目次12月号
巻頭言 「 忌みことば」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・例会
・例会風景
・没句転生
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・インターネット句会
・みんなのエッセイ
・各地の大会案内
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

吉崎柳歩・堤 伴久
西垣こゆき
 

柳歩
清水信
橋倉久美子
柳歩



鈴木章照

バックナンバー
21年11月(191号)
21年10月(190号)
21年 9月(189号)
21年 8月(188号)
21年 7月(187号)
21年 6月(186号)

21年 5月(185号)
21年 4月(184号)

21年 3月(183号)
21年 2月(182号)
21年 1月(181号)
20年 12月(18
号)
20年 11月(179号)

20年 10月(178号)
20年 9月(177号)
20年 8月(176号)
20年 7月(175号)
20年 6月(174号)
20年 5月(173号)
20年 4月(172号)
20年 3月(171号)

20年 2月(170号)
20年 1月(169号)
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巻頭言


 忌みことば

 近頃は、手紙好きの私でさえケータイのメールやFAXを用い、簡単な文で相手に近況、あるいは用件を伝えてしまっている。
 そのためか、最近改まって手紙を書くことがとても苦手になってきた。
 季節の挨拶も、十二月なら

寒気厳しき折から
師走に入って一段と寒くなり
今年もいよいよ押し詰まり

 など、書き出すが、なんとなく白々しく感じてしまう。メールなら、

寒いですね、元気ですか?

 で充分である。あまり長い文にするとそれだけ相手にも受信料がかかるから、挨拶は、特に短い方がよい。
 しかし、目上の人や、メールの付き合いのない人、そして何かをお願いしたりする場合はやはり手紙をしたためた方がよい。

 この間、知人の御主人が亡くなって、葬儀にも行くことが出来なかったため、手紙を書くことにした。書き出しをどうしようか迷って「手紙のことば辞典」を調べてみた。その中に「ミニ知識・手紙の忌みことば」欄があり、心して書く手紙に(突然の挨拶にあがってしまって、口を滑らすことはあっても)わざわざこんな言葉は使わないだろうとは思ったが、ちょっと書き出してみようと思う。

結婚の場合
 別れる・離れる・去る・帰る・戻る・切れる・飽きる・破れる・浅い・薄い など
出産の場合
 流れる・落ちる・滅びる・消える・枯れる・薄い・浅い など
開店・新築の場合
 火・煙・燃える・焼ける・壊れる・つぶれる・傾く・閉じる・失う
弔辞の場合
 かさねがさね・かえすがえす・たびたび
しばしば・また・再び・追って

 なんだか、川柳の「題」によくある言葉ばかりで、変な気分になってしまった。

                                                                      たかこ

 

すずか路より
航空写真私の家はここにある 山本 宏
焦げつかぬようマンネリを裏返す 堤 伴久
待てば来るひとが鯖ずし下げてくる 寺前みつる
年内に拘り暮が気忙しい 浅井美津子
スキップで出掛けしょんぼり帰宅する 鍋島香雪
幸せな年へ雑巾がけをする 山本鈴花
スポットを浴びてやんやの仕分け人 沢越建志
原点にもどれば母の子守唄 くのめぐみ
賑やかにみえて寂しい路地の裏 高柳閑雲
退院のバロメーターか減らず口 鈴木章照
軋み合う事も楽しむ夫婦旅 加藤峰子
今晩のメインディッシュがチンと鳴る 山本喜禄
約束を守れなかった雨を聞く 水谷一舟
弁当を持たせて今日も自由人 加藤けいこ
行きたいな虹が落ちてるあの場所に 小川のんの
焼き芋も焚き火も出来ぬ落ち葉掃き 西垣こゆき
高下駄と番傘だった通学路 松岡ふみお
聞くだけは聞くタメになるアドバイス 坂倉広美
髪を切るのに理由などありません 橋倉久美子
百均の判でも判を押す重み 北田のりこ
上げた肩おろしてみたら句が生まれ 高橋まゆみ
カーナビは迷わないからつまらない 青砥英規
もう犬について行けない老夫婦 秋野信子
洗濯機あと三分を待つ長さ 落合文彦
声立てて笑えることの一周忌 鈴木裕子
指示通り名前も知らぬ花植える 加藤吉一
あす旅行どのチャンネルも雨と言う 長谷川健一
現金を贈って済ますサンタさん 竹内由起子
十八番ではないがこれしか知らぬ唄 水野 二
悪筆でもそろそろ書くか年賀状 瓜生晴男
いくらでも食べられるけどこの辺で 安田聡子
納得がいけば修正する持論 吉崎柳歩
しがみつく花の哀れを笑えない 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

    
  190号から                                      西垣こゆき

容疑者が笑顔で映るワイドショー    山本  宏
 
マスメディアが発達した現在、捕まるまでは時の人。中には、笑顔でカメラ目線の人もいる。あれっ、どこかで見た顔。

東京の首輪を外し素に戻る       青砥 英規
 
東京行きの新幹線に乗っただけで緊張してしまうのは何故。帰りは、名古屋から近鉄に乗り換えただけで、体の力が抜けて、徐々に素の自分に戻って行く実感。

ひらがなのおんなになって逢いにゆく  高柳 閑雲
 
好きな人を想う時、女は優しい気持ちになるものですね。ひらがなの女とは、言い得て妙です。どうぞ、おしあわせに。

柳刃も出刃もいとしく老いを知る    加藤けいこ
 鮮魚商の母上の手伝いをして、子どもの時から刺身用の柳刃や、骨ごと切れる出刃包丁を研いでいたけいこさん。使い込んで薄くなった刃物に自分の歳月を重ね合わせ、感無量。

