青砥たかこ 選(入選39句)
舟唄が深夜便からもれている 高田まさじ
歯軋りが静かな夜のアクセント
鼓吟
月夜でも闇夜でもいいご遷宮
加藤吉一
逃げたって夜に足首つかまれる
結び目
悔しさを引きずる夜が更けてゆく
早人
* 悪いことするには月が丸すぎる
石橋芳山
ポジティブに生きろ生きろと言う闇夜
五月
独りの夜テレビ相手に喋ってる
赤松重信
コンビニに元気をもらう帰り道
りょうちゃん
帰宅組ばかりではない終電車
毛利由美
祭り終え夜が一入黒くなる
圦山小夜子
夜更かしを謎解き本がお手伝い
PON5
コンビニが夜の孤独を汲み上げる
加藤ゆみ子
通夜の席本音を聞いている棺
端流
どうしても夜がわたしを出てゆかぬ
たむらあきこ
*にんげんの目から解放される夜
新家完司
いいことのあった夜ほど寝付かれず
氷川の杜
夜の丘宝石箱のような街
竹口みか子
虫の音も絶好調になって夜
小谷小雪
寄り添って黙って聞いて欲しい夜
藤みのり
凸凹を夜が清算してくれる
三好光明
腹へった夜の自転車待ちぼうけ
江利子
朝焼けを引き立てるため夜がある
中嶋安子
さみしさが群れるコンビニ誘蛾灯
アズスン安須
* 深夜便聴くため昼寝たんとする
颯爽
夜が来たそっと仕舞おう昼の顔
柳谷益弘
秋夜長二度と逢えないひとへ愚痴
ちゃくし
眠られぬ深夜に妻のフライパン
裕子
夜になり電灯消すビル灯すビル
寺川弘一
* 人間を忘れなさいと夜が来る
柴田比呂志
のぞき込む月に手を振る不眠症
明太子
安らかに眠りなさいと夜が来る
新家完司
* 二人の夜マーブルチョコが弾け飛ぶ
桐壺
ゆっくりと夜が飲み込む遠花火
佐藤明子
真夜中にブツブツブツと秋を煮る 平子久仁子
* ひとつずつスイッチ切って夜になる
田村ひろ子
秀3* 夜中にはいねむりしてもいい案山子
橋倉久美子
秀2 人生の機微など乗せて夜行バス
伯林
秀1 寂しいと夜が酒瓶下げて来る 北原おさむ
評 「夜」が友達顔して、酒を酌み交わしに来るようでおかしい。「夜」を主役にした詠み方がよかった。
軸 夜だけが味方心を解きほぐす 青砥たかこ