橋倉久美子選(入選39句)
*町内の医者より遠い医者へ行く |
堀 敏雄 |
免許返納近いイオンが遠くなる |
松長一歩 |
遠国から盗賊指示をするアプリ |
モモコ |
*雪の日も遠いひとほど遅刻せず |
さだえばあちゃん |
*休みます遠い親戚お借りして |
せきぼー |
遠い人にはお知らせしない家族葬 |
北田のりこ |
*SNS遠い人にも気を許す |
西岡ゆかり |
遠回りした人生に悔いはない |
やんちゃん |
ゆっくり行こう終点はまだ遠い |
新家完司 |
さらにまた遠くを目指す登山靴 |
福村 まこと |
よく笑い老い遠ざける好奇心 |
やんちゃん |
*本名から遠い雅なペンネーム |
徳重美恵子 |
*化粧した妻が遠くへ行きたがる |
柴田比呂志 |
出世した背中が遠い人になる |
大木雅彦 |
遥拝が日常化するウィズコロナ |
白鳥象堂 |
徒歩5分だんだん遠くなるお家 |
こみち |
大雪がさらに遠くにする田舎 |
信天翁 |
兄嫁が苦手で実家遠くなる |
浩子 |
故郷が遠くなってく墓じまい |
芦田敬子 |
集合は遠い人から順に来る |
宮本 信吉 |
遠い日の記憶で英語話せない |
芦田敬子 |
病気とは縁遠いはずだったのに |
ムギ |
寝坊してことさら遠い通学路 |
福村 まこと |
席替えでひとつ彼から遠くなる |
香苗 |
遠い日の恋が眠っている文箱 |
よしひさ |
遠距離のせいと自分を慰める |
荘子 隆 |
遠吠えがくせになりそうひとりの夜 |
佐藤ちなみ |
カーナビを信じてとても遠回り |
よーこ |
*遠くへも一糸まとわず行く葉書 |
甲斐良一 |
*メタボ腹邪魔して遠い足の爪 |
伶音 |
遠すぎて月への旅は諦める |
植野悦子 |
*遠いので行こうと思わない火星 |
西山竹里 |
お馴染みの飲み屋が遠いテレワーク |
星野 睦悟朗 |
遠吠えが木霊している立呑み屋 |
よーこ |
元旦の抱負は既に遠くなり |
なるほどマン |
理想には遠いけれども気にかかる |
西岡ゆかり |
秀3
遠回りしてほめられるウォーキング |
トッピー |
秀2*堂々とクシャミできる日まだ遠い |
正能 照也 |
秀1
合併で役所が遠くなる田舎 |
村上佳津代 |
評
これは田舎の人間にとっては実感句。市町村合併を重ねるにつれ、役所を初めと
する諸施設のある中心地は遠くなるばかり。かくして過疎化は進んでいく。
軸
*また一の目が出て上がりまで遠い
橋倉 久美子