目次7月号
巻頭言 「 前代未聞」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・第7回鈴鹿市民川柳大会
・会場風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・インターネット句会
・お便り拝受
・各地の大会案内
・暑中広告
・編集後記

 


柳歩
整理  柳歩

吉崎柳歩
加藤峰子
 

清水信
橋倉久美子
たかこ


 

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21年 5月(187号)
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20年 5月(173号)
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巻頭言


 前代未聞

 第七回鈴鹿市民川柳大会は、県内外から百三十五名の方々の参加を得て、盛会裏に終わることができた。関係各位にも、深く御礼申し上げます。  

 会場は「ロワレ21鈴鹿」結婚式場である。ホテルで開催される川柳大会は珍しくないが、豪華さという点では、結婚式場の披露宴会場には、敵わないだろう。正に前代未聞の会場であった。
 いささか「怪我の功名」「やむを得ず」、という側面もあっただろうが、第一回の大会以来、鈴鹿では「前例のない」大会運営を試みて来た。

 第一回の大会では、弱小柳社の大会にもかかわらず、事前投句の応募者の多さに仰天、得点集計と披講の用に供するため、急遽ノートパソコンを導入した。私の手造りプログラミングだが、これも前代未聞の事だったと思う。
 入選句の句主の呼名も、普通、大会ではフルネームとするが、鈴鹿では、下の名前だけでも可とした。
 例会では、雅名(下の名前)だけで呼名するのが習慣であり、同名の人がある時だけ、当人にフルネームでの呼名を求めている。これは句箋には名前も番号も付されてないので、当然であるが、大会、特に鈴鹿の大会では、ノートパソコンの画面をみれば、句主の番号と名前が一目で分かる。フルネームでは呼名をし辛い名前もけっこう有りそうなので、句主の自由とした。

 今回の大会では、事前投句の選者を務めた橋倉久美子が、そのあと脇取りの席に着いた。弱小柳社ゆえ、スタッフには一人二役三役をお願いしているが、事前投句の選者が呼名係を兼ねる、というのも前代未聞のことだろう。

 川柳大会の形式など、良き伝統は守って行かなければならないと心してしる。大会での「席題」などは、できるだけ残していくべきだろう。
 また、一部の大会で見られる、選者による「番号の読み上げ」など、みっともないことは止めたいものだ。

 鈴鹿は今後とも、怯まず「前代未聞」にチャレンジすることになるだろう。

                                                                                                                               柳歩

 

すずか路より
住み馴れた地球に油断して転ぶ 山本 宏
鍵のない引き出にある遺言書 山本喜禄
良いことは思い出さない熱帯夜 萩原典呼
金婚式までは生きてねお父さん 鍋島香雪
不断桜が緊張を解く紙芝居 山本鈴花
仏壇を開けると背筋シャンとする 沢越建志
嘘つけぬアナタの声が裏がえる くのめぐみ
幼かったあの日へ飛ばす竹とんぼ 高柳閑雲
悪口が聞こえたようにネコ逃げる 鈴木章照
親友の一度のウソが仲冷ます 加藤峰子
延命は望んでないと子に伝え 石川きよ子
黒田節ぜんぶ歌って惚け封じ 鶴田美恵子
IH親の老いには味方です 秋野信子
風鈴と工事の音で起こされる 青砥英規
貧乏の世襲を誰も疑わぬ 堤 伴久
七月の花火のように友が逝く 寺前みつる
指鉄砲父の背中に隙がない 水谷一舟
剪定の疲れ三時を待ちわびる 西垣こゆき
五度消してまた元の句を書いている 松岡ふみお
よく研いだ赤鉛筆が待ちかまえ 坂倉広美
重なれば仕事に負ける趣味の会 橋倉久美子
自由形とはクロールと限らない 北田のりこ
お帰りの声はとびきりはずませる 高橋まゆみ
電卓をさがす計算できぬ脳 落合文彦
墓参り日課と言えば驚かれ 鈴木裕子
いい人に恵まれている近所の和 浅井美津子
外れてもまず直球を投げてみる 加藤吉一
今日は晴れ自分の意志で雨は降る 長谷川健一
いい感じケチと言わずにエコと言う 竹内由起子
父の日の前に注文つけておく 水野 二
サクランボ夫の皿に手を伸ばす 安田聡子
対座して妻の小言を聞かされる 瓜生晴男
しがらみに縛られている馬の脚 吉崎柳歩
眠れない日は何日も続かない 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

