目次7月号
巻頭言 「 ことば探し」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・大会
・会場風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・インターネット句会
・大会お便り拝受
・みんなのエッセイ・その他
・各地の大会案内
・暑中広告
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

伴久・柳歩
高瀬霜石


清水信
橋倉久美子
柳歩


 

バックナンバー
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22年 5月(197号)
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巻頭言


 「 ことば探し」
  

第八回大会も無事済んだ。参加してくださった皆様と、スタッフの努力のおかげだと思う。
「若い人が増えたね」「会場に工夫が見られた」など感想をいただくと嬉しい。
疲れ切った心には、労いのことばが染みる。人間を詠う、五七五の世界に、当たり前のことだが、「ことば」は欠かせない。

今年もたくさんの皆さんの「ことば」を頂いた。最初は「ことば遊び」でも、そのうち「ことば探し」となって、「ことば」に、苦しめられたり、「ことば」に癒されたりする、そんな川柳の世界にどっぷり浸かっている私たち。

 ひとつのことばでけんかして
 ひとつのことばでなかなおり
 ひとつのことばでおじぎして
 ひとつのことばでなかされた
 ひとつのことばはそれぞれに
 ひとつのこころをもっている

この「詩」はご覧になった方も多いと思うが、作者は、映画評論家でおなじみだった淀川長冶が「秋田のある僧侶に聞いた」として自分の著書に掲載していたらしい。また「良寛の言葉」という説もあるようだ。

 私がこの詩を知ったのは、川柳展望37号、時実新子さんの編集後記である。
 作句に行き詰まると、詩集を読んだりすることがある。川柳以上に「ことば」に敏感な詩の、この詩はさしずめ「楽屋落ち」のようなものだろうか。

 大会の入選作をワープロ打ちしていると、イカシたことば、生きたことば、活かされたことば、に出会い、時々手が止まる。
 耳で聞いたことばも目に留まると、違った印象がある。
 大会の醍醐味のひとつに、披講の一句一句に、笑いや頷きの波が起こること。これは、句主にとっても選者にもうれしいことであると思う。

 遠方より、また暑い最中、皆さん、本当にありがとうございました。

                                                                 たかこ

 

すずか路より
ラッキョウの皮むくように服を脱ぐ 西垣こゆき
株分けし親も枯らして子も枯らす 松岡ふみお
余韻という時間はあくびする時間 坂倉広美
反省はするけど後悔はしない 橋倉久美子
南天の葉でおしゃれするお赤飯 北田のりこ
お土産も予算の中に入れて旅 浅井美津子
お昼寝をすなかった分早く寝る 鈴木裕子
政変にも身軽な位置の評論家 加藤吉一
一株を育てる為に間引きする 長谷川健一
親切を沢山受けて老い自覚 竹内由起子
物価高花から野菜へとシフト 水野 二
君の笑顔で心のトゲが溶けてゆく 竹口みか子
梅雨半ば心の傷も癒えぬまま 瓜生晴男
夕食が済んだら眠くなってくる 安田聡子
気になった世界遺産を聞きかじる 野村志保子
点数を稼ぎたくって良い子ぶる 鍋島香雪
アリバイに合わせてくれるいい友だ 鈴木章照
反論はよそう聞く耳ついてない 沢越建志
無い袖を振っていい顔しています 山本 宏
過去は過去楽しい酒を流し込む 高柳閑雲
貰いものだけの野菜で暮らせそう 加藤峰子
夕焼けに疲れた心洗われる 青砥英規
そんなこともあるさぐらいを聞かされる 堤 伴久
燗冷まししない間にする選挙 山本喜禄
敵も味方も拍手私の逆上がり 水谷一舟
敗退の一球わたしにも覚え 加藤けいこ
抱き寄せてしぼんだ母を湯に入れる 廣瀬まさこ
川柳の大会だから気取らない 吉崎柳歩
人生に少しは欲しいロスタイム 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

