目次25年12月号
巻頭言 「 鬼平犯科帳 」
すずか路
・小休止
・柳論自論
・没句転生
川柳・人と句「 天根夢草さん」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記
 

柳歩
柳歩整理

柳歩
柳歩
たかこ


清水 信さん
久美子
鈴木順子さん


たかこ



 
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巻頭言

「鬼平犯科帳」

 最近、昼のテレビ時代劇『鬼平犯科帳』に嵌っている。原作は池波正太郎の同名の時代小説で、主演は二代目中村吉右衛門である。

 鬼平とは、徳川幕府の特別警察組織、「火付け盗賊改め方」の長官、すなわち「お頭」の長谷川平蔵、人呼んで「鬼の平蔵」のことである。まず、この「火付け盗賊改め方」の訓読み、が良い。「盗賊」は「盗人」のことで、漢語を取り入れた頃からすでに日本語に同化している。現代なら「放火強盗殺人捜査監督課」といったところか。
 火付け盗賊改め方には特別の権限が与えられており、長官の判断で犯人をその場で切り捨てたり、温情を掛けてやることも出来る。弱きを助け強きを挫く鬼平だからいいが、衆議院で秘密保護法を通過させた安倍首相の取り巻きのような人物が長官だったらワヤである。冤罪や賄賂が蔓延するだろう。
 それはともかく、長官を「お頭」とか「元締め」、密偵を「下働き」、推理を「勘働き」などと言うのも楽しい。 時代考証も確か(らしい)で、江戸の風情や雰囲気にも浸れる。雨の降る場面が多い。特に驟雨が江戸情緒を引き立てる。エンディングで流される四季の情景と、ジプシーキングスの「インスピレーション」のコラボレーションも、驚くほど成功している。  

 日本に漢字が入ってきたのは五、六世紀頃と言われているが、その頃はまだ日本には文字がなかった。しかし、ただ漢字を取り入れたのではなく、日本語の意味に漢語を当てはめて読む、つまり「訓読み」も併用してきた。漢字から平仮名を創作し活用した。「漢字仮名交じり文」は長い時代をかけて日本語として熟成した。ところが明治維新以後、西洋語を翻訳するに当たって、その殆どを和語(訓)でなく漢語(和製)で対応したことは、機能的で便利ではあったが、そのぶん日本語本来の美しさ、味わいなどを大きく損なう原因にもなったと思われる。  

   
鬼平がまた講釈をする料理     柳歩
 
                                         柳歩            

 

すずか路より
欲しい物親に言えずに孫が来る 松岡ふみお
待っているだろうと思うお人好し 坂倉広美
おやまあと思う銀婚やって来る 橋倉久美子
抜き打ちでない監査など意味はない 北田のりこ
県庁におもてなし課があるという 河合恵美子
簡単に考えていた八百字 落合文彦
電子音聞きとるための耳掃除 鈴木裕子
からたちが散って昭和が遠くなる 長谷川健一
OB会同じ顔ぶれ同じ席 水野 二
ポケットで君に会うまで温める 竹口みか子
秋冷の心に染みる鍋料理 瓜生晴男
手を抜くと行儀の悪いゼラニウム 加藤吉一
夫がいる手抜きをしない夕支度 安田聡子
人気あるドラマにいつも居るいけず 芦田敬子
温泉に浸かり過ごした文化の日 圦山 繁
居心地のよくない椅子はすぐに去る 鍋島香雪
三味線のバチにも似たりいちょうの葉 小出順子
毛虫かと見まごうほどの付けまつげ 鈴木章照
読み聞かせアンパンマンが泣いている 青砥和子
そんなことしてたんですか食偽装 山本 宏
たっぷりと蜜が塗られた応接間 高柳閑雲
不都合なことは秘密に指定する 川喜多正道
雲ひとつ無いと写真がつまらない     石崎金矢
剪定をしたら寂しくなってきた 柴田比呂志
二次会が楽しみで行く町会議 加藤峰子
キンピラも文化遺産かパック詰め 佐藤彰宏
大根が担う刺身の佇まい 西野恵子
生乾きのままとぼとぼと帰路に着く 青砥英規
目に物を言われ押し切られてしまう 尾アなお
ひとひらのもみじが膳をまとめあげ 岡ア美代子
暗闇でゆうこの肌着抱きしめる 神野優子
大人にはなれぬが老いがやって来た 寺田香林
戻れない日へ子守柿熟れて行く 外浦恵真子(えみこ)
秘め事も眠ったままの古手帳 瀬田明子
人文字へ風と闘う救助ヘリ 奥村吉風
心貧し母を話の輪に入れぬ 水谷一舟
まな板に墨が溢れるイカの乱 加藤けいこ
ブランコに乗って青空手に入れる 小川のんの
診察券で膨らんでいる財布 石谷ゆめこ
ユニクロは国民服と呼んでいる 岩谷佳菜子
先見えぬトンネルだけどいつか出る 西垣こゆき
後片付けまではなさらぬご老公 吉崎柳歩
信号を待つ間もやれるストレッチ 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句22「天根夢草さん」                                                                                    たかこ