    
  185号から                                       加藤峰子

四分音符だけの話を聞き飽きる      堤 伴久
 
せっかく内容の良い講演でも、四分音符ばかりでは眠る人(私)あり、もったいないことです。人に伝える職業の人は話術も勉強しなくては。

鈴鹿弁丸出し姉と木曾の旅       山本 鈴花
 
以前、札幌から小樽への列車の中で「岐阜からですか、懐かしい言葉が聞けうれしいです」と、岐阜出身の方に声をかけられ、友達と「私たち。標準語なのに」と、ヒソヒソ。

香雪の描く人形は香雪似        鍋島 香雪
 
美人の人形が目に浮かびます。私似の娘が描くと人形は漫画的です。

冷やかに見つめる妻に他人の目     山本  宏
 
新婚時代はそうではなかったのに、いつ頃から、こうなるのでしょうか?

嗅覚で賞味期限はきめている      鈴木 章照
 
私もそうです。昔は賞味期限などなかったし、自己責任で食べれば良いのです。管理社会の弊害で責任転嫁が起こります。

冗談に本音も少し入れておく      石川きよ子
 
解ってくれる人がいるとうれしいですね。

泣くはずのない子が泣いて涙呼ぶ    落合 文彦
 
泣くことのない子が泣くなんて、それだけで迫力があり、もらい泣きしてしまいそう。

手抜きした料理を客に褒められる    浅井美津子
 
市販のダシの素をバサッと入れて急いで作ったみそ汁を「おいしい!ダシが効いてる」
(そりゃ一流企業の研究のたまものだもの)

テレビで観た方がよかった投手戦    加藤 吉一
 
わざわざ球場まで行って一対0で、勝てばまだしも負けた時などどっと疲れます。

誕生日くるたび一つ歳減らす      安田 聡子
 
私も還暦から一つずつ減らしています。そのうち娘が年上になったりして…。

魂胆があるのか妻が機嫌よい      瓜生 晴男
 
ピンポーン。お願いをする前ぐらいは機嫌よくしないと。

主催者は槍が降っても休めない     吉崎 柳歩
 
このご苦労を解る人ばかりだと良いのですが。

                                  (鈴鹿川柳会誌友 岐阜市在住)

6月28日(日)大会より
事前投句「 秘密 」 橋倉久美子 選と評
  生涯の秘密を背負う蝸牛 齋藤保子
  出生の秘密桃から生まれない 橋本征一路
 秀 大福が包む思いもせぬ秘密 大野たけお
 軸 玉手箱の中で煙になる秘密 橋倉久美子
席題「 人気 」 高橋 忠 選
  石投げて人気の度合い確かめる 高木みち子
  広告塔に頼る政治の浅はかさ 伊藤忠昭
 秀 カリスマの一言株価まで動く 南 さと奈
スーツ着た案山子に人気浚われる 高橋 忠
宿題「 席 」 木野由紀子 選
  イケメンの前では席をはずせない 中村まゆ
  S席で高橋真梨子聴く至福 鍋島香雪
 秀 男なら火薬の匂いする座席 田中豊泉
祖父の席だった囲炉裏の切り株よ 木野由紀子
宿題「 たたむ 」 田中豊泉 選
  店たたむ勇気はあるが金がない 丹川 修
  車椅子たたむ花野の真ん中で 池上道子
 秀 過去たたむ未来の風に触れたくて 庄村ますみ
地図たたむいい旅だったなあ妻よ 田中豊泉
宿題「 コピー 」 鈴木順子 選
  わたくしの影がコピーを止すという 中川洋子
  人間コピー父の偉さを世に残す 水谷一舟
 秀 コピーしておこう結び目解けぬ間に 田中豊泉
愛憎や別れた人に生き写し 鈴木順子
宿題「 稼ぐ 」 伊勢星人 選
  稼ぐ程妻の洋服増えていく 高橋まゆみ
  告白の刻を稼いでいるホタル 中川洋子
 秀 町工場一円五円でも誇り 成瀬雅子
男ほど苦労をせずに消せげそう 伊勢星人
宿題「 じれったいこと 」〜読み込み不可〜 植野美津江 選
  待てど暮らせど僕には咲かぬ福寿草 須場秋寿
  渋滞を避けて耕耘機に出合う 橋本征一路
 秀 ああでもないこうでもないと黄金虫 杉本節子
男でしょ大きな声で言いなはれ 植野美津江
宿題「 自由吟 」 新家完司 選
  肝臓のあたりで鐘が鳴っている 阪本高士
  母の手は軍手のようになっていた 前田賀信
 秀 人間について研究するカラス 三村 舞
ライバルの顔だ空き缶踏み潰す 新家完司
特別室

