目次 8月号
巻頭言  「疑似外来語」
すずか路
・小休止
リレー鑑賞
・ひとくぎり

特別室
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ほっとタイム
・マチエール(皆様のお便りから)
・ポストイン     
・お便り拝受
・各地の大会案内
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

菱木誠
たかこ

清水信
柳歩



 









 

巻頭言
擬似外来語
         
若者の間で流行した省略語(きもい→気持悪い)やひっくり返した言葉(うまい→まいう)や英語をプラスした「どたキャン」などのような変な日本語に、ルーツのようなものがあった。

 江戸中期時代の科学者、平賀源内が作ったとされる擬似外来語である。「エレキテル(静電気発生装置)」の実験で知られている。源内は他にも鉱山開発を試みたり、また戯作や浄瑠璃の執筆をしたり多彩な人物だった。まじめなところでは、風車式の蚊取り線香を発明し、それに「マワストカアトル」(回すと蚊取る)と名づけた。外来語のように聞こえるが純粋な日本語である。アンクルーム(大福)シリヒカール(蛍)チュートル(猫)。これらも源内作だとある。

 他、外来語のような和語に、キャクトメール(旅館)ヒネルトジャー(水道の蛇口)バンクバール(夕刊)などもある。探せばけっこう楽しい擬似外来語がある。最近では、サッカーのチーム、「コンサドーレ札幌」はイタリア語のようにしゃれているが、実は「道産子」を逆さにして、それに「―レ」をつけたものだ。

  また逆に海を渡って定着した日本語も多い。《コリンズ英語辞典》《オックスフォード英語辞典》に「ハラキリ」「エキデン」のほかに新たに収録された日本語は「ラーメン」「ベントウ」「ガイジン」「ワサビ」「ウドン」「ソバ」などとある。

 海を渡ってきたわけでもなく、カタカナ語辞典にも載っていない新語は、これからもどんどん出てくることだろう。川柳にはあまり使えないが、楽しみたい気もする(参照・学研日本語辞典)

たかこ

すずか路より
最初はグーあとの勝負は運まかせ 山本 宏
一匹狼になるには実力が足りぬ 橋倉久美子
店先へ人が飛び込む俄か雨 小嶋征次
汗の出る話へ熱い茶を啜る 沢越建志
ピンポンのように返ってくる手紙 鍋島香雪
すぐ返事欲しくてメール打ったのに 山本鈴花
何かあると心の闇で片付ける 上田徳三
知らなんだ粋な女房の盆踊り 鈴木章照
天下る先でたっぷり甘い蜜 疋田真也
遠雷がだんだん近くなる不安 鶴田美恵子
鈴虫の声をテレビで聴かされる 寺前みつる
嫁さんの紫陽花ゼリー摩訶不思議 東川和子
放置した分だけ重い草むしり 山本喜禄
書き損じ指も立派なシュレッダー 井垣和子
煽てられ乗ってはならぬものに乗る 吉住あきお
美白ローション買ってみようかふと思い 内山サカ枝
切りのよい数字で今日を終わらんか 坂倉広美
消灯を待って月夜の羅針盤 多村 遼
日当たり日陰花の好みを聞いてやる 北田のりこ
にんにく酒飲んで一気に治したい 鈴木裕子
なにが出る余生は僕の玉手箱 小林いさを
あれこれとついでに添える妻の愚痴 加藤吉一
京都では京都の風が吹いている 竹内由起子
漢方薬効果疑いつつ続け 水野 二
剪定をすればするほど出る新芽 長谷川健一
手鏡に一日三度笑いかけ 安田聡子
制限を守ってもなお脂肪過多 上田良夫
約束を果たさぬままにまた夏が 瓜生晴男
目覚ましが不要になって老い進む 齋藤高圓
深呼吸と酸素で凌ぐ大ピンチ 山本 城
メガネだけなぜか不要になってくる 木村彦二
買い物の長い女を待っている 竹島  弘
旅先に不安が湧くが帰れない 青砥英規
少年の心を持っている帽子 吉崎柳歩
がんばっているとおまけがついてくる 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」
150号から                                                          菱木  誠

母見舞うたびに小さくなっている    山本鈴花
 何歳になっても母は母。万感の想いの溢れる連作。寝たきりのお母さんを看病する娘は逢うたびに小さくなって、やがて消えてゆくように思えてならない。
 
