橋倉久美子 選(入選39句)
九条に深く刻んである平和 森清泰範
自衛権命を刻む音がする バリバラ
消しゴムで彫った羊で福を呼ぶ 伊田網人
*消しゴムに羊刻んでごあいさつ かずよねえちゃん
*屈辱を胸に刻んで三浪目 颯爽
悔しさを心に刻む予選落ち 岩堀洋子
刻印は消滅しないペアリング 毛利由美
柱には子の成長を刻む跡 圦山小夜子
不貞寝している間も刻むロスタイム 西垣こゆき
見返りを大きく抱きチョコ刻む PON5
刻みネギてんこ盛りして風邪うどん きぃろっく
ネギ刻むリズムに母の意志がある 木漏れ日
まな板に主婦の歴史が刻まれる 中川喜代子
菜を刻むリズムが決める今日の色 竹内いそこ
刻み食柄ではないと百の意気 よしひさ
路傍の碑名もなき人の名を刻む 斉尾くにこ
魂の叫び刻んでいる石碑 圦山 繁
風がさらっていったか墓碑に文字がない たむらあきこ
寒稽古カラダに冬を刻み込む 柴田比呂志
連なった葱包丁のせいにする 西垣こゆき
銘板に刻まれるなら寄付をする 岡野 満
*デジタルがあっさり味で刻む時 甲斐良一
*包丁が切れぬとできぬみじん切り 片山かずお
病室の時間を点滴が刻む 笹田しま
脳みそのシワに刻んでおく秘密 西山竹里
ハンバーグへ詰める悩みのみじん切り 小谷小雪
玉葱を刻んで次の恋を待つ 光畑勝弘
墓碑銘に刻む一語に悩む歳 竹中正幸
眠れぬ夜過去が心を切り刻む しげのり
シュレッダーかけて保持している秘密 毛利由美
アホらしいマル秘も刻むシュレッダー 甲斐良一
刻んでも刻んでもにおいは取れぬ 青砥たかこ
愛じゃない葱を刻んでいるだけよ 寿々
手書き文字碑に刻まれて照れている 徳重美恵子
わたくしの企画書食べるシュレッダー 濱山哲也
活け造り直ぐに死んではならぬ鯛 松谷大気
秀3*女子力のポイント上げるみじん切り
笹田しま
秀2*やわらかい時間を刻む本の森
陽香
秀1*献立が決まらないまま葱刻む
十六夜
どんな献立であっても、まずは湯を沸かすとよいと聞いたことがあるが、ネギを刻むのも役に立ちそう。生活感があふれている。
軸 *刻みよいようまっすぐに伸びるネギ
橋倉久美子