冷凍のしじみもちゃんと開ける口
担任の教師を選べない生徒
ざぶとんがないと落ち着かない木魚
ブランコに乗って地球をやや離れ
遊びたいアルファベットのビスケット

トランプの五十三枚同じ裏
キリンアサヒサッポロビールみんな好き
タクシーの料金雨の日も同じ
綿棒がないときとてもかゆい耳

論点が変わってもいい口喧嘩
いぬふぐりもうあきらめている名前
七十一歳新しい歯は生えてこず
新しい水がどんどん出る便所

手紙書くどんどんわいてくることば
いつか死ぬ予感全くしない春
郵便局でときどき免許証を出す
いじわるが二人くらいはいる近所

日本国ときちんと書いてある硬貨
自転車を盗られ間抜けな顔になり
死なないでいたら満期のくる保険
足湯する建設的でない時間
凹と凸のぴったり嵌まる凹と凸
 

11月23日(土)例会より
宿題「ずれる」 青砥たかこ 選と評
  開演をずらして客の入りを待つ 水野 二
  風呂のふたずらし浴室温める 小川のんの
 止 中心がずれるとコマは廻らない 松岡ふみお
 軸 少しずつずれて脱線する線路 青砥たかこ
宿題「バス」(共選) 加藤峰子 選
  お土産屋組まれていますバスツアー 圦山  繁
  いつかくる空中バスで月旅行 石谷ゆめこ
 止 お迎えのバスは必ずやってくる 吉崎柳歩
 軸 バスの旅もうしたくない夫とは 加藤峰子
宿題「バス」(共選) 長谷川健一 選
  古里でバス待ち切れず歩き出す 竹口みか子
  顔だけでパートと分かるバスガイド 加藤吉一
 止 朝になればあなたに逢える夜行バス 小川のんの
 軸 バスガイド修学旅行恋の人 長谷川健一
席題「働く」(互選)
12点 足よりも達者な口で仕事する 芦田敬子
 9点 宇宙まで行って働く人もいる 青砥たかこ
 6点 働いたのは同じと妻が譲らない 加藤吉一
  立っているだけで働いてるポスト 青砥たかこ
  尻尾振り働く真似のうまい奴 圦山 繁
 5点 社長だけが夢を満たしている仕事 加藤吉一
 
特別室

 狼の群れ                                         清水 信

 川柳への傾斜、というラインで、近刊の短詩型文学誌の感想を書く。

『狼(ろう)』39号は、能美市に発行所がある俳句の同人雑誌である。創刊より13年を経過しての39号であって、年3回刊ということになる。福井、高岡、金沢、小松、近江八幡などに住む9人の同人から成る。
 連載の「秀句鑑賞」欄では、『川柳カード』という印刷物の批評を載せているので、川柳への関心が深いのだろう。次の二句が、そうである。

                石部明
・音楽学校までついてくる水鰈
・血液は鋭く研いだ鳥の声

 それよりも、次の二句が面白い。
               中村克子
・これからも軍手と呼ばれ春耕す
・炎天下たましいだましだまし歩く

 更に同人たちの近作を引く。
               阿木よう子
・母さんに逢いたくなって菊を買う
・蟇ねむる今日は手足がよくうごく
・木に残る一枚の葉が故里です

       油木麻容子
・湯豆腐にわたしの知らぬ貌浮かべ
・おでん煮る土踏まずのような人
・花冷や言葉がひとつ足りません

 みな夫々「いい線」を行っているように思う。特集は「名画を詠む」で、夫々好みの名画を題材にして、作品を書いている。上村松園、東山魁夷、北斎などに交って、ホセ・グワダルーベ・ポサダの「死者の日の骸骨の自転車」という骸骨の絵を選んでいる人がいて、救われる思いがする。

       岡村知昭
・がいこつにおんなはいない陽は昇り
・自転車を踏む骸骨を踏む夕日

 骸骨を名画として描くことも、その画をまた詠むことも愉快としか、言いようがあるまい。

 同人相互評では、「ほんとうは泳げないのですかたつむり」(中内亮玄)について、「ひらがな表記が好もしい。やんわりと心に沁み、程良い響きだ」と評しているが(関戸美智子)一寸疑問。しかし「ギモンを残しつつ、余韻にひっぱられたのだから。中八は気にならぬ」と書かれると、そんなものかなと思う。

 句会は常に、一句を採った者は弁護側に、他は検事役に回っての争論の由。

▼能美市寺井町ほ・47 大沢輝一

                                                                           (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 悪 い 』  応募94句
 1 5  並べると出来の悪さが良く分かる 加藤吉一
 1 3  悪いねと言いつつ財布ひっこめる 橋倉久美子
   9  居心地が悪いサービスよすぎても 北田のりこ
      悪いとは思っていないから困る 吉崎柳歩
   7    悪いとは思うが長生きもしたい 岩田眞知子
   6    お辞儀するだけでは許せない悪事 鍋島香雪
        悪い事少ししました閻魔さま 西野恵子
   悪性でないよう祈る内視鏡 鈴木裕子
      悪い気はしないお世辞と判っても 鈴木裕子