目次25年8月号
巻頭言 「 段取り」
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 大木俊秀さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記

 


柳歩
柳歩整理

柳歩
たかこ


柳歩

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木本朱夏さん

たかこ
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巻頭言

「段取り」

 「第十一回鈴鹿市民川柳大会」も盛会の内に無事終了した。十年一昔というが平成十五年の第一回大会を企画したときの苦労をしみじみと思い出す。

 青砥たかこ会長と、会長補佐の私の新体制が発足したのは、前年の二月であった。私が鈴鹿川柳会に入会して、まだ二年しか経っていなかった。たかこさんと私は、その頃けっこう他県の大会に参加はしていたが、自分たちが大会を主催するのは初めてであった。

 私は先ず、サラリーマン時代の経験を生かして大会運営の「特性要因図(魚の骨)」を作った。物事を成し遂げるのは、「段取り八分仕事二分」と言われる。つまり事前の準備の良し悪しが成否を決定するのである。
 特性要因図から洗い出した準備項目を細部まで明らかにし、時系列的に潰していった。会場は経費の安い江島(白子地区)のカルチャーセンターとした。ところが大きな誤算があった。事前投句の応募者が想定をはるかに超えていたのである。鈴鹿市への後援依頼書の控えには七十人とある。内心百人以上を目指していたのであるが事前投句数の結果は百四十人あったのである。
 懇親会参加者の想定も、二、三十人が七十人を超え、予約してあった会場では無理なので急遽折衝して変更した。それが「東樽鈴鹿店」である。本会場であるカルチャーセンターの句会場は、メジャーで計測して縮図を作り、机や椅子の配置を検討した。呼名、記名、合点の方法も、手作業からノートパソコンの活用に変更した。そのためのソフトも手作りで構築した。
 以後、第七回大会まで苦労したのは会場の変遷である。安くて広くて交通の便がよくて、昼食、懇親会場にも都合の良い会場は有り得ない。第八回から今回までの「東樽さん」は狭いけれども「願ったり叶ったり」なのである。

 節目となる今年の大会から、合点制を止め最優秀賞を二次選制としたが、基本的な段取りと細部に気を配るという姿勢は、当初から変わっていない。

                                          柳歩            

 

すずか路より
缶コーヒーの底に渦巻く嫉妬心 高柳閑雲
先生と呼び合っている偉い人 川喜多正道
ありがとういちいち言わぬのも夫婦     石崎金矢
厚化粧だんだんこわい顔になる 加藤峰子
海開きしたら行かなくなる浜辺 青砥英規
少しずつほぐす私の硬いとこ 尾アなお
外面はいばって家でゴマをする 岡ア美代子
子の気持ちわからぬ親ですみません 神野優子
新婚へ口は挟まぬ後部席 寺田香林
お土産の代わりに貰うお小遣い 山添幸子
陽が沈む今日も終わった万歩計 水谷一舟
あと少しいいきかせつつ登る山 加藤けいこ
みじん切りすれば虫喰い気にならず 小川のんの
夫に仕事頼むたんびに怪我をする 石谷ゆめこ
段取りが良すぎて時間持て余す 岩谷佳菜子
遊びたいので体調は崩せない 松本諭二
渡らぬと決めた橋でも振り返る 西垣こゆき
尿管にまだ繋がれているベッド 松岡ふみお
八月といえば十五日のラジオ 坂倉広美
会えるかもしれぬと思うから迷う 橋倉久美子
気合入れねば外へ出られぬ炎天下 北田のりこ
恥いっぱい抱いて浮世の平泳ぎ 河合恵美子
ザリガニがよっぽど住みやすい日本 落合文彦
女同士旅の話がすぐ煮える 鈴木裕子
踏み潰すことなど出来ぬ蝉の殻 長谷川健一
熱中症トップニュースにする紙面 水野 二
話して今日はゆっくり眠れそう 竹口みか子
雑草に負けて野菜が泣いている 瓜生晴男
惨敗の党首コメントさせられる 加藤吉一
水風呂に入る気はない暑くても 安田聡子
犬と会話出来る程度の英語力 芦田敬子
美しく咲けよと語り水をやる 圦山 繁
幕のない大人の恋の物語 鍋島香雪
朝顔のツルも迷っているらしい 小出順子
尻拭いせずに原発売り歩く 鈴木章照
おしゃべりが糸から針になっていく 青砥和子
使われて記念切手が役に立つ 山本 宏
暑くても我慢するべし原爆忌 吉崎柳歩
同じ日は一日もない蝉の声 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句18「大木俊秀さん」                                                                                   たかこ


