吉崎柳歩 選(入選39句)
人相でかなり損している私 きぃろっく
受付でわたしの値打ちさぐられる いわさき楊子
*年金は少ないけれど命綱 翔のんまな
*国宝と聞かなきゃ分からない値打ち 片山かずお
いい返事するたび値打ち上げる嫁 渋谷重利
ほしいもの何もなかった福袋 桐壺
あちこちに傷ある自分史の値打ち 伯林
自分史に値打ちを付けるエピソード 岡野 満
*面白うてなんぼが大阪の値打ち 孝志
*ガラクタの値打ちを知っている子供 毛利由美
お値打ちですと言われて買ったただの壺 こみち
外交に重宝されているパンダ 濱山哲也
勿体をつけて小出しにする秘密 ちゃくし
二分後は破って棄てられる馬券
笹田しま
死んでから値打ちが出ると言っておく
青砥たかこ
値打ちある妻だと知ったカップ麺
角丸弘之
*ふるさとの水はエビアンよりうまい
新家完司
つくだけの値打ちがあった軽い嘘
高浜広川
*何度でもくり返し読む子の手紙
上田ひとみ
爺ちゃんも薪ストーブも元気です
田村ひろ子
この次を言えば値打ちの下がる口
半兵衛
父として厳しい顔もしてみせる
岡本恵
薬指にはめて値打ちの出る指輪
毛利由美
私と家族を詰めた日記帳
三好光明
続編を今か今かと待つ値打ち
柴田比呂志
棺桶の蓋が閉まって値が上がる
ころのすけ
金箔がはがれ値打ちの出た仏
橋倉久美子
人間の値打ちを測る曲り尺
おさ虫
*直角に下げる値打ちがある頭
古都
お百度の石は値打ちに耐えている
徳重美恵子
*値打ちなどないと分かって楽になる
十六夜
読点があって息継ぎ迷わない
高浜広川
料金で値打ちが分かるディナーショー
船岡五郎
自らの値打ちに悩む唐辛子
豊後ぶんご
わたくしの値打ちを決める○と×
森山文切
水割りにされて落ち込むブランデー
松谷大気
秀3 懐の深さ便座の温かさ
西垣こゆき
秀2 梅干しの種が遠くへ飛ぶ値打ち
柴田比呂志
秀1 才能を発揮できないバイオリン
甲斐良一
余すところなく才能を発揮したいと願っているのに、奏者はそれを叶えてくれない。ひょっとしたら「バイオリン」は我々の潜在能力のことかも知れない。
軸 辛口のコメントだからある値打ち
吉崎柳歩