    
  197号から                                      高瀬霜石

他人には元気に見えているらしい    橋倉久美子

 いつも明るくて元気な(元気に見える)久美子さんだって、落ち込むこともあるだろう。でも、貴女はもはや川柳界のスター。多分職場でも。貴女自身は気づいていなくても、貴女から元気を貰っている人は、きっと大勢いるはず。それを裏切ってはいけない。

  

60点絶好調と言っておく       高橋まゆみ
 
まゆみさんもエライ。僕は、元来出無精のインドア派。趣味は、映画と読書。なのに何故か、青森県の柳界では行動派のレッテルが貼られている。この度、推されて日本川柳協会の常任幹事というものになった。来年の全国大会が仙台で開催されるので、東北の声をもっとという意味もあってのことらしい。大変に光栄なことでもあるので、元気な振りをしている。

バスタオルとりあえず巻き書く一句   小川のんの
 
風呂場に、トイレに、メモ帳や鉛筆を置いている人、多いと思う。僕もその一人。僕ならば、順番変えて、
《とりあえずバスタオル巻き書く一句》かなあ。 

定年のない職業も閑古鳥        加藤けいこ
「すずか」を最初に手に取ったとき、一番ひかれたのが裏表紙であった。ゴメン。裏表紙に宣伝が載っている柳誌は多いが「すずか」ほど面白いのはない。いつ見ても《ひるまから風呂に入れる自由業》には脱帽。

名医だと聞けば安心する患者      加藤 吉一
 かっての弘前社の裏表紙には、ドクターが3人もいて豪華だった。僕の主治医の高橋岳水先生は、往診に行った先のおばあちゃんと話すだけで元気になってしまうという名医であった。「あった」と過去形で書いたのは、先生は体力の限界ということで、この6月末で閉院することを決意したからだ。名医は、決断もまた素早い。僕を含めた川柳社の面々と、先生のファンはため息ついているけれど…。

まがい物集めた頃が絶頂期       山本 喜禄
 僕もいろんなモノのコレクター。でも、還暦を境に控えることにした。人生の整理とまでは言わないが、気力が衰えたことは確か。コレクターは、好奇心の塊。体力・気力、そして勿論、財力も欠かせない。

政治家の顔が漫画になりにくい     山本  宏
「すずか路」5月号の中での、僕のベスト1.

                                (弘前川柳 社副主幹他・弘前市在住)
6月27日(日)大会より
事前投句「 顔 」 吉崎柳歩 選
  モナリザの妻に白状してしまう 岩田明子
  顔中が祭り太鼓になっている 杉森節子
 秀 こんな顔でしたと写真できてくる 小川加代
初恋の人をがっかりさせる顔 吉崎柳歩
席題「 本 」 阪本きりり 選
  マンションで象飼う本をいつも読む 日野 愿
  本の海何度も潜る溺れても 若山 衛
 秀 聖書読む花粉まみれを悔いている 木野由紀子
血も肉も聖書も踏んで人はゆく 阪本きりり
宿題「 なかなか 」 坂倉広美 選
  なかなかのものですはみだした黄色 阪本高士
  なかなかの女だ風が透き通る 戸田富士夫
 秀 顔萎えてなかなか取れぬ鬼女の面 中川洋子
たましいが堅くなかなか妥協せぬ 坂倉広美
宿題「 涼しい 」 廣田 梢 選
  人事課が涼しく人を間引いてく 宮村峰子
  エアコンの微風くらいの君が好き 水野奈江子
 秀 正論を涼しいとこに干しておく 大嶋都嗣子
被爆記を涼しい声が過去にせず 廣田 梢
宿題「 残念 」 武山 博 選
  残念な形で落ちた春の絵馬 杉森節子
  渡す人いないタスキがひた走る 橋倉久美子
 秀 死後叙勲きっと残念賞だろう 伊勢星人
深呼吸ひとつ無念を切り捨てる 武山 博
宿題「 飼う 」 日野 愿 選
  透明な首輪で男飼ってます 若山 衛
  飼い犬の寿命ほどほどだからよい 新海照弘
 秀 物騒な世だから男でも飼おう 山本 宏
戸障子をみんな外して象を飼う 日野 愿
宿題「 煩わしいこと(読み込み不可) 」 板野美子 選
  補聴器が勝手に耳元で喋る 中 博司
  悩みごとつづく氷柱になりました 木野由紀子
 秀 動物園に逃げます面倒な話 荻野浩子
友だち百人ライバルも百人 板野美子
宿題「 自由吟 」 橋本征一路 選
  オーバーに体重計が針を振る 小出順子
  生き残るために綺麗な水を飲む 相馬まゆみ
  幸福になるためにする歯の治療 天根夢草
  栓抜きが見当たらぬ日が休肝日 橋本征一路
特別室

