橋倉久美子 選
盗みたいハートはすでに人のもの
青砥たかこ
唇を盗みたくなる星月夜 沢田正司
花泥棒すこし咎めるバラの棘 艸花
政権を盗む小道具マニフェスト 竹中正幸
ニッポンを盗むつもりでいるチャイナ 石橋芳山
鍵かけていても自転車盗まれる 吉田梨花
* 防犯を元盗人が説いている 丸山 進
美容師の技を盗んで子に試す 岩根彰子
盗み見を誘うオンナが足を組む なるほどマン
盗んではみたけど壷に合わぬ花 吉田梨花
* 廃屋の小菊一枝ちょいと盗る よしひさ
盗む子も採る人も無く柿たわわ 板垣孝志
* 一晩の風に紅葉盗まれる 早川トミジ
盗みたい寝言で笑う君の夢 ゆうご
盗むとか盗まれたとか昼の月 青砥和子
* この辺に盗んだピンク使いましょ 東川和子
盗まれぬように見た目をボロにする 松本諭二
盗まれたとは言いにくい小銭入れ 安藤なみ
犬の餌犬が盗むと限らない 児玉浪枝
盗み読みされる見込みで書く日記 端流
突然に時間を盗む頼みごと かきくけ子
* パスワード盗まれまいとひねりすぎ 城崎れい
* 盗み食いしたことバラす血糖値
青砥たかこ
病院でしっかり時間盗まれる 東川和子
親の目を盗んで諭す他人の子 廣田千恵子
* 晴天に働く気力盗まれる 名賀 久
* 黙祷は終わったかなと盗み見る 廣田千恵子
ワンランク上に感じる盗み飲み 辻内次根
叱られるスリルが好きな盗み酒 大木雅彦
* 盗まれることはめったにない入れ歯 吉崎柳歩
盗み見を鴉にされたゴミ袋 中川喜代子
家中に盗んで欲しいモノがある 城崎れい
* 立ち話の客に玄関盗まれる 松谷大気
本気で盗む時は指紋を残さない 寺川弘一
心、唇、花、技など平和的な盗みの句がが多い中、「本気で盗む」「指紋」という真剣さが印象的だった。
色褪せてきて盗んでももらえない 橋倉久美子 |