目次1月号
巻頭言 「 子年によせて
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・没句転生
特別室
・アラレの小部屋
・エッセイ
・前号印象吟散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン     
・お便り拝受
・年賀広告
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

堤伴久・柳歩
大木俊秀
たかこ

柳歩
清水信
橋倉久美子
たかこ
柳歩


 
バックナンバー
19年12月(168号)
19年11月(167号)
19年10月(166号)
19年 9月(165号)
19年 8月(164号)
19年 7月(163号)
19年 6月(162号)
19年 5月(161号)
19年 4月(160号)
19年 3月(159号)
19年 2月(158号)
19年 1月(157号)

18年12月(156号)
18年11月(155号)

18年10月(154号)
18年 9月(153号)
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18年 7月(151号)
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18年 5月(149号)
18年 4月(148号)
18年 3月(147号
)
18年 2月(146号)
18年 1月(145号)









 

巻頭言

 

子年によせて
    

 新年おめでとうございます。

ネズミの年ということで、いつもに増してミッキィマウスがもてはやされそうだ。

 昨年、売り出された年賀状も特別にこのミッキィマウスの図柄があった。

 干支が一巡して、一番すばしっこそうなねずみの年。子孫繁栄の象徴であり、方角は北。昔の時刻ではねの刻、午後十一時から午前一時のあいだとなる。人はこの時間に眠るのがベストとされている。

 
 この子年生まれだった亡父が、「子年の人間は、片付け上手で世話焼きが多い」と、よく自慢をしていたが、父が掃除をしているのを、ついぞ見たことがなかった。

 
 昔、家の天井裏をよくねずみが運動会をして、困った家人が飼い猫を送り込んだところ、猫がねずみを追い掛け回してよけいうるさくなったことがあった。

また結婚してからも新居にゴキブリの三倍ほどの小さなねずみを見付けて、部屋を締め切り掃除機で吸い取り作戦をやった。うまく掃除機が吸い込んだまではよかったが、当時は紙パック式ではなかったため、掃除機を開けたとたん逃げられてしまった。

 
 ねずみに関する言葉を拾い出したら「鼠入らず」というのがあった。「猫いらず」は猛毒だが、この「鼠入らず」は鼠が侵入しないように作った食器棚とある。別に「鼠殺し」もありこれは猛毒とあった。

 
 この一年、鼠算よろしく若い会員が増えるよう祈りたい。

 また今年も皆様よろしくお願いいたしまチュー。

                                                                                                                                                   たかこ

すずか路より
笑えますか人間という無力さを  堤 伴久
疲れたら空と会話を楽しもう 青砥英規
私にも覚えがあって叱れない 北田のりこ
長年のタバコのヤニと罪洗う 上田徳三
孫の歌唄うほんまのお爺さん 山本 宏
エコバッグいいえわたしは風呂敷派 鍋島香雪
赤福の偽装で伊勢の名を汚す 山本鈴花
捨て駒にされてと金の夢も消え 沢越建志
寅さんを観て満ちたりた頬になる 鈴木章照
おばちゃんの劇に私もはまっちゃう 鶴田美恵子
たるんでる腕をいきなり叩かれる 木村彦二
中ぐらいの暮らしがしたいねずみ年 寺前みつる
もったいないカマボコ板が捨てられぬ 山口龍一
冬ですね話しことばがあたたかい 水谷一舟
宅配が走り回ってまた師走 山本喜禄
文字のない本といちにち寝ころんで 坂倉広美
車間距離とったおかげで割り込まれ 橋倉久美子
きっぱりと忘れたいこと多すぎる 東海あっこ
バイキング元はとれない歳になる 高橋まゆみ
しあわせをユニセフに寄せ年終わる 鈴木裕子
急須からペットボトルのお茶が出る 長谷川健一
孫のお守りさせて孝行したと言う 小嶋征次
奉仕する人を待ってる畔の缶 加藤吉一
もう自由細い糸まで切っておく 竹内由起子
カニだけは満腹だって入りそう     安田聡子
三が日特急停めて稼ぐ駅 水野 二
習っても料理は妻に任せきり 上田良夫
妻が臥せ孫に教わる目玉焼き 瓜生晴男
飲むなら乗るな妻の車で行く年始 吉崎柳歩
家系図がちょっと変化をみせてくる 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

 
 167号から                               大木 俊秀

・あらっぽい地図で訪ねてこいという  坂倉 広美

 作家・山本一力氏が修業時代、師から徹底的に叩き込まれたのは「安易に形容詞をつかうな。他の方法でことばの力を引き出せ」だったという。でも、この「あらっぽい」という形容詞は、地図を形容するのには最高の詞と見る。親しい間柄もしのばれる。

 

・うちの人ケンカ相手もしてくれる   安田 聡子

 夫婦喧嘩を詠んだ句は多い。しかし、この句の視点はすぐれて新鮮だ。妻の掌の上でシャドーボクシングをする夫よ。ごちそうさま。

 

・大金を持つと小心さがわかる     青砥たかこ

「まるで私のことを詠まれたみたい」と読者に微笑や苦笑を浮かばせるのが、川柳の醍醐味の一つと私は思っています。泥棒も盗っていかない下着干す(高橋まゆみ)も、いい味をふくんだ句ですね。

 

