目次2月号
巻頭言 「 私にとっての六
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・没句転生
特別室
・アラレの小部屋
・エッセイ
・前号印象吟散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン     
・お便り拝受
・編集後記

 


たかこ
整理  柳歩

柳歩
新家完司
たかこ

柳歩
清水信
橋倉久美子
石丸たか
柳歩


 
バックナンバー
20年 1月(169号)
19年12月(168号 )
19年11月(167号)
19年10月(166号)
19年 9月(165号)
19年 8月(164号)
19年 7月(163号)
19年 6月(162号)
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19年 4月(160号)
19年 3月(159号)
19年 2月(158号)
19年 1月(157号)

18年12月(156号)
18年11月(155号)

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18年 4月(148号)
18年 3月(147号
)
18年 2月(146号)
18年 1月(145号)









 

巻頭言

 

私にとっての「六」


 
偏見?かも知れないが、一から十までの数字のうちで一番おろそかにされやすいのが「六」ではないでしょうか。

この二月号で会長就任七年目突入となり、改めて六年間の重みを感じています。「五」や「七」のように切れもなく、まして川柳では下六などは嫌われ、どこにも「六」の出番はありません。

だけど、私にとっては六年を過ぎたということに、大きな意義があるのです。前会長の美津子さんは、竜子さんという強力な補佐の元七年間頑張られました。諸事情で引き継いだ私は、漠然と「七年も頑張れるんだろうか」と思ったのです。

そして「七年頑張れたら十年は行ける」、そんな確信もしました。もちろん一人だったら到底無理でした。それだからこそ、六年経ったということに深い感慨があるのです。

 

「六」と聞いて皆さんはまず何が浮かびますか?ほう、川柳作家はやはり「六大家」ですか?「ろくでなし」は「六」ではないですよ。「六法全書」「六腑」くらいでしょうか。「第六感」は働くほうですか? 縁起の悪いところでは「六道銭」三途の川を渡るためのお金(六文)だそうです。今の価格にしたらいくら位でしょうか。難読に「六大」は(あの)「六合」(くに)とありました。ちんぷんかんぷんですよね。

 

そうそう、忘れてはいけません。「六月」は特別な月、今年は第六回目の市民大会。ここまで張り詰めてやってきましたが、やはり気を抜くことはできません。

 

今年は第五日曜日、お待ちしていますね。
 

                                                                                                                                                   たかこ

すずか路より
あっちの親こっちの親も老いてくる 橋倉久美子
カサコソと今年も生きる音を出す 山口龍一
若づくりしてるが匂うサロンパス 山本 宏
のど飴を舐めて呼名を待っている 鍋島香雪
病院の外の散歩は許可がいる 上田徳三
会いたいと言えずに元気かとハガキ 山本鈴花
靴下の穴にご苦労さんと言う 沢越建志
泥棒に留守を告げてる留守電話 鈴木章照
白髪がこんなに増えてきた鏡 木村彦二
下々は気楽気ままに結ぶ糸 秋野信子
打ち上げたままの花火を咲かせたい 青砥英規
卓球の二時間だけで九千歩 鶴田美恵子
今年こその意気がマウスに通じない  堤 伴久
丁寧な言葉で余計ずしり効く 寺前みつる
歳時記のここであがった野菜の値 水谷一舟
温泉かお寺参りのバスツアー 山本喜禄
曲がり角曲がれば誰もいない街 坂倉広美
うす型のテレビで上にモノ置けず 北田のりこ
大吉は人に見せずにいられない 高橋まゆみ
キッチンに貼って覚えたひなの歌 鈴木裕子
世代交代帰郷もしないお正月 竹内由起子
念仏を唱えたくなる熱いお茶 長谷川健一
重ね着をしているだけのウオームビズ 小嶋征次
神業をスロービデオが逃さない 加藤吉一
黒豆煮やはり今年も売れ残る     安田聡子
年賀状一枚妻に怪しまれ 水野 二
今年早や年賀はがきのうそ始め 上田良夫
感動のテレビ正座をして見てる 瓜生晴男
公園のテントに星は降って来ぬ 吉崎柳歩
傷つけたことなぞ爪は気づかない 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

 
 168号から                                    新家 完司

・ゴミ出しの日があり無事な日が過ぎる 堤  伴久

 生きているからゴミが出る。無事であるからゴミの日にはゴミを出すことができる。至極当然のことではあるが、病気になればこの「当然」は崩れてしまう。

 

・非常勤運転手です妻の        寺前みつる 

 要請があったときだけ運転する「非常勤」。時給ゼロではあるが、気楽なので気に入っている。しかし、予約を受けた日は酒が飲めないのが少し残念。

 

・隠し場所あっても隠す金がない    山本  宏

 仏壇の奥、冷蔵庫の冷凍庫の中、天井裏、下駄箱の裏、等など、小さな家でも一億円くらいならいくらでも隠すことはできる。肝心の裏金そのものが無い。

 

・誕生日なのに普通の晩ご飯      鍋島 香雪

 子供が幼かったころ、子供の誕生日には趣向をこらしてご馳走を作ったが、誕生日が嬉しくない大人だけだとやる気も湧いてこない。まあ、「普通の晩ご飯」を元気でおいしく食べることができるのが幸せ。  

 

・高級な素材をわやにした夫      山本 鈴花

「どや、うまいやろ?」と得意げに鼻を蠢かすが、明らかに失敗作。男の料理は高くつくが、パチンコにはまり込むよりはましだと我慢してあげましょう。

 

