目次10月号
巻頭言 「 鈴鹿川」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・お便り拝受
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

伴久・柳歩
奥山晴生
たかこ


柳歩

清水信
橋倉久美子
柳歩



 
バックナンバー
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20年 8月(176号)
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20年 2月(170号)
20年 1月(169号)
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巻頭言


 鈴鹿川

 水源は鈴鹿山脈に発し、伊勢湾に注ぐ、夏にはアユが解禁になり、河川敷では、バルーン大会なども行われる一級水系の川。国道一号線に平行しながら走り来て、鈴鹿市の真ん中を、流れる川、その名前を「鈴鹿川」という。
 そしてもうひとつ、鈴鹿には「鈴鹿川」がある。
 今月の共選の題に「乾杯」があった。いつも自分でつけておいて広がりのない題だなど、文句ばかり言ってしまうが、この題もそうであった。選者の久美子さんが、おおまけだと言いおいて、私の

・乾杯をするならやはり鈴鹿川

 を抜いてくれた。どうせ同想句ばかりになるなら、と少々遊び気味に詠んだ句だった。この「鈴鹿川」はもちろん川の名前ではない。比較的生まれの新しい清酒である。ひょんなところで知って、そのまろやかな味にほれた。それ以来、鈴鹿の大会はこの「鈴鹿川」を出している。清水醸造が生み出した「鈴鹿川」は口当たりのよい純米酒なのだ。杜氏は、昭和四十七年生まれの内山智弘さんである。彼の言葉に、
「酒つくりは一つとして同じものができない」とある。伝統を守りながら、新しい味にチャレンジすることがおもしろいとも。

 この「鈴鹿川」最近はどのスーパーにも出回って買いやすくなったが、三、四年ほど前までは、醸造元かその近辺の酒屋さんにしかなかった。
 日本酒というより、イタリアで飲んだ白ワインに香りが似ている気がする。こんな風に言うと、内山さんに叱られるかもしれない。ちょうど、ある俳人が作った自信の俳句を「川柳みたいですね」と言って叱られたように…。

 鈴鹿の風をたっぷり吸った、美味しいお酒、鈴鹿川…。乾杯にふさわしいお酒であると思っている。

                                                                                                                                                     たかこ

すずか路より
声だけを聞けば幸せそうな人 山本 宏
詰め放題女の意地を見せている 鈴木裕子
大臣のクビでは済まぬ汚染米 鈴木章照
真ん中に座りにこにこ聞いている 沢越建志
柳論自論わたしの説は別にある 鍋島香雪
鳥たちに先を越される熟れた柿 山本鈴花
朝粥に昨夜の酒を諭される 高柳閑雲
卓球もハグも一人じゃちょっと無理 鶴田美恵子
起承転あたりでペンの我を通す 堤 伴久
無意識に座る出口に近い席 寺前みつる
わたくしの心を見透かした会釈 秋野信子
ネクタイを締めて描けない自分の絵 青砥英規
美しい嘘です今日を過去にする 水谷一舟
貯まったら急に買う気がしなくなり 山本喜禄
良いことが落ちていそうな曲がり角 西垣こゆき
縦に振り続けた首が痛み出す 坂倉広美
祝日でにぎわう秋のカレンダー 橋倉久美子
本物の納棺師見ているお通夜 北田のりこ
一夜明け会心の句が色あせる 高橋まゆみ
あばれると押さえられないゲリラ雨 落合文彦
受話器から海の向こうの無事な声 浅井美津子
短も長も元大臣で括られる 加藤吉一
台風がハンドル切ってやってくる 竹内由起子
渋柿は時間を掛けて甘くなる 長谷川健一
退屈をしなくても良いありがたさ 安田聡子
点滴の針跡やっと消えて秋 瓜生晴男
宝くじ夢ばかりまだ追いつづけ 水野 二
健脚を散歩コースでつい競う 吉崎柳歩
のんびりとしているようで頭痛薬 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

    
   176号から                                 奥山 晴生

・歳取ったのは妻老いたのはわたし   堤  伴久
 歳を取るのと老いるのは別。人に接する機会も多く、常に十七文字のリズムを追っている頭脳は妻より若いのだが。愛妻家のいい絵を見せていただいた。

急ぐのに切符がうまく買えません   山本  宏
 切符販売機では若い人の後ろに並ぶようにしている。旅先での事、慣れぬ販売機に手間取って、気が付くと後方に行列が出来ていて恥をかいた思い出がある。

しんしんと検算をする午前二時    くのめぐみ
 今日の出来事を振り返って「あれは私が悪かった」などと思い返して眠れぬ夜もあるが(しんしんと検算をする)とは見事なフレーズである。

あの世ではまあまあだったそう言うか 寺前みつる
 まあまあの人生だったと言えるのは羨ましい。きっとあの世でも女性にモテル人だ。軽味に惚れました。

・夕立後夏の匂いと散歩する      青砥 英規
 
(夏の匂いと散歩する)なんて仲々言えないものだ。俳句だと言いたい人もあるだろうが、夕立後の街を散歩する姿は川柳の世界である。 

・若いねと言ってもらいに行く句会   橋倉久美子
 若いから句会に行けるのか、句会が若くしてくれるのか、おそらく後者であろう。そして抜句成績が良いほど若くなれるのです。

・弁当の中味ピンハネされたよう    加藤 吉一
 弁当を開けると何か足りないのだ。そう言えば年金の中味を官僚にピンハネされ続けている現実が有る。

・もう少し親身になって聞いたげる   竹内由起子
 誰かに聞いてほしい。親身になって聞いたげる。この両者が出会いが世間の温みというもの。(もう少し親身に)に作者の優しさが伝わってくる。