・ダイエットしないと天使にもなれぬ  橋倉久美子

「にも」という助詞は、ダイエットの多目的を示しているのだろう、あまりの肥満体だと普通の翼では空を翔べない。夢のある、女性ならではの好吟。「には」では作意に反するか。

 

・ベテランのナースは足音がちがう   上田 徳三

 五感の働きが川柳作句には重要な役割を果たす。特に視覚と聴覚。作者はその音の差を聴き逃さない。助詞は、この句ではやはり「が」だろう。「足音も」ではなくて。

 

・お土産に疑心暗鬼の目が刺さる    沢越 建志

「疑心暗鬼」という四字熟語が、五七五の中に溶けこんでいるのがよい。上五部分の字余りは許容されることから、四字熟語を上五に据えて仕立てる人が少なくない。


赤福の騙しに濁る五十鈴川        俊秀  


      (NHKぱらぼら川柳会主宰・番傘川柳本社同人・神奈川県在住)

12月22日(土)例会より
宿題「 過去 」 吉崎柳歩選と評
  いじわるな過去に時々泣かされる 青砥たかこ
  すぐ掘れる浅さで過去を埋めている 坂倉広美
 止 棺桶に入ると全部過去になる 寺前みつる
 軸 過去形で話して罪を軽くする 吉崎柳歩
宿題「 そろそろ 」 坂倉広美選
  ハンドルは止めるそろそろ喜寿となる 岩田明子
  ロケットはそろそろ飛んでいられない 吉崎柳歩
 止 喜寿米寿そろそろ百を意識する 中田たつお
 軸 そろそろと動かす首輪の中の首 坂倉広美
宿題「 そろそろ 」 岩田明子選
  そろそろと瘡蓋剥がすから痛い 山本 宏
  お迎えがそろそろ遺書を書き始め 中田たつお
 止 中締めの時を計っている幹事 吉崎柳歩
老いの指スロースローのキーボード 岩田明子
席題「 うれしいこと 」 *読み込み不可  互選高点句
9点 人伝に子の頑張りを耳にする 小嶋征次
8点 満腹の財布に妻がしてくれる 寺前みつる
  Mサイズ遂に入ったダイエット 岩田明子
6点 心臓が今日も動いているたしか 坂倉広美
  ゼロ一つ付けたら売れた在庫品 山本 宏
特別室

反骨と嘘

 

  古今亭志ん生も言うように「こんなこたあ学校じゃ教せえない」というのが、文学や芸術の核だろうと思う。 

『オール読物』12の巻頭グラビアには秋山庄太郎の「文士と煙草」というページがあって、松本清張、司馬遼太郎、井上靖、柴田錬三郎、池波正太郎、生島治郎、吉行淳之介らの紫煙にむせぶ恰好良い写真が並んでいる。世にはびこる嫌煙権への反発と見れば、愉快だ。


 これらの作家の中には高血圧の者も胃腸の弱い者も、ぜんそく持ちもいるのだから、健康第一という考えには馴染まぬ反骨精神を見るべきだ。


 特集は「時代小説と藤沢周平に浸る」で、他に「団塊の世代が嫌いだ」という対談や「江戸の女の旅」という対談もあって、反抗的な所がいい。


 そしてまた阿部達二の川柳談「吉原を訪ねる」がある。『柳多留』や『末摘花』という古典川柳をここで持ち出すと、本誌の美女連中からうとまれることは必定だが、「煙草を止めない男」同様、昔のエッチな川柳を語るダンディズムも棄て難いのである。

 

・やぼなことどこへおいでと土手でいい

 

 男ばかりではない、神もホトケも通ったという遊里・吉原である。土手八丁を渡れば大門だ。

 

・三夕のほかの夕ぐれ仲の町

 

 三夕とは、西行の歌う「しぎ立つ沢の秋の夕ぐれ」と定家の描く「浦の苫屋の秋の夕ぐれ」と寂蓮の偲ぶ「槙立つ山の秋の夕ぐれ」のことを指し、遊里・仲の町の夕暮は、それに劣らぬ風情であると、遊ぶ男たちの心情を重ね合わせたものだ。

 出岡絢巳の花街をモチーフにした短編集が近く出るので、また私も花街論を展開せざるを得ないわけ。所詮、人に嫌われることをして見ない創作者は、唯のお人好しに過ぎない。

 

・二度と行く所ではないと三度行き

・うそつかぬ傾城買うて淋しがり

・吉原は鐘までうそをつくところ

 

 傾城とは商売女。うそをつくのが商売の元だが、それを知りつつ通う男共のバカを詠んだもの。赤福などの偽装問題でも、人はすぐ忘れる。真実よりも、うその方が好きな人は沢山いる。

 

 芸術は、ここんところが難しい。真実に行く道は、うその森の中にしか通っていないのだし、人に嫌われなければ一人前になれない。

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信

誌上互選より 高点句
前号開票『 惜しい 』
  9 惜敗と書く地方紙があったかい 福井悦子
  8点  捨てるのが惜しいジャンボの組違い 福井悦子
  7 ひと言が多くて惜しい人といる 竹内そのみ
  賽銭を時々惜しいなと思う 岩田眞知子
      百点のテスト名前が抜けている 青砥たかこ
  八回で交替させたパーフェクト 中田たつお