青砥たかこ 選(入選39句)
詰め込んだ夢の袋の底がぬけ
田村ひろ子
落ちるなら底なし沼と決めている
北原おさむ
底なしの箱に詰めてる人の欲
沢田正司
小粒でも世界に負けぬ底力
圦山 繁
すり鉢の底から妻が出てこない
西村みなみ
鍋底に四半世紀がこびりつく
毛利由美
どん底で風向き変えた春の風
真田義子
胃の底で昨夜の酒が騒いでる
端流
香水の瓶底に未練がへばりつく
芦田敬子
好きも嫌いもみんな煮詰めた鍋の底
高浜広川
底辺は気楽でいいよ上がるだけ
小林祥司
* 宮仕え終えても底は見せぬ癖
星野睦悟朗
一日が剥がれて溜まる風呂の底
廣田千恵子
三角の底に消え入る民の声
青砥英規
* どん底というがまだまだ出る駄洒落
上嶋幸雀
底の底見せてしまってから気楽
加藤峰子
底辺はブレぬ高さがブレるだけ
松尾冬彦
探り合う国のためにと腹の底
井深靖久
足がつく底と分かって見栄を張る
十六夜
逆さ向け最後は振って使い切る
岡内知香
つま先の気儘に耐える靴の底
佐藤千四
* でっかい夢で底が破れてしまったわ
東川和子
胸底を見たくて酒の仕度する
ノン歩こうル
靴底にこれからのこと聴いてみる
三好光明
* 幸せの底が突然抜け落ちる
早川トミジ
こっそりと本音を詰める二重底
橋倉久美子
底辺でぼくが支えるピラミッド
濱山哲也
上げ底の正体 言わんこっちゃない
ちゃくし
暖房も効かぬ底冷えする言葉
汐海 岬
* 最初から底値と書いてあるセール
こみち
* 鉢底でとぐろを巻いた根の悲鳴
北田のりこ
厚底も今では孫を連れてくる
名賀久
水族館海底青くゴミがない
かきくけ子
底の方から引いたのにまた外れ
こみち
どん底で見えた景色は忘れない
中嶋安子
今が買い君は底値の光る星
角丸弘之
掘ってみよう底にもきっと空がある
門脇かずお
底辺を生きているのに下を見る
嵐山
* よく振ってください底にある旨味
北田のりこ
ドレッシングの瓶だけでなく、人間の心の底もよく見極めてほしい…そういう思いが読めました。
どん底は今いるところかも知れぬ 青砥たかこ