紙類絶滅考(1)教育                                   清水信 

   

 今年は、電子書籍元年という。
 何だか、ユーウツである。

 グーテンベルク以来の大転換に出会うことを喜ぶべきかも知れないが、活字と紙に親しんできた生涯を思えば、胸のつぶれるような衝撃だ。
 グーテンベルク(一四六八年歿)は鋳型による活字の鋳造に成功し、プレス印刷機を考案し、現在まで五百余年も続いた印刷文化を築いた人である。
 極端に言えば、急速にペーパーレスの時代が来て、まず教育の場で、それが実施されるらしい。

 八ツ場ダムの工事中止により浮く金は約四千億円である。それを援用すれば、全日本の小・中・高の各校に電子教材を無償で導入されるらしく、文科省の四十代、三十代の官僚は、その実施に躍起になっているが、現場の五十代の管理職や、地方のバカ教育委員や教委幹部が足を引っぱっているので、そう早急には実施はされないが、いかなる抵抗があっても、その時期はさし迫っているのは確かである。

 つまり、教育現場にはいっさい紙が無くなるという。学級名簿も通知票も卒業証書も消滅するし、テスト用紙やお習字やお絵かきの紙も無くなるという。その日は近い。

 一方、ゆとり教育が見直されて、今年の教科書は25%増の厚さにもどり、週休二日制も廃止されて、土曜日の授業も漸次復活する。つまり、現場無視の官僚主導の教育迷走は、まだまだ続くので、完全実施までには五、六年はかかるであろうが、大勢に大きな退化はないと知るべきである。

 新聞、雑誌、書籍を偏愛し、紙の感触や活字のインクの匂いまで親しく考えてきた我々世代にとっては、この変化は恐怖に近いものであって、到底ついていけないが、紙製品で最後まで残るのはティッシュとトイレット・ペーパーだけだと言われると、鳥肌が立つ。

 自分の親戚筋に、私立の小学校に通う小学一年生がいて、この春入学したばかりだが、週三回もパソコンの授業があるという。それが、必ずしもお先走った教育とも思えぬところに、時代の流れがある。
 教育の場から、紙が絶滅すれば当然、文化や文芸の世界からも、紙が無くなるわけで、そういう時代が、もう目の前に来ているのらしい。

 この種の文芸雑誌も当然無くなるわけで、そうすると勉強会や合評会や歌会、句会というのも、随分形の変ったものになるだろう。

                                                               (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 つらい 』
 13 レギュラーを選ぶコーチの胸の内 福井悦子
 11 切るほうも切られるほうも宮仕え 吉崎柳歩
 10   板挟みどちらの顔も立てられず 沢越建志
  8 病室でできぬ約束して笑う 濱山哲也
   7   親の意を知りつつ嫁ぐひとりっ子 福井悦子
   6   強い子になってほしくて突き放す 北田のりこ
    妻病んでこんなにつらい水仕事 水谷一舟
    夜遊びがつらいと思う歳になる 松本諭二