 水谷一舟
デモ一つ起きぬ世相をまた憂い 山本喜禄
主催者の自己満足だなと思う 橋倉久美子
楽しいと言わせる街頭のマイク 北田のりこ
初雪に願いをこめておくことに 東海あっこ
ゆっくりと呼吸してると生きやすい 高橋まゆみ
いい夢を忘れた朝の生あくび 鈴木裕子
悔しさに蹴った小石にかわされる 小嶋征次
辻褄が合わず綻び酷くなる 瓜生晴男
寒くないかと聞けば寒いと半ズボン 加藤吉一
無料バス待って時間を無駄にする 竹内由起子
玄関の来客和むからすうり     安田聡子
種無しは柿のロマンを奪い取る 長谷川健一
年金の友に予算を任す旅 水野 二
反省の窓へ朝日が差してくる 上田良夫
姑と妻を迎えに行く車 吉崎柳歩
日替わりのメニューでやって来る明日 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

 
 166号から                                                      青木紀雍子

・僕とよく似ているドジな人に会う           山本  宏
 わたしはドジなので、ドキンとしました。見られたかなと。ドジなわたしをいつも助けてくれる人がいて何とか生きています。

・あやしげなハガキがわたしにも届く        橋倉久美子
 ファンだという人からハガキが届き舞い上がりました。でも何だか変だと気づいてそのまま放っておきました。後日本当にファンからのハガキだとわかったのですが、あやしげなハガキには気をつけたいものです。

深呼吸したら何でもない怒り             鈴木 裕子
 深呼吸して、怒りを静める。これって本当に大事な事ですよね。わたしはすぐカッとしてしまいますから。

・哀しくはないかプールで跳ぶイルカ         堤  伴久
 イルカは楽しく跳んでいるものと勝手に思い込んでいました。海ではなくプールですものね。イルカの気持になってハッとさせられました。

・サプリいろいろ効いているのかいないのか  北田のりこ
 よく効くと言われ、あれこれ飲んだり食べたり、何が効いているのかいないのか元気に暮らしています。体によいと言わればまた一つ増えて…。

・円満なことを強調して離婚               上田 徳三
 夫婦って判らないです。仲が悪そうでも離婚しないし、仲の良さそうな夫婦が離婚してしまったのです。

・お喋りがとことん弾む二人旅              鶴田美恵子
 寝る時間もお喋りが続く楽しい旅の様子が伝わってきます。

・公園のベンチでひろう秋の詩             竹内そのみ
 あの暑かった夏が嘘のように秋の色になり、心の中にも秋の風が吹いています。 

・ときめきが活力となり靴磨く               水野  二
 ときめきのある人生なによりです。

・丸ぽちゃの顔で信用されている            鍋島 香雪
 どちらかと言えば丸ぽちゃの顔はいいですね。

・粉々になってもやはり光りたい             青砥たかこ
 やはり光りたいと思うたかこさんに少しでも近づけたらいいなと思ってしまいます。

                                                                                 
( 豊橋番傘川柳会・春日井市在住)
 

11月24日(土)例会より
宿題「 隠れる 」 青砥たかこ選と評
  CTに隠れ肥満があばかれる 吉崎柳歩
  隠れても無駄よ匂いが甘すぎる 橋倉久美子
 止 このあたりに恋が隠れている日記 坂倉広美
 軸 お隠れになったと言われたい最期 青砥たかこ
宿題「 丸い 」 加藤吉一選
  目線少し下げると丸い語が返る 水谷一舟
  ぶつかっているうち丸くなってくる 青砥たかこ
 止 転がらぬように緊張するボール 橋倉久美子
 軸 仲裁の腕が丸みを付けさせる 加藤吉一
宿題「 丸い 」 橋倉久美子選
  丸椅子のどちら向いても敵ばかり 坂倉広美
  丸くなる癖寒がりのカレンダー 北田のりこ
 止 人間はまるいがただの意気地なし 吉崎柳歩
転がらぬように緊張するボール 橋倉久美子
席題「 畑 」 互選 高点句
7点 お隣の畑おんなじ種なのに 青砥たかこ
6点 掘っても掘っても小判が出てこない畑 坂倉広美
  畑から直送子らへ父の汗 鈴木裕子
5点 右脳には耕す余地のある畑 吉崎柳歩
  父親の畑は土も生きていた 加藤吉一
特別室

ナラ新聞

 年に二、三回は家族旅行にいく。
 名所旧蹟めぐりや温泉めぐりも倦きたし、神社仏閣や坂の上り下りもしんどくなったので、近頃は文化都市で一泊が普通になった。
 美術館や博物館を観たり、本屋を覗いたりして、ホテルで泊って、おいしいものを食べて、疲れない内に帰ってくる。
 今年の秋は神戸、大阪へ行った。梅田のホテル・ヒルトン大阪に泊って、隣りのウエスト7階の聘珍楼(へいちんろう)で中華料理を食べた。

 本屋では、欲しい本が50冊ほどあったのだが、鞄が重くなるので10冊におさえた。
 旅行にいくと、必らずその行先で発行されている地方新聞を買う。これも旅の楽しさである。
 今回も「大阪日日新聞」や、「京都新聞」や「奈良新聞」を買った。前号に新聞の川柳欄のことを書いたので、勢いそれらの新聞での川柳の扱いが気になったものである。

「大阪日日新聞」では、第一面に「一日一笑にちにち川柳」というコラムがあって、これは珍らしい。前川和義選で、

・行革は何を「欠く」ことやったかな        布施正次(大阪)
 
 という一句に解説を加えている。

「奈良新聞」には「ジュニア文化面」というのがあって、そこに公募したジュニア川柳の発表がある。天理市の金岡蓉子選で連載527回に達しており、これも珍らしく良い企画だ。入選作を抄出紹介してみよう。

・べんきょうが わかってきたよ よかったよ (小4東条友希)
・きれいだな まどから見える 夜の月        ( 小6藤田萌子)
・下校中 四季の変化が よくわかる         (中2荒木桃子)
・先輩の 大きな背中 見て育つ               (中2谷川原将平)

「奈良新聞」は他にも15面に「ニュース川柳」という投稿欄があって、杉野睦朗選で、次のような入選作が載っている。

・日本をどうしたいんです福田さん          (綾織省吾)
・女王卑弥呼ベニバナ染の衣を纏う         (神谷美輝)

 もっとも「時事川柳」は、朝日でも中日でも、各紙おおむね企画していて、それが本流だと困るなと思う。ある日の中日(近藤季男選)には、こうある。

・洞爺湖のサミット坊ちゃん夢と消え         (佐野明)

「産経新聞」では「テーマ川柳」(復本一郎選)がある。その一つ。

・政治家になり国民を辞める人              (舛岡祥吉)
                                                                                                                     (文芸評論家)清水信

誌上互選より 高点句
前号開票『 変わ(え)る 』
 12 肩書きが付いて物腰まで変わる 吉崎柳歩
 11  一杯の酒で多弁になる無口 沢越建志
  審判の気分で変わるストライク 山本 宏
  値札見て変えた妻へのプレゼント 山本 宏
    嫁が来て風呂の順まで変えられる 高木みちこ
  解凍をした日に変える誕生日 堤 伴久