* 窓際に昔は風を切った肩
片山かずお
風向きが変わって受動喫煙者
由美
* 風力の強い女で近寄れぬ
沢田正司
今月は財布の中につむじ風
山田緑青
*
これ以上痩せると風の日は怖い
高杉千歩
台風は日本が好きなんだなぁ
早川トミジ
吹くならば追い風2メートルまでで
小田虎賢
*台風が手抜き工事を暴露する
端流
風見鶏ばかりで伸び悩む会社
高柳閑雲
逆風と思えば後ろ向けばいい
帰櫻
風つれて三男坊が帰還する
中川喜代子
*逆風に鈍感力が磨かれる
塚越孝一
北風におでん美味いと囁かれ
伊田網人
リフォームで埋める夫婦のすきま風
颯爽
逆風にもろい男の縄のれん
丹川 修
華やかな頃は遠くに風の庭
備瀬ちゃくし
白熊が必死で探す海の風
早人
金出して風を吹かせてもらう旅
名賀 久
* 風除けにするには頼りない背中
吉崎柳歩
ピンセットでガーゼ剥がすと風そよぐ
青砥和子
* 来し方のノートは風の音ばかり
板垣孝志
* 飛ぶのなら今だと風が唆す
竹中正幸
穏やかな風を纏った老夫婦
十六夜
手で扇ぐローソクだけが消える風
加藤吉一
*
風通し悪いとかびる脳味噌も
加藤峰子
祭り跳ね寂しい風だけが残る
そぞろ歩き
夕暮れのママチャリつむじ風になる
石橋芳山
風穴を開けてしっかり深呼吸
青砥たかこ
風のように自由気ままに生きていく
松本諭二
悪友が来ると陽気な風が吹く
松谷大気
風になるまでくり返すハイジャンプ
橋倉久美子
懐メロの針にかすれる風の音
辻内次根
酔っている人には心地よい夜風
吉崎柳歩
*
おはようの風をいっぱい受けている
松谷大気
いい風が吹いてビールの栓が飛ぶ
板垣孝志
生きてると、ごく稀にある最高の一瞬。「ビールの栓が飛ぶ」が、嬉しさと勢いを巧みに表現している。
* 神さまの声ではないか風の音
新家完司