西山竹里選(入選39句)
*零してはならぬ徹夜の丸暗記 |
茶飯士 |
*お皿から欲が溢れるバイキング |
西岡ゆかり |
うっかりと零した愚痴を探られる |
おかの みつる |
まだ行ける零れるまでは皆呑気 |
上平 祥 |
こぼし続けて空っぽになりました |
橋倉久美子 |
*たっぷりと愚痴をこぼして蘇生する |
澁谷さくら |
様子見で一滴溢す下心 |
佐佐木雀区 |
夫婦喧嘩怒りを一度茹でこぼす |
瀬田明子 |
煮零れてやがて大人になっていく |
木村行吉 |
一日を日記に零し軽くなる |
老人生 |
*カーテンが昨日の愚痴で湿っぽい |
甲斐良一 |
地球儀の所々に溢した血 |
平尾定昭 |
*能登豪雨涙をこぼす石地蔵 |
瀬田明子 |
溢れ出るようにビールは注がれる |
ムギ |
CMがさも旨そうに泡こぼす |
すずき
善作 |
のん兵衛は零した酒が愛おしい |
おさ虫 |
こぼすほど注いでサービスされる酒 |
澁谷さくら |
*升酒の得したような盛こぼし |
おさ虫 |
*月を見て愚痴を溢しているお猪口 |
大木雅彦 |
精米所米零すのを待つ雀 |
戴 けいこ |
零すのを待ち受けているゴール前 |
坂本加代 |
指間からポロポロ零す掴み取り |
かざま なごみ |
零さぬように山を征服かき氷 |
北田のりこ |
*零すほど入っていない試供品 |
城崎れい |
*記憶から零れる顔が多くなる |
冬子 |
*記憶から零れないでと母を抱く |
小野雅美 |
神だった父がぽろぽろこぼす飯 |
平井美智子 |
リハビリの箸 こぼしてもこぼしても |
由美 |
*零したら拭けば良いのと笑う母 |
汐海 岬 |
手帳から零すどうでもよい予定 |
青砥たかこ |
愚痴こぼす相手はちゃんと見極める |
橋倉久美子 |
注ぐ手元じっと見つめる盛りこぼし |
木村行吉 |
酒好きは酒一滴も溢さない |
さだえばあちゃん |
列車旅ぽろぽろ溢す柿の種 |
野平光太郎 |
*一杯の水を溢さぬ様に飲む |
宮本 信吉 |
*しあわせがこぼれぬように目を閉じる |
田沢恒坊 |
秀3*うっかりと溢した愚痴が風にのる |
鈴木かつえ |
秀2*愚痴こぼす相手はポチと決めている |
由美 |
秀1*監督が聞こえるように零す愚痴 |
星野睦悟朗 |
評
昔なら野村克也監督、最近では岡田彰布監督。選手やチームを奮い立たせるための
愚痴に味があった。若くて都会的な巨人の阿部監督には、まだ真似はできないだろう。