吉崎柳歩選(入選32句)
焦ってもウォッシュレットが止まらない 寺川弘一
大層な紹介うけてマイク前 銀次郎
* 直前に気付くご飯の炊き忘れ 照坊主
焦る母見れば親父も焦りだす 夏舟
焦っても焦らなくても増えるしわ
牧 新山
* 老いの手がATMに急かされる
ゆず大福
焦らずにテントを張って並ぶ列
鼓吟
渋滞の中でリムジンバス焦る
由美
焦りなし人生すでにロスタイム
とんちゃん
焦るほど足が動かぬ夢の中
きぃろっく
利尿剤効いて散歩も走り出す
佐藤彰宏
焦らないゴールはそこに見えている
阪本こみち
* 恋はもうできぬ年だと悟れない
柴田比呂志
焦るなとなだめる他人事だから
濱山哲也
* 本番で真っ白ボクの暗記力
松谷大気
忙しい島だと焦る渡り鳥
杉山太郎
* 内定の友を素直に祝えない
竹中正幸
タケノコが五十センチになり焦る
門脇かずお
晩学へ時計と余命せめぎ合う
沢田正司
* 焦るほどしくじる恋と針の穴 汐海 岬
もう少し焦ってほしい人となり
山田みのり
焦るなと一休さんは言っている
岡内知香
好きな人いるから焦らない三十路
高杉千歩
焦ってはいけない蜘蛛の綱渡り
小川佳恵
* 疑問符に答えがあって焦り出す
大木雅彦
* 焦燥が続いているらしい眉間
たむらあきこ
焦っても答えは同じ砂時計
真田義子
焦らずに円周率を追い駆ける
寺川弘一
焦るほど財布の小銭取り出せず
竹林
見られてることが分かると焦る亀
青砥たかこ
* 放つ矢が次々折れてゆく焦り
大釜洋志
* 私の時代が消えていく焦り
まりえ
秀2と同じ結語の「焦り」、どちらを秀1にするか迷った。栄華を誇った「私の時代」と、大きく出たところが面白い。
* 焦ってはならぬラブレターの返事 吉崎柳歩