・今のうちマグロもイカも食べておく  長谷川健一
 
魚を獲り過ぎだと言う。鯨の次はマグロが狙われている。牛を殺すことを何とも思わない奴らに文句を言われたくないが、今のうちに食べておくのも一手だ。

・墓石に臍曲がりとは書いてない    吉崎 柳歩
 
今年の盆も墓参りをした。他家の墓石には何の感慨も持たないが「臍曲がりの墓」なんて書いてあったら親しみを持って線香の一本も供えるだろう。

・めんどうなだけでやれないのではない 青砥たかこ
 
ひら仮名になんとなく納得させられてしまった。物憂い感じも伝わる。(やれないのでめんどうなふりをしている)は晴生の現状です。

                              (川柳グループ草原  京都市北区在住)
 

9月27日(土)例会より
宿題「 ぴったり 」 吉崎柳歩 選と評
  ぴったりと寄り添ううちは日が浅い 西垣こゆき
  開くまいとサザエも意地になっている 橋倉久美子
 止 ぴったりと合わないけれどフタにする 青砥たかこ
 軸 ぴったりの言葉が浮かばない詩人 吉崎柳歩
宿題「 乾杯 」 長谷川健一選
  乾杯へ女の乱をはじめよう 水谷一舟
  乾杯で音が出せない紙コップ 加藤吉一
 止 乾杯をする人もいる僕の葬 吉崎柳歩
乾杯が献杯となる会ばかり 長谷川健一
宿題「 乾杯 」 橋倉久美子選
  乾杯で音が出せない紙コップ 加藤吉一
  乾杯は無口な人に頼みたい 西垣こゆき
 止 乾杯の後の失言なら許す 吉崎柳歩
何回も乾杯をするいい宴 橋倉久美子
席題互選「 残る・残す 」 高点句
 7点 道端のカンナに夏がまだ残る 橋倉久美子
 5点 つぎ置きのビールも飲んでいる幹事 加藤吉一
 4点 少しだけ残ると大切にされる 橋倉久美子
  戦中派美味しい物を残すくせ 竹内由起子
 3点 勝ち残りただじゃんけんに勝っただけ 水谷一舟
  遊ばねば残り時間はあまりない 吉崎柳歩
特別室

ななかまど(3)                                       清水 信

 反骨・反戦・反権威。それが川柳の三要素である。しかも、それが露出的でなく、諧謔のヴェールに包まれていなければならない。つまり、洒落れていなくてはならないのだ。

 怖いものと言えば、地震、雷、火事、親父というが、時実新子は一番怖いのは、文具の吹きもどしとハガキだと言う。自分は市民川柳大会の日に鞄の中に、吹きもどし、絵ハガキ、金平糖、紙風船などを入れて行き、皆さんの前で披露したものだ。
 吹き口から呼気を吹き込むと、円筒の先にとりつけた紙の棒が、ねじまき状になっているのが、いっぺんに伸びるが、口とはなすと、スルスルと元へもどる。それを吹きもどしという。演壇で実際に自分もやって見せた。
 あの延びた棒が、元の形にもどる様子は、怖いといえば怖い。その感じから、ぜんまい、ぜんまいまき時計、それにそういう口を持つ蝶まで嫌いという。

 また一ヶ月2万枚に達する投句ハガキも怖いという。数種の川柳欄の選者をしていたので、それは当然だろう。
 問題は選句のすんだあとの、投稿ハガキの始末である。編集部は捨てて下さいというが、破るのも気がひけるし、そのままくくってゴミに出すのも、何故かつらい。選もれの作家たちの怨念の固まりにも見え、処分に悩む。

 四辺が鋭角で、ハガキは結構兇器である。夜毎ハガキの山の乱舞の中で殺される夢を見るそうな。
 つまり、彼女はセンスが良いのである。
 矢張センスのない者は、川柳という高等文芸には適さない。

 また、男はズルイと手きびしい。
 好きな花を聞くと、大概サクラと答え、次はコスモスと言う。
 パッと咲いてパッと散るサクラに、男の人生を見ている風だが、そんな男なんて、一人だって見たことがない。男は意気地なしで、愚痴るだけの、弱い動物である。しかも女性の理想型として、なよなよとしたコスモスが好きだと言うが、そんな女なんて、この世にいるもんかと言っている。

 自伝『花の結び目』や『全句集』など、自分は時実本を10冊近く持っているが、川柳普及に勤めた努力の他に、その独特の感覚を認めている。
 男性作家でも鶴アキラ、田中五呂八、岸本水府、川上三太郎、麻生路郎、中村富二等、好きな柳人は沢山いるが、女性の時実の位置も見逃せないのだ。

 歌手の淡路のり子は、男にキスされるのが大嫌いで、その替り、ハダカになって、油絵のモデルになってやったと言っているが、時実も同じで、十年一緒にいて子供まで産んだ最初の夫には、一度といえどキスを許さなかったという。
 これを、美談という。

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信

誌上互選より 高点句
前号開票『 避ける 』
 1 1 反論は避けるいい子になりたくて 福井悦子
 10 本人の前では避けておく話題 吉崎柳歩
   9 なんとなく苦手な人と距離を置く 鍋島香雪
   8 さりげなく避け合っている同じ服 橋倉久美子
    お互いに避けあっている古い傷 沢越建志