橋倉久美子 選(入選39句)
いい匂いマフィンが焼けて仲直り
猫じゃらし
夕焼けを背に張りつけランドセル
岸井ふさゑ
夕焼けを背負って帰る三輪車
光畑勝弘
レアーよりウェルダンが好き恋ならば
はぐれ雲
高級な肉は上手に焼けぬ母
森山文切
草焼かずマナー堅持のゴミ袋
あきら
焼けるまで待ってはおれぬバーベキュー 武良銀茶
お隣も蒲焼きらしい換気扇
大釡洋志
焼却の運命秘密公文書
徳重美恵子
内緒話かすかに読める灰のあと
坪井篤子
この彼はお好み焼きのお付き合い
八王寺宇保
世話が焼けるお人だねえと嬉しそう
佐藤千四
落ち葉焼くだけで飛んでく消防車
福多郎
かば焼きの香りが財布そそのかす
わこう
お醤油が焼ける匂いの夜店の日
重郎
夕焼けに呑み込まれてる過疎の村
青砥和子
*焼鳥の串は人事も知り尽くす
田岡修二
秋刀魚焼く煙をまずは目に食わせ
荘子 隆
*ちっぽけなことだが古い手紙焼く
高浜広川
焼き捨てた恋 灰だけは取っておく
汐海 岬
地獄から焼きが悪いと来た小言
小林祥司
*玉子焼き比べるものじゃありません
くじょうまる
身を焼いて主人護っている日傘
圦山 繁
生焼けの未練がたまに顔をだす
十六夜
あっけなくボタン押されて荼毘になる
満月庵
弁当にないとさみしい玉子焼き
ねこママ
焼けるまで待てば隣の箸がくる
ようこ
*日焼けしたシャツよお前も仕事人
竹内いそこ
細身でもまけてくれない火葬場
星野睦悟朗
右腕がこんがり焼けたドライバー
佐藤彰宏
枯草を焼くだけなのに消防車
坂本加代
山焼きでまた振り出しに戻る山
木村行吉
*山火事になるとニュースになる野焼き
吉崎柳歩
串が焼けぬよう刺してあるうなぎの身
西山竹里
蒲焼の匂い公害とは言わぬ
瀬田明子
雑談のようにたこ焼き食べている
佐藤ちなみ
秀3*まんじゅうの焼き印ミスが許されぬ
城崎れい
秀2
焼きめしがメニューには無い炊飯器
小川はつこ
秀1*冷静に焼いておりますIH
加藤当白
評 秀句3句はいずれも食べ物関係。私は擬人化が好きでよく使うが、IHの
擬人化とはおそれいった。
軸
未練残らぬようにからっと焼き上げる
橋倉久美子