吉崎柳歩 選(入選39句)
*あの世をちらり覗いてしまう救急車 |
裕子 |
猛暑日のたびたび覗く冷蔵庫 |
つれづれ |
バーゲンの文字に弱くてつい覗く |
古都 |
スマートな食べ方お育ちが覗く |
藤井智史 |
ジーパンの穴から眩しさが覗く |
よしひさ |
神様がのぞいていますその悪事 |
関根福多郎 |
*隣りの柿が我が家の庭を覗いてる |
暇人 |
覗き見の代償高くつきますぞ |
じんじん |
横顔に本音の覗くイエスマン |
満月庵 |
腹の底覗き慌てて蓋をする |
こやまひろこ |
見たくないから閉じておく覗き窓 |
森清泰範 |
覗かれているのも知らずつまみ食い |
桔梗庵 |
冷やかしのつもりが仔犬連れ帰り |
関口行雲 |
叶うなら宇宙の果てを覗きたい |
上村夢香 |
*見えそうで見えないバーゲンの値札 |
こみち |
*通信簿覗く前には深呼吸 |
つれづれ |
三面鏡覗いて気付く背の丸さ |
瀬田明子 |
覗くまい横に座った健康美 |
鈴木五郎 |
反省を促されてる水鏡 |
まみどり |
どん底を覗いてからの巻き返し |
通せん坊 |
雲間からお日さま運が向いてきた |
前田トクミ |
鍵穴を覗けば黒塗りの文書 |
よしひさ |
覗くだけ覗いてみたい人だかり |
ポルテーニョ |
覗きたい覗きたくない彼の部屋 |
森清泰範 |
キリストも釈迦もちらりと覗くだけ |
かきくけ子 |
天窓の月が気を揉むゲーム漬け |
颯爽 |
*老眼の覗く明日は曇りがち |
光畑勝弘 |
*覗かれることも承知の裏刺繍 |
太田 昌宏 |
老眼で覗いてみても良く見えぬ |
児玉 浪枝 |
*B面で意外な色を覗かせる |
澁谷 さくら |
付き人が舞台袖から覗く芸 |
西山竹里 |
古本屋覗いて回る昼の月 |
安井紀代子 |
*皇帝ダリアがお二階まで覗く |
丹下凱夫 |
監視だと言って覗いているカメラ |
堀 敏雄 |
*覗いたら美顔パックをしてた鶴 |
平井美智子 |
城下町百円玉で覗かれる |
板垣孝志 |
秀3*竹輪の穴ちょっと覗いてみる孤食 |
北田のりこ |
秀2
名月に鍋の芋まで覗かれる |
マグマ大使 |
秀1
道の駅ちょっと覗いてみたくなる |
橋倉久美子 |
評
さりげなく人情の機微を突いている。課題吟は得てして説明過剰(作りすぎ)に
なりがちだが、シンプリシティーはやはり大切である。
軸 *覗かれることには慣れている金魚 吉崎柳歩