目次4月号
巻頭言 「 不断桜グループ」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・例会
・例会風景
・没句転生
特別室
・アラレの小部屋
・インターネット句会
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・お便り拝受
・各地の大会案内
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

堤 伴久・吉崎柳歩
浅井美津子


柳歩
清水信
橋倉久美子

柳歩


 
バックナンバー
21年 3月(185号)
21年 2月(184号)
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20年 12月(182号)
20年 11月(181号)

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巻頭言


 不断桜グループ

               不断桜

                  伊勢の白子子安観音にある桜。天然記念物。サトザクラの一品
                     種で年中開花し、春秋の花は花柄が長く冬のものは短い。また、
                     冬も葉を残す。別名白子不断桜と辞書にある。

 

  今年の鈴鹿の大会のアトラクションは、1m×1,3mのジャンボ紙芝居である。ふすま一枚分くらいあるだろうか。そんな紙芝居の内容は、「鼓ヶ浦の由来と伊勢形紙」をやっていただく。

「不断桜グループ」の発足は平成三年のこと。一枚一枚自分たちで絵を描き、文を作る。ナレーションから演出、すべて手作りのオリジナルである。会員は七名、全員女性である。

 名前の由来をお聞きした。年中美しい花を咲かせている、子安観音寺の不断桜にちなんだそうだ。たしかにいつお会いしても、明るくきれいなお姉さま方ばかりだ。

 地元のケーブルテレビではおなじみだが、これまでの実績を、記させていただく。

・平成十一年 三重県平成文化賞受賞
・明和町 斎王祭にて十五年間出演
・NHKテレビ「発見ふる里の宝」に出演
・その他
 ジュサブローや、桂歌助さんと同じ舞台で披露した。

 ご要望があれば、全国津々浦々出張してくださるようだ。
                                                                                                                                                                                                                                                                                        たかこ

 

すずか路より
子は宝ひとり息子はなおさらに 鍋島香雪
廃校のさくら訪ねる人もなく 萩原典呼
看板を背負うと足が前に出る 鈴木章照
渡すのをためらったチョコ食べている 山本鈴花
どことなく偽装の匂いする美談 山本 宏
登り坂スローテンポが様になる 沢越建志
風が吹くと消えそうになる淡い恋 高柳閑雲
不完全燃焼の日は気が疲れ 加藤峰子
胃カメラは根性だけじゃ飲み込めぬ 石川きよ子
僻地ゆえ運転免許手放せぬ 鶴田美恵子
散り際の美学とやらも地に墜ちる 堤 伴久
御期待に沿うと疲れてくる桜 寺前みつる
敵失で逆転狙う自民党 山本喜禄
妻に贈ることばにしたいウアリガトウ 水谷一舟
E・T・C連休までに間に合わぬ 西垣こゆき
酔ったからあんな歌にも拍手する 松岡ふみお
使っても短くならぬボールペン 坂倉広美
くす玉が割れくす玉もほっとする 橋倉久美子
献金の元は水増し工事代 北田のりこ
くわを持つ時間の倍はご休憩 高橋まゆみ
背もたれに腰掛け春の絵を描く 青砥英規
性格に注意しながらお付き合い 秋野信子
料金は下がったけれど渋滞路 落合文彦
ルンルンで子らに甘える旅支度 鈴木裕子
旬の味忘れず届くおつき合い 浅井美津子
いい加減に作った料理ほめられる 安田聡子
人間の都合うずらに罪はない 長谷川健一
騙されたつもりで蟹を買ってみる 加藤吉一
春風に乗って聞こえてくる噂 竹内由起子
淋しさで向かう足どり妻の墓 水野 二
相槌がトラブルまでも連れてくる 瓜生晴男
イチローと愚息を較べたりしない 吉崎柳歩
人の目にどう映ろうとこのままで 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

    
  182号から                                      浅井美津子

 一覧の上共感、情景が見える句を鑑賞させていただきました。

父母の老い確かめに行く実家      橋倉久美子
 
どう元気?電話をかけると「元気よ、それより貴女たち大丈夫?風邪など引かないようにね」と老母。何もしてやれないが、「老いを確かめに」車を走らせる娘の深い思いが伝わる。

身を案じついに口調が荒くなる     山本 鈴花
 凶暴な事件多発。子女に注意するが子らは茶化して素直に聞こうとしない。心配しているのにと、つい口調が荒くなる。

あくび出る心身ともにリラックス    鈴木 章照
 
大会を終えほっと一息。あくび出て身も心もくつろいだ、リラックスできた。

心の田耕すことも忘れまい       くのめぐみ
 
長い一生には思いがけない苦難に遭遇することもある。何が起ころうとしっかり受け止められるよう、心の準備怠らず。

立ったまま居眠りできる人もいる    鶴田美恵子
器用な訳ではない。満員の車内、電車の揺れに疲れ切った身体がつい居眠り。吊革はしっかり握っている。サラリーマンの頑張り。 

