橋倉久美子 選(入選39句)
何事もなかったようにみかんむく 春爺
みかん剥きながら密談など出来ぬ 竹中正幸
皮を剥くネイルアートは蜜柑色 荘子 隆
演説に動員されるみかん箱 甲斐良一
甘っかった青いミカンに騙される 堀 敏雄
みかん剥く柔な鎧を脱ぐように 岸井ふさゑ
花盛りしなびたみかんにもあった 徳重美恵子
運動会青いみかんに出た元気 田地尚子
*ゴミ箱の前でみかんを食べている ガクちゃん
*小袋に収まり行儀良いミカン 新家完司
手土産のみかんが甘い いい人だ 汐海 岬
みかん剥くみかんの内緒事をむく 笹田しま
ともかくもミカンがあってお正月 岡野 満
お帰りと炬燵で待っているミカン 田村ひろ子
蜜柑しかなかった頃の黄の温み 柴田比呂志
贈答に貰うみかんはみな美人 竹中えぼし
お日様の体温つめている蜜柑 笹田しま
炬燵からついでにみかん欲しい声 風間なごみ
おまえまで甘くなったか夏ミカン 圦山 繁
*立ち位置を守る酸っぱい夏みかん 古都
長男にまだ嫁がないミカン山 渋谷重利
秋日和旅の車窓に置くみかん 北田のりこ
*えんぴつの匂い知ってるみかん箱 十六夜
*猿よけの柵に入れられみかん狩り 太田昌宏
*賑わいにみかん二つを入れておく 東川和子
*さよならが飛ばないように蜜柑おく 桐壺
みかん剥くネイルアートの指立てて こやまひろこ
*仏壇の中の一人がみかん好き 中川喜代子
途絶えたら会話のつなぎみかん剥く 木村行吉
*糸口を探して二つ目のみかん 藤澤霧堂
みかん剥く敵のように爪立てて 岸井ふさゑ
弁当箱にみかんの輪切り幅効かす 青砥たかこ
帰省の子待ってる箱入りのみかん 裕子
いただいたみかんひと箱持て余す 坪ようこ
*風邪引けばすぐに見舞いにくるみかん 和田洋子
口下手に何よりみかん剥く時間 芦田敬子
秀3*ことしから兄の名前で来たみかん
ようこ
秀2 民宿のデザートとして出るみかん
西山竹里
秀1 みかんなら自分で剥ける独り者
吉崎柳歩
評
みかんとバナナはむきやすい果物の双璧? 保存を考えると、みかん
が最も独り者向きか。
軸 ご挨拶代わりにみかん配り合う
橋倉久美子