目次3月号
巻頭言 「 清水先生と土曜会
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・エッセイ
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン     
・お便り拝受
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

柳歩・堤 伴久
山口龍一
たかこ

柳歩

清水信
橋倉久美子
石丸たか
柳歩


 
バックナンバー
20年 2月(170号)
20年 1月(169号)
19年12月(168号 )
19年11月(167号)
19年10月(166号)
19年 9月(165号)
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19年 2月(158号)
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18年12月(156号)
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)
18年 2月(146号)
18年 1月(145号)









 

巻頭言

 

清水先生と土曜会 
 

ず右の表紙裏のページをご覧下さい。大会の案内である。今月から一行増えていることをお知らせしたい。

 

今年のアトラクションは、昨年めでたく米寿を迎えられ、また中日文化賞という栄えある賞を受賞された文芸評論家、清水信先生に「講演」をお願いしたのである。

 

 先生には「特別室」で、いろんなジャンルから川柳の肥やしになるエッセイを書いていただいている。

評論家として、日本の文学界で知らない人はいないといえる第一人者である。清水先生を慕ってたくさんの「物書き(有名な人も無名な人もである)」さんたちが定例文学研究会に集う。

 

「土曜会」もそのひとつである。三重には他に、津に「津文研」四日市に「]YZ」があり、名古屋にもあるとお聞きしている。

本当にお忙しい方である。「土曜会は」第二土曜の午後から鈴鹿のコミュニティセンターで開かれる。

 

先生はお体も健康だが、記憶力は衰えず、視力、聴力どれをとってもお若いときのままであるから不思議である。ただ昔のニックネームが「ベートーベン」であったという、ふさふさの髪は、身長も重力の関係で少し縮まれた。

 中学の教師を経て、市会議員までされたことのある経歴も人間を奥深くさせている。

 

 講演のタイトルは「川柳は鳥」とお聞きした。短い時間だが、きっと心に残るお話だと思う。

 

 皆さん、楽しみに来てくださいね。

                                                                                                                                                   たかこ

すずか路より
取り過ぎて最後の皿を持て余す 小嶋征次
約束を今も覚えている小指 山本喜禄
盗られてもいい物入れておく金庫 山本 宏
買い物にポリシーがあるおばあちゃん 鍋島香雪
外壁の西日はすでに春のもの 上田徳三
長旅の後三日目に出る疲れ 山本鈴花
恨みごと言って自分を傷つける 沢越建志
大食いをきそって芸のないテレビ 鈴木章照
春風を胸の窪みで待っている くのめぐみ
弱点をさらして人の世を渡る 木村彦二
ウトウトとするとポトポト落ちる刻 青砥英規
客席にいる妹が眼に入る 鶴田美恵子
ああ言えばこうを一日考える  堤 伴久
二人称で渡ると風が柔らかい 山口龍一
騙されてあげるあなたが笑うなら 寺前みつる
頼られて悟った母の深き老い 秋野信子
物干しにひっそり干して老夫婦 水谷一舟
顔よりも大きい花を愛せない 坂倉広美
美しく溶けそこなった雪だるま 橋倉久美子
気が多い妻の予定はすぐ変わる 北田のりこ
手作りとことわってから出すギョーザ 高橋まゆみ
日展を見る目で趣味の絵を見られ 加藤吉一
春色の空に向かってスタンバイ 竹内由起子
庭のゴミ掃除している雪ダルマ 長谷川健一
チョコレート自分好みをプレゼント    安田聡子
散歩道道路工事に杖も泣く 瓜生晴男
$建ての換算困る歳になる 水野 二
真似しても歌えないのに好きな曲 上田良夫
新聞がなければないで川柳書 吉崎柳歩
息つぎがだんだんうまくなってくる 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

 
 
169号から                                    山口 龍一

・道頓堀のたこ焼きプライドが高い   北田のりこ

 もともと私が川柳にはまり込んだのは、川柳の大御所「岸本水府」の句が好きで、(と言うより肌に合っているといった方がいいかも知れませんが)特に「道頓堀の雨に別れて以来なり」のファンです。若かりし頃、大阪に住んでいて道頓堀で食べた「たこ焼き」が青春の思い出です。そうです。地方のたこ焼きは「たこ焼き」ではありません。しかし最近の小麦価格の高騰でセレブの食べ物になりそうです。

 

・冬ですね話し言葉があたたかい    水谷 一舟

 毎日のようにパソコンに触っていると、時々寂しい気持ちになることがあります。パソコンで遊ぶのはそれなりに面白いですが、やはり話し言葉にはかないません。句会で皆さんにお会いしてバカ話をすると、何かしらあたたかく感じるのは誰でも同じです。

 

・お小遣いだけです自由になるお金   寺前みつる 

 男の給料が現金払いから振込みになって、小遣いは奥さんに貰うようになりました。男の権威は失墜です。身にしみる話ですネ。

 