もう恋はこりごりという舌の根の
父親を喪主にもってのほかのこと
修飾語はずすと何も無い祝辞
終点のひとつ手前で席が空き
みずからは汚れに汚れ換気扇

第三者だからほどける縺れ糸
花器もほめられて花たち安堵する
わが家への地図からはずすラブホテル
袖を通さぬを形見として受ける

腕もいいだろうが材料が違う
夫のほかにひとり愛して遠花火
貴婦人のバッグの底の痒みどめ
裏切ったおとこを廻す洗濯機

百歳の通夜だからとて通夜は通夜
遺書にまで乱筆ごめんくださいと
何と読みますか草かんむりに良
天気図を妻に重ねてみてみよう

妻に似る娘は仇かもしれぬ
点滴を連れてまでタバコを飲みに
この老人の持ち主はどなたかな
お茶がわりなどと嬉しい泡が出る
肝臓に会って一献ささげたい

7月27日(土)例会より
宿題「無理」 青砥たかこ 選と評
  無理な頼みきいてやったと得意顔 芦田敬子
  辞めさせるために与えているノルマ 吉崎柳歩
 止 途中下車田舎のバスは無理がきく 坂倉広美
 軸 無理をして振った尻尾がすり切れる 青砥たかこ
宿題「 皿 」(共選) 小川のんの 選
  魚好きだとわかる食べ終えた皿 北田のりこ
  高値でも河童はサラを譲れない 小出順子
 止 割れ残る小皿一枚捨てられず 西垣こゆき
 軸 大皿が出番待ってる夏祭り 小川のんの
宿題「 皿 」(共選)水谷一舟 選
  不揃いの皿は知ってる夫婦仲 芦田敬子
  回転寿司の皿にもちゃんとあるランク 吉崎柳歩
 止 まず皿を取って始まるバイキング 橋倉久美子
 軸 絵の具皿青が乾いていく夏だ 水谷一舟
席題「支える」(互選)
9点 かろうじて部分入れ歯を支える歯 吉崎柳歩
  支持者ではないが握手ぐらいはする 北田のりこ
  支えられないと不安になるはしご 橋倉久美子
6点 支えてた筈が今では扶養欄 長谷川健一
  居眠りの顎が腕からすべり落ち 西垣こゆき
  半額に支えられてる晩御飯 小出順子
  体重を支え危ういピンヒール 北田のりこ
  一人前になる頃朽ちてくる添え木 北田のりこ
 
特別室

 『だから素顔で』考                                     清水 信 

 ワックスをかけてピカピカに光らせたリンゴが上等だとは、冷静に考えれば、誰しも思わないであろうが、世の御婦人方の大部分はスーパーでは、表面の美しいリンゴを買いたがる。虫食いの葉っぱより、農薬まみれの美しい葉っぱの方が良く売れる。
 つまり表面がキレイなものが良いと考えている。それは日本人の後戻り出来ない深刻な病気だと、藤田紘一郎は忠告しているのだ。以上、前号の続きになるが、それを文学論に結び付けて不都合ということもない。健康にいいのは、果して何なのかを考え直してみる必要があろう。

・落書きの誤字脱字って情けない
・拍手したのにお話がまだ続く
・脳みそが徐々にこぼれていく気配

 これらはニガイ真実で、脳ミソが崩れていく様子を傍観している。「お話」のおの字に、皮肉な距離が感じられる。

・反骨と呼ばれてみたいあまのじゃく
・まだ持っている旧姓の氏名印
・きょうだいにだんだん近くなる夫婦

 などに見る距離感は乾いてはいるが、冷たくはない。優しさが出ている。「あいまいな立場子どものいない嫁」という作も温い目が支えになっている。

・熱い人ばかりで居心地が悪い

 わたしは有名人ぎらいだから、自己愛で熱い連中からも距離を置いているが、川柳の世界が軟弱紳士と節度ある有閑夫人たちで占められると、それも困るという気がする。川柳のみならず、文学は常に少し意地悪い性格から、栄養を得ているものだからである。双方のいやらしい面からも目をそらさず、その中間で立脚していなければならぬだろう。

・これ以上削ると何も残らない

 脂や肉を削っても、骨は残るという覚悟で一句一句作らなければならない。「万が一の文学」という。一万作に一つしか名作なんぞ無いという事実を指す。

・神様が降りてくるのを待っている

 創作の秘密は、そんなところにある。ミセス・橋倉の良いところは、神様に愛されそうな顔をしていることである。

                                                                           (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 影 』  応募80句
 1 4  電柱の影も恋しい炎天下 鈴木章照
 10  親子連れ小さい影がよく撥ねる 吉崎柳歩
  9  無邪気さも影をひそめた反抗期 福井悦子
   老人の影だと動いたら分かる 吉崎柳歩
   面影を探しあぐねるクラス会 加藤けいこ
   8  影にさえ色の付きそな厚化粧 圦山 繁
      随分と猫背になった影法師 岩谷佳菜子
   7 点   懐が寒いと影も薄くなる 山本 宏
   行く先も知らずに影がついてくる 橋倉久美子
   お疲れですね影がゆらゆらしてますよ 前田須美代
   大輪の影でひっそり咲いている 岩田眞知子