橋倉久美子 選(入選39句)
機を織る鶴は誰でも覗きたい おかのマン
恩返しの差鶴は内職亀旅行 加藤吉一
CMに織り込み済みのお手洗い 渋谷重利
文化財意気込むギャルの織るつむぎ わこう
*まあまあと慰められている織り目 田村ひろ子
失敗も無駄も織り込みこの値段 甲斐良一
修正されることを織り込み出す予算 片山かずお
自在には決して織れぬ赤い糸 ゆうちゃん
硬軟をうまく織り交ぜする躾 圦山小夜子
夢という糸で明日を織り上げる 竹中正幸
自分史に金糸銀糸を織り交ぜる 十六夜
疑問符も織り交ぜてある立志伝 加藤吉一
虚と実を重ね織りして生き延びる ちゃくし
縦糸の解釈変えて国旗織る 小夢邸
出来ぬことも織り込んであるマニフェスト ロバ
それぞれの色を織り込む指導力 大釜洋志
諸経費に織り込んである不明金 OSAYAN
織り込んだ自慢話が浮いて出る 甲斐良一
差し色を足して自分史織り上げる 瀬田明子
*それぞれの今日が織られてゆく始発 木漏れ日
終章の錦を織っている野心 猫坊主
織っていた糸が途中で切れている ゆまろ
織り出しは地平線まで見えていた 岩根彰子
気づかれるようにジェラシー織りまぜる ゆまろ
タテ糸を信じて今日の柄を織る 西山竹里
*錦の旗をせっせと織っている途中 まりえ
手織りだと変なネクタイ自慢され 伊田網人
手編みとは次元が違う手織物 毛利由美
*夢を織る先があろうがなかろうが 佐藤彰宏
横糸に織りムラが出る倦怠期 船岡五郎
朱の糸も足さねば幸福が織れぬ たむらあきこ
*縦糸が真っ直ぐすぎて織りづらい 小夢邸
反対を織り込んである妥協案 おかのマン
虚と実を織れば社会という布地 結び目
ウソの糸織り混ぜてあるウエディング おさ虫
*スクープへ虚実織り交ぜ走るペン 瀬田明子
秀3 故郷へ錦儚いダムの底
三浦芳子
秀2 雨あがり天使が虹を織りにくる
笹田しま
秀1*空飛べる絨緞そっと織っている
天気
評 何を織るかで苦労したと思われる句が多い中、スケールが大きくしかも夢のある句を、秀句1、2にいただいた。
軸 *予算にも織り込んであるつまみ食い
橋倉久美子