若作り破れジーンズ似合わない     松岡ふみお
 
流行りの破れジーンズ、何事も旬があるようで、若者が穿くと「かっこいい」のに、小父さんが真似したら、だらしなく見えるものですね。

早食いで手持ちぶさたなフルコース   北田のりこ
 食べた味忘れた頃に次の品、フルコースって、インスリン効果で満腹感を覚えさせるコンタンなのかと、思う時があります。

野菊からもらう優しい心持ち      鈴木 裕子
 
裕子さんの優しさと、野菊の清らかさが呼応して、一幅の絵を見るような清涼感を感じます。

つぼみつけ赤い花だったとわかる    橋倉久美子
 
どんな花かと心待ちにして育てた苗。咲き始めて、その鮮やかさに驚かされるのは、子供達が持っている才能にも共通していますね。

ちょうどよい機会とゴミに捨てられる  青砥たかこ
 
いつか使いそうで、捨てられなかったもの。時と機会が合致して心残りなくゴミになる。捨てられる身には、ちょっと悲しい。それは、私かも知れないからだ。

                                    (鈴鹿川柳会会員・菰野町在住)

11月28日(土)例会より
宿題「 失う 」 青砥たかこ 選と評
  失ってみたい記憶もありますが 加藤けいこ
  初めからなかったものとあきらめる 吉崎柳歩
 秀 失っていても気付かぬ脳のネジ 北田のりこ
失うとわかる要るもの要らぬもの 青砥たかこ
宿題「 塩 」 長谷川健一 選
  締まらない男に塩を振りかける 橋倉久美子
  健康な汗には塩を惜しまない 浅井美津子
 秀 天然塩の旨さ微量の不純物 北田のりこ
太古より同じ技法を守る塩 長谷川健一
宿題「 塩 」 橋倉久美子 選
  これ以上塩控えると腐りそう 鈴木裕子
  かいだるい話多目に塩を振る 青砥たかこ
 秀 派手に塩まいて肩すかしで負ける 吉崎柳歩
塩は敵高血圧もナメクジも 橋倉久美子
席題「 易しい」 清記互選 高点句
 7点 何問か易しい問いもまぜておく 橋倉久美子
  易しくはない美しく枯れるのも 橋倉久美子
 6点 易しいと謳ってはある入門書 鈴木裕子
 4点 易々と入った門を出られない 加藤けいこ
  易しいと思うレシピで四苦八苦 竹内由起子
  易しいと言っていたのに不合格 竹内由起子
特別室

『宇宙時間』近刊                                     清水信 

『川柳・緑』は、毎月お送り戴く。
『宇宙時間2008』は、臨時増刊号だが、通巻562号に達している。勢いの止まらぬ柳誌で、渡辺和尾主宰の持久力の強さが分かる。
 不定期刊を月号体制にしたのは、百五十号からで、その上、『宇宙時間』というアンソロジーを年間計画の中に入れたので、以来年13冊の発行となった。
 2008年版が、この9月に刊行になったのだが、それでも大奮闘だ。
 巻頭のアンソロジー(月刊『緑』推薦句集)は、頭韻によって整理されていて面白い。例えば「れ」は、

・連体の口内炎を連れ歩く  白藤海

 の一つである。「あ」は25句、「お」は24句、「こ」は28句もあるのに不思議だ。

「く」は三句、「け」も三句、「ぬ」も三句、「へ」は二句、「め」や「や」も二句、「り」「る」も二句、そして「の」は一句である。こういう分類も、何かおかしい。

 数字や固有名詞やオノマトペの使用による分類法もあるだろうし、それはかなり作者の深層心理の分析に役立つと思われる。

『宇宙時間』の「こそあど」言葉関連の作を引けば、こうなる。

・ここまでは前任者の責任ですよ            渡辺和尾
・この引出もあの引出も前世紀              堀恭子
・この辺でメモを渡していなくなろう            吉田三千子
・そのときは納得やがて迷惑に              渡辺和尾

 この号は、他に第17回朝日中部川柳大会の特等があり、冒頭の平賀胤寿の講演記録「根付と川柳の世界」の視角が仲々面白かった。

 中部川柳大会では、今回は青砥たかこや橋倉久美子の投句もあり、興味を持った。東川和子の作にも関心があった。
 川柳作家は、名前が良くなければならない。その点、「いまいまい」という人に、初めて注目した。同氏の作を、少し抄出する。

・焼芋屋と蕨餅屋は同じ人
・水中花いまに助けてあげるから
・解凍をしてもヒラメの目は左
・嘘一つ混ぜたサラダがほろ苦い
・スキップができぬくらいで悩むなよ

 選者の樋口由紀子が「ええ人が多いなあ」と選評を書き始めているが、いまいまいも選者のひとりで、写真も載っているので、人柄も察せられる。

                                                                 (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 線 』
 1 0 五線譜をはみ出す父のリズム感 高木みち子
   姑がセンターライン越えてくる 岩田眞知子
   9 線ばかり引いて頭に入らない 吉崎柳歩
   7 あれ以来平行線のまま夫婦 福井悦子
    ウエストのラインが消えたバイキング 山本鈴花
  6 働いた分だけ線が太くなる 竹内由起子
   予防線張ってオトコを寄せつけぬ 吉崎柳歩
   人様が引いた線からはみ出てる 青砥たかこ
   いい線に達した頃は時間切れ 松岡ふみお