分別をすると私は粗大ゴミ       疋田真也
 定年を機に離婚、年金の半分は持っていかれるご時世だ。掃除・洗濯・料理ぐらいは身につけて欲しい。

毒舌が愛だと知ったのは昨日     鍋島香雪
 好きな子には、つい意地悪をするのは悪がきの時からのパターン。私をいじめたあの人は、やはり…。

愛情の深さか保険金の額        山本 宏
 生命保険がいつの間にか増えていたのなら、ご用心。「年寄りを脅し続けている保険 誠」嫌ですね。

初めから反対だった訳でない      沢越建志
 人間社会は動物園と同じ猿山。権力を持つ者と弾かれる者の相克にある。ここで引き下がっては男が廃る。

花もいい後の葉っぱはもっといい    上田徳三
 同感、同感。美しい花のいのちはさっと散る。でも緑輝く葉っぱは生命の躍動を見せてくれるのがいい。

饒舌と無口秤にかけられる       寺前みつる
 なかなか難しい人生訓。饒舌すぎても、無口すぎても嫌われる。秤はどっちに揺れるか迷っている。

道端の地蔵をちょっと拝み 妊婦    坂倉広美
 これから生を受けるわが子の無事を祈る妊婦。片手拝みでもいい。きっとお地蔵さんが見守ってくれる。

これからを考えすぎる亀の穴       北田のりこ
 臆病な亀さん。あなたは考えすぎる。失敗したっていいじゃないの。まだまだ選択肢はある。

肩に蝶今日は良いことありそうだ     長谷川健一
 都はるみの演歌に「あなたの肩に花が咲く」というフレーズがあるが、蝶が止まるとは、きっと吉兆だ。

やることはやった判決待つ想い      青砥たかこ
 「青砥たかこを鈴鹿川柳会の終身刑に処す」。まるごとのたかこの『マチエール』、この手触りがいい。

                                                      (やまと番傘川柳社・編集人)
 
7月22日(土)例会より
宿題「調べる」 青砥たかこ選
  辞書にないことを知ってたおじいさん 鈴木裕子
  ひとさまの浮気調べるのも仕事 橋倉久美子
 止 見られてはまずいメールを消去する 吉崎柳歩
 軸 調べてもわからないのが私です 青砥たかこ
宿題「長い」 内山サカ枝選
  早く帰ってよホウキ逆立て効き目なし 上田良夫
  二十歳過ぎ長いひも切る親心 杉浦みや子
 止 長い目でみよう奇跡は起こるから 坂倉広美
 軸 新レジが手間どっている長い列 内山サカ枝
宿題「長い」 水谷一舟選
  長話大事な用は言い忘れ 高橋まゆみ
  溺れてはないか覗く娘の長い風呂 北田のりこ
 止 きっと暇なんだな祝辞長すぎる 橋倉久美子
 軸 長いせりふは二人にいらぬ恋芝居 水谷一舟
席題「猫」 清記互選 高点句
 7 猫舌の女でいつも出遅れる 橋倉久美子
  幸せな猫だ美人の膝で寝る 吉崎柳歩
 6 マンションで飼われる猫で服を着る 水谷一舟
  猫好きの女と聞いて要注意 北田のりこ
 5 雌猫に彼を盗られたことがある 吉崎柳歩
  いつまでも猫をかぶって脱ぎ忘れ 東海あっこ
  おとなりの猫がときどき爪を出す 多村 遼
 
特別室
『アフォリズム』募集      

 「鈴鹿と緑雨とアフォリズム」実行委員会による、アフォリズムの公募は今回が四回目である。
入賞作12点の内、最高賞一点を緑雨賞という。鈴鹿川柳会の吉崎柳歩さんが獲得して以来、その最高賞の受賞者が市内や県内に一人もいない。
 今回は是非にも、この雑誌の読者の中から、緑雨賞の受賞者が出ることを願って、ここに書かせて貰う。
ポスターやチラシ、インターネットや公募雑誌や、マスコミで公募要領を発表しているが、それを更に抄録して皆さんに訴えたい。作品の規定は、次の通りである。

1、日本語であること。
2、句読点をふくめて一作品は80字以内であること。
3、一人十点以内。勿論すべてオリジナル作品であること。
4、ハガキ一枚に一作品。メールも可。
5、住所、氏名(本名&ペンネーム)

年齢、電話番号明記。

宛先=鈴鹿市神戸8丁目25‐5衣斐方 緑雨アフォリズム係

Eメール hiroyuki..ibi@chive.ocn.ne.jp

締め切り=9月15日

選考会・10月15日午後1時半より
    ジェフリーすずか (鈴鹿市神戸2ー15ー18)

賞=緑雨賞1、優秀賞3、新人作品賞1、選考委員賞7
共催=三重文学協会、鈴鹿市芸術文化協会、鈴鹿市、鈴鹿市教育委員会、岡田文化財団

 一度でも出席なさった方には、お分かりだろうけれど、全作品を予選委員会で二百点乃至二百五十点にしぼり込んで、通過作品集を印刷、当日参加者全員に配布。その冊子の中の作品を対象にして、全選考委員で当日公開選考。入賞全作品を決定、選評の後、授賞式も行い、今年は臼田氏の講演を予定している。

 アフォリズム(警告)に最も近い文芸は川柳である。川柳は形の上から言えば、省略の文芸。縮小の文芸、削除の文芸と言われる。 そのベテランである創作者がこんどは一寸伸ばしてもらう。つまり17音か17字の結果を、今回は80字に拡大して戴くのだ。 もちろん、川柳の風刺精神や批評精神は、アフォリズムの核心となるべきものだから、その健在を祈る。

                                                          (文芸評論家)清水信
誌上互選より 高点句
前号開票『 あわてる 』
16 布団から先に取り込むにわか雨 山本喜禄
15点 出張のはずの夫がもう帰る 吉崎柳歩
11点   あわてると国の訛りの癖が出る 山本 宏 
 9点   飛び乗って気付けば女性専用車 山本 宏
 7点   財布まで丸めて入れた洗濯機 山本喜禄