「もうあれが咲きそう」妻と僕の早春  堤  伴久
 
穏やかな熟成夫婦の語らい、絵が見えてくる。

背中にも目が必要なこの世相      山本 喜禄
 
後ろ、いや四方に目が必要。物騒な世の中に。

がんばれと私見つめている遺影     鈴木 裕子
 
どんなに仲が良くても一緒に逝けないのがあの世、笑顔の写真が励ましてくれる切なさ。

経験が有り就かせたくない職場     加藤 吉一
 
家族の為辛い仕事でも辛抱した、が子供にはあの職業には就かせたくない 親心。

賽銭が肩越しに飛ぶ初詣で       水野  二
 
不況の神頼み。初詣での人手は凄かった。拝殿に到達も至難の業。遂に背後から賽銭を投げて拝む。流石に万札は見当たらなかった。

踏み台になる幸せだってあるのです   青砥たかこ
 
リーダーの踏み台で会は発展。会員の成長につながるそれが幸せと受け止めていられる。人生悟りの句。さらりと詠める句主に敬服。  

                                   (鈴鹿市在住・鈴鹿川柳会前会長)
 

3月28日(土)例会より
宿題「 ふわふわ 」 吉崎柳歩 選と評
  ふわふわの心得がいる宇宙船 加藤吉一
  決断がつかずふわふわさせておく 北田のりこ
 止 ふわふわと歩く訃報を聞いてから 橋倉久美子
 軸 好きですと言われしばら蝶になる 吉崎柳歩
宿題「 困る 」 橋倉久美子 選
  困らすことがお前は好きなねりワサビ 水谷一舟
  まかせろと言ったが開かぬ瓶の蓋 吉崎柳歩
 止 淋しい顔をするから困る別れ際 坂倉広美
燃えやすい男と知らず火をつける 橋倉久美子
宿題「 困る 」 北田のりこ 選
  善意だから困るあなたのお節介 西垣こゆき
  即答のできないことを児に聞かれ 浅井美津子
 止 酔っ払うと脱ぎ出すくせがあるのです 青砥たかこ
万歩計遠出しすぎて呼ぶ車 北田のりこ
席題互選「 出世 」 高点句
 8点 出世した証拠にお辞儀うまくなる 北田のりこ
 7点 出世したらしい尻尾がとれてきた 橋倉久美子
 6点 友だちの出世も不機嫌の理由 吉崎柳歩
  出世するチャンスだ恋を乗りかえる 水谷一舟
  出世から逆算されて塾通い 加藤吉一
 5点 出世するタイプじゃないが仕事好き 竹内由起子
  出世してむかしのことはみな忘れ 坂倉広美
特別室

鶴彬三章(2)                                     

 鶴彬(つる・あきら)本名は喜多一二(きだ・かつじ)は、石川県河北郡高松町で生まれた。父が30代で急死した時、母のもとには彼をふくめて、5人の子供が残された。母寿々(すず)は5人の子を親族にあずけて、福井の機屋へ女工として働きに出た。
 母はやがて再婚したが、身を寄せていた伯父は娘たちは女学校へ通わせたものの、男兄弟は家業につかせた。

 15歳の時、鶴は「北国新聞」に投稿した句が、初めて採用された。

・雛に宿る淋しい影よ母よ
・燐寸の棒の燃焼にも似た生命

 母に捨てられた子の悲哀は、その後の作にも現われている。

・可憐なる母は私を生みました
・ひとときを積木の家の中に居る

 孤独と闘い、マルクスにはまったり、性欲に悩んだりもした。

・静かな夜口笛の消え去る淋しさ
・釈尊の手をマルクスはかけめぐり
・性欲といふ細い掛橋だ

 鶴は、やがて柳誌に参加し、前衛川柳の道を歩み始める。大阪へ出て働き、いったん帰郷するが、また上京、「既成川柳の安価な人生観照」を否定する条件は整っていた。鶴は詩も書き、評論も書いていく。

・飢と言ふ影に追はれて反旗を伏す
・退けば飢ゆるばかりなり前へ出る
・プロレタリア生む陣痛に気が狂ひ

 彼の主宰するプロレタリア川柳研究会は、全員が検束され、家宅捜査を受ける。勤め先もなく、自由労働者として底辺の肉体労働に従いつつ、句作を続ける内、徴兵年齢となる。

 鶴は金沢の第九師団に入隊するが、隊内で赤化事件を起す。軍事裁判にかけられ、懲役3年の刑を受けるが、「川柳は一つの武器である」から反権力の闘いをすべきだという主張は変らなかった。

・十五日経つたら死ぬという手当
・しもやけのクリーム買つて飯を抜き
・どてつ腹割れば俺いらの物ばかり

 治安維持法施行下に非業の死を遂げた天才を、時代が違うということで無視することは出来ないのだ。もう一度読み直して見るべき人であろう。

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信

誌上互選より 高点句
前号開票『 違う』
 1 3 感性の違いで溝が埋まらない 吉崎柳歩
 11 参加者を見て場違いと引き返す 落合文彦
 1 0 会うたびに違う名前になっている 高橋まゆみ
   9 夫婦ではないとフロントには判る 吉崎柳歩
  7点  元気よくたたいた肩が人違い 鈴木章照
    釣り銭が多い言おうか言うまいか 福井悦子