・何もかも燃やし一気に過去にする   橋倉久美子

  久美子さんの句はノンフィクション(?)であろうと思いますが、彼女の若々しい句が好きですネ。

 

・遼さん遼さんあなたのことは忘れない 吉崎 柳歩

・あの星はひと際光る遼さん      青砥たかこ

  私の鑑賞文は半分は好みによりますが、最後はどうしてもこの句を入れずにはいられません。私が多村  遼さんにお会いしたのが五年前の「連句」の大会でした。私は鈴鹿川柳会とは当時関わりがなかったのですが、彼女は連句では全国的に名の売れた作者で、私は大ファンでした。文部大臣賞など国民文化祭の賞を総なめにする才女でした。彼女に逢った時、「私は川柳もやっていて、『鈴鹿川柳会』では新人です」なんて謙虚に言っていたのが印象に残っています。私にとっては一生忘れられない人物の一人です。

 

                                 (三重番傘同人 伊勢市在住)

 

2月23日(土)例会より
宿題「 謎 」 吉崎柳歩 選と評
  謎めいた仕草惚れてるともとれる 水野  二
  謎のあるところがチャームポイントね 青砥たかこ
 止 掘りおこすころには謎になっている 橋倉久美子
 軸 超能力者に頼んでみても解けぬ謎 吉崎柳歩
宿題「 とても 」 竹内由起子選
  小さいがとても大事な第一歩 東川かずこ
  しゃべらなきゃとてもかわいいおばあちゃん 青砥たかこ
とても不安分娩室へ行く廊下 加藤吉一
無理ですよ間食なしのダイエット 竹内由起子
宿題「 とても 」 橋倉久美子選
  「きれいだよ」と言うときとても努力する 坂倉広美
  始まりはとても小さな嘘だった 東川かずこ
 止 とてもとても私なんてと前に出る 青砥たかこ
とてもではないが一升瓶は無理 橋倉久美子
席題「 駅 」 互選高点句
9点 各駅で行こう時間はたんとある 小嶋征次
7点 寅さんがひょいと顔出しそうな駅 橋倉久美子
6点 自販機が故障している無人駅 吉崎柳歩
   駅おりて淋しくなってきた家出 水谷一舟
5点 ほろ酔いで終着駅へ運ばれる 小嶋征次
  日本一短い駅の名で知られ 北田のりこ
特別室

タイトル非難

 

 書名に「品格」の入っているような本は読むな。さらに「力」の入っている本も読むな。「敬語」や「幸福」や「見識」の入っている本も読むな。


 文章教室に集う若い人たちに、自分は、そう言っている。とりわけ品格ブームはひどいな。「女性の品格」から「親の品格」「横綱の品格」「芸者の品格」「上司の品格」「会社の品格」「男の品格」などキリがない。やがて「赤福の品格」とか「ギョウザの品格」という本も出版されそうである。


 たとえ、ベストセラーになっても、それらは読んではならぬ。とりわけ文芸に従うものは、チラとでも見てはならぬと思う。

 あれらには、文学や、文芸に従う者を、うしろに引もどそうとしている謀略の匂いがする。それも、濃い。

 品格のない連中に、品格について聞きたくはないし、力のない者から力について話してもらいたくない。

 ともあれ、ベストセラーとか、人気のあるものから、そっぽを向けていないと、ロクな川柳だって出来やしないのだ。


 毎年サラ川の発表の頃になると、うっとうしい、いやな気分になる。ネコ川やイヌ川、ハゲ川などの入選作発表もイヤになる。俗衆への媚態がイヤだね。


 芥川賞のバカ騒ぎにも同調出来ない。そりゃ、「乳と卵」の川上未映子(第138回芥川賞)はシースルーの上着と超ミニスカで受賞式に臨んだ可愛い子ちゃんではあるが、「乳房と卵子」といきたいところだ。言葉の感覚としては、そうだろ。直木賞の桜庭一樹にしても(受賞作「私の男」に関して)、何も父親と娘との近親相姦を描くことはなかったのに、と思う。


 芸術は何でもそうだが、低いところで論じではならぬのだ。といっても、トシヨリから、お前の作品は、何てへたなんだと叱られている青年たちに、僕は味方する。

 大江健三郎はデビューの時に、こう言ったのだ。

「あんたたちが下手だと思っている文章を、意識的に書くために、僕ら若者は生まれて来たのだ」

 ケイタイ小説を、僕は軽視しているけれども、意識して下手で、俗な文芸に挑戦している者らを、軽視しているわけではないのだ。


 春は、いつも憂鬱である。

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信

誌上互選より 高点句
前号開票『 青年 』
   8 青年に託して舞台から降りる 吉崎柳歩
  こんにゃくのような青年ばかり増え 橋倉久美子
      青年の気迫で古希を乗り越える 瓜生晴男
   6 青年の一途へ風向きが変わる 吉崎柳歩
      青年の力がうれし災害地 鈴木裕子
    青年の心で前を向いている 小嶋征次
   青くさい意見若さに夢がある 水谷一舟