吉崎柳歩 選(入選38句)
*福耳もやや難聴になって来た 中川喜代子
福耳の家系で痩せている財布 堀 敏雄
耳よりな話耳だけ寄ってくる 松尾冬彦
*ゼロよりは良いか耳垢ほどの利子 森清泰範
*周波数合わせ介護の耳になる 相模秋茜
耳寄りな話に乗ったことを悔い 岩堀洋子
メールうつ耳はテレビのニュース聞く
彩古
真剣な声に聴く耳持ったふり
高浜広川
どの耳も値引きの合図待っている
らむ
不器用な人に頼まぬ耳掃除
北田のりこ
耳寄りでないお話も聞ける耳 西山竹里
耳たぶはでかいが平凡な暮らし ロン
*三時間耳お貸しするボランティア 丸山 進
家計簿のグチを聞いてるパンの耳
佐藤 千四
妻が口開くと耳が痛くなる
かっぱ堂
*耳遠くなって浮き世の心地良さ 岡本恵
*耳たぶにお茶の熱さを訴える 大釜洋志
聞こえない振りした耳がよく動く
芦田敬子
聞く耳は持たぬ四月のキリギリス
柴田比呂志
よい耳にしか届かない春の音 丹川 修
*耳底にしっかり残る母の声 やひろ
*アベノミクス耳には心地よい言葉
小林信二郎
福耳にピアスの穴は似合わない
ねこママ
*持ちやすいかたちに耳はついている 青砥たかこ
*ロックより演歌にほっとしてる耳 らむ
補聴器の耳がピアスの愚痴を聞く
颯爽
雛壇に並ぶ立派なロバの耳 孝志
聞く耳は持たない反抗期のピアス かっぱ堂
福耳にちょこんと乗っているピアス
金平糖
退屈をそらしてくれる耳の穴 青砥和子
若作りむなしく揺れるイヤリング ちゃくし
罪悪感を抱きパンの耳捨てる 芦田敬子
肝心なこと聞き逃す地獄耳 瀬田明子
*告げ口は私の耳で行き止まり 大釜洋志
*耳たぶが大きいだけで褒められる 高柳閑雲
秀3 角ばった話が耳に入らない
石橋芳山
秀2*それなりにある耳たぶの使い道
橋倉久美子
秀1 右耳の愚痴を聞いてる左耳
光明
右耳も左耳も自分の耳。つまり、もう一人の自分が冷静に己の愚痴を分析している、ということだろう。ユニークで見事な仕立てだと思う。
軸 耳打ちを勝手にされて困る耳
吉崎柳歩