・日記帳だけを机の上に置く      木村 彦二

 机の上には、持ち主の性格と暮らしぶりが表れる。あれもこれもと欲深く抱え込んだ人の机は乱雑で、頭の中も乱雑。「シンプル・イズ・ベスト」である。

 

・自転車かごゴボウとネギの角二本   北田のりこ

 午後の街角の情景。「みんな、邪魔だ!どけどけ!」元気良くマイ・チャリンコをぶっ飛ばす作者。ゴボウとネギのツノを先頭に。颯爽と自宅までの凱旋だ。

 

・網戸みな洗ってからの茶がうまい   鈴木 裕子

 ようやく決心してやっつけた網戸の掃除。気掛かりだったことを片付けた後の茶は格別。こころの豊かな人は、些事から深い満足感を得ることができる。

 

・先頭は母さんらしい渡り鳥      長谷川健一

「先頭は父さんだろ」と反論したいが、昨今のウーマンパワーを見ると、「やっぱり母さんか」と納得。

 

                                         (川柳塔社同人・川柳展望社会員・鳥取県在住

 

1月26日(土)例会より
宿題「 重い 」 青砥たかこ選と評
  持ってると重いお腹に入れましょう 北田のりこ
  短くて重い言葉が添えてある 吉崎柳歩
 止 荷の重さ知っているから挙がらぬ手 加藤吉一
 軸 赤福の罪の重さをいましめに 青砥たかこ
宿題「 焦る 」 水谷一舟選
  お手付きをまたしてしまうかるた取り 竹内由起子
  長い列男子トイレに止むを得ず 北田のりこ
 止 ドッキリカメラでないとわかってから焦る 橋倉久美子
宿題「 焦る 」 吉崎柳歩選
  ボールまで焦り始めるロスタイム 橋倉久美子
  鍋がふく子が泣く電話鳴っている 北田のりこ
 止 ぐい呑みを一気にあけている焦り 水谷一舟
間に合わぬ時間となって焦らない 吉崎柳歩
折句「 ま・う・す 」 互選高点句
9点 またですかうちの猫です済みません 山本喜禄
7点 待ちかねたうどんが腹へ滑り子込む 堤 伴久
  参ったなうんと僕より筋がいい 吉崎柳歩
6点 マスコミが裏の世界をすっぱぬく 坂倉広美
  真ん前にうるさい奴が座りこむ 吉崎柳歩
特別室

のらりくらり

  

 私は何でも読む。週刊誌だって結構たくさん見ている。玉石混交の情報過多の時代、俗悪週刊誌なんかに時間をとられるなんてバカげているという人もいるけれども活字の匂いのするところ、私は灯に飛びこむ虫さながらである。自然に読んでいる。

『週刊文春』新春特大号では、「川柳のらりくらり」の特別興業をしている。柳家喬太郎(この欄の宗匠)と伊藤理佐(漫画家)と林家二楽(紙切り芸人)の三人による投稿欄一年の総括である。

 柳家は一九六三年生まれ、新作古典双方をこなす落語家。伊藤理佐は一九六九年生まれ、「やっちまったよ一戸建て」「チューネン娘」が代表作。二度目の夫は吉田戦車。林家は一九六七年生まれ、ということで、四十代の芸能人による川柳談義。

 

・お土産を届けた家へ詫びに行き

 

 これは食品偽装にかかわっての作。赤福、白い恋人などがヤリ玉に上っている。然し日本民族は悪に甘いので、私の近辺の人の殆んどが「赤福可哀そうね」と言っていて、おかげ伊勢参宮の客が落ちるわで、罰した方が悪いと言いつのる有り様。

 

・女房との愛にもあった賞味期限

・ハンバーグ表が牛で中が豚

 

 これらも食品偽装にからめた作。鋭くもなし、抒情性もないが仕方ないか。

 文学は印刷された場所で、高低が出るのは当然。しかし三重県人としても、赤福はダメですよ。

 

・済みません申し訳ない遺憾です

 

 企業家や政治家、官僚はすっかり謝り上手になったけれども、本気でないのか、その姿勢から分かる。つまり悪に甘い体質が、そういう姿勢に出ているのだ。

 

・給食を無銭飲食させる親

・国産の横綱見たい国技です

・この辺はポストがないので産めません

 

 何れも周知の「困った事情」をテーマにしている。一年間の応募作に見る秀句の披露だが、素人っぽさがウリなんだろうと思う。

 もちろん、ずっとうまいが、本誌からも拾う。

 

・ゴルフ漬け接待漬けもまた苦行          吉崎柳歩

 

・軍事費はたっぷりとある甘い蜜          鈴木章照

 

                                                                                                                     (文芸評論家)清水信

誌上互選より 高点句
前号開票『 頼 る 』
  9 頼られてから兄らしくなってくる 吉崎柳歩
  8点  レシピなど頼らぬ母の匙加減 高木みち子
  二の腕にあふれる妻の頼りがい 橋倉久美子
  7 バーゲンのチラシに頼る暮らし向き 鍋島香雪
  6 逝くまでは頼り続ける親の脛 山本喜禄
      妻なしで生きては行けぬ定年後 瓜生晴男
      口惜しいがやっぱり辞書に頼る薔薇 鈴木裕子
      かあさんに頼るなんとかして呉れる 寺前みつる
  年金を補う妻の時間給 山本 宏