鶴彬続三章(2)                                      清水信 

 映画「鶴彬・こころの軌跡」は、独立映画である。七月ごろ一般公開されるが、上映手続きに関しては、岐阜教育映画センターの上映事務局と連絡をとらなければならない。

 製作費は初め1〇〇〇万円という申し出だったが、寄付金を集めたりして二〇〇〇万円にこぎつける話を神山監督が書いている。
 原作と帯に唄った小説も、いま本屋に並んでいるが、シナリオには、脚本は加藤伸代と神山征二郎の連名になっている。監督は神山、助監督は関本真理子、監督補佐は神山兼三、撮影は伊藤嘉宏、四方康彦、音楽は和田薫、ナレーターが日色ともゑ。

 配役は、鶴彬が池上リョヲマ、井上信子が樫山文枝、井上剣花坊が高橋長英である。他に鶴の母スズに河野しずか、伯父喜太郎に角谷栄次など。
 つまり、井上剣花坊夫妻との友情をベースに描いているのだ。

 石川県河北町高松(現かほく市)で生まれたが、子供のなかった同じ町内の伯父の養子となった。小学校の成績は一番。しかし進学はかなわず、織物工場で働く。石川啄木に心酔し、短歌、俳句を書きはじめるが、岡田澄水にすすめられて川柳を作り出す。

 静かな夜
 口笛の消え去る
 淋しさ

 初期の句。そしてやがて北国新聞柳壇の常連となる。福村無一路に教えられて、革新作家の名を知っていく。金沢の森田森の家、広島の古谷夢村、小樽の田中五呂八、大阪の木村半文銭、東京の井上剣花坊、大阪の川上日車。
 さらに全国誌『影像』『氷原』を知り、ついに井上と会う。

 井上剣花坊(1870―1934)
 井上信子 (1869ー1958)

「弱き者を見すてるな」
 唯それだけの主張だったが、それが国策に反するであろうか。
 取調べ官に、彼は言う。
「プロレタリア川柳を研究する会を作ってるだけで、国体変革も私有財産否認も目的とはしていません」

・高く積む資本に迫る蟻となれ
・都会から帰る女工と見れば病む
・重税に追われ漁村に魚つきる
・干鰯の如く民衆眼をぬかれ
・退けば飢ゆるばかりなり前へ出る

 鶴彬のことを書いてきたが、鶴彬の生涯が映画化されることになったので、その続篇を書きたい。
 

                                                                 (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 ゆっくり 』
 1 4 ゆっくりと聞けばなんでもない話 鈴木裕子
 1 0 太極拳ゆっくり空気掻きまぜる 山本 宏
   9 スロービデオ見て納得の土俵際 山本 宏
   8 ゆっくりと溶ける小さなわだかまり 山本喜禄
    ゆっくりと歩くと落ちているヒント 吉崎柳歩