青砥たかこ 選(入選39句)
くしゃくしゃに慣れてしまえばぐちゃぐちゃに 東川和子
見慣れると鬼の顔でもやさしいね 夢香
幸せに慣れて忘れる灯の温み ようこ
生ゴミの仕分け手慣れているカラス 圦山 繁
慣れたけど好きにはなれぬ内視鏡 吉崎柳歩
*慣れのミス慣れぬミスより恐ろしい 氷川の杜
同居してケチャップ味に慣れた舌 芦田敬子
鼻歌の頃に変更通知きた 太田昌宏
*散髪は「いつも通り」の一言で 松長一歩
ドキドキも少し慣れたよ袋とじ 山口悦子
極悪の事件もさらり聞き流す べにすずめ
*五合目でやっと鼓膜が慣れてくる 大釜洋志
慣れた頃見えない先に落とし穴 やっこ
*粗忽者訂正印も慣れている 由美
*花がない方が自然である花瓶 森山文切
五年経つ慣れるも怖い震度三
眞二
*猫ブームノラもすっかりカメラ慣れ ぷいこると
ジェスチャーに慣れて片言旅日記 つれづれ
ため口を人気と教師取り違え 竹中正幸
聞き慣れぬ噂飛び込む二十五時 葱坊主
おしくらまんじゅうも少子化に慣れる 大木雅彦
若いパパ命抱くのに慣れてきた 山口悦子
お互いの気づかぬふりも板につき 田村ひろ子
見積もりに慣れてざっくりした予算 徳重美恵子
横断の作法に慣れたランドセル よけだ
場慣れした演歌だ金を掛けてるな 澤ちか子
案山子にも慣れて知恵つく稲雀 岡野 満
*慣れてきた頃になくなる試供品
橋倉久美子
住み慣れて地元の良さに気づかない 森清泰範
*緩い方軽い方へはすぐ慣れる こやまひろこ
これからは慣れねばならぬセルフレジ 西山竹里
フルムーンやっぱり慣れた靴で行く よしひさ
人の死に涙忘れている白衣 中田 尚
*空っぽに慣れていますと言う財布 圦山 繁
お喋りも赤信号も犬は待つ 田地尚子
老人という立場にも慣れてきた 新家完司
秀3 酷評も慣れると心地よく響く
吉崎柳歩
秀2*慣れたのか薬の効き目薄くなり
吉田梨花
秀1*不景気にすっかり慣れた招き猫
濱山哲也
何に慣れたか、何が慣れたかがはっきりしている句で面白いのを選びました。
招き猫の諦め顔が浮かんで頑張ってと声を掛けたくなりました。
軸 慣れたのは時が手助けくれたから
青砥たかこ