青砥たかこ 選(入選39句)
いざ勝負長袖のシャツたぐし上げ
中川喜代子
たった五分だけど待たされると長い
片山かずお
長い列男子の方は空いている
廣田千恵子
読み解けば源氏は今の物語
めぐみ
長い目で見守った子が花咲かせ
颯爽
長い息フーッと吐いて明日に向く
中嶋安子
風雪を食べて話が長くなる
塚越孝一
イカのテンプラ長い箸持ち立ち向かう
北田のりこ
額縁におさまる夢をみるキリン
レイ
定期巡回まだ消えてない「手術中」
奥村吉風
地権者の一人が臍を曲げている
吉崎柳歩
*秒読みに入ると長い発射台
田岡修二
正座して足も他人になる説話
葱坊主
鈍感な男は息継ぎが長い
石橋芳山
長いものに巻かれ身動きできません
濱山哲也
影長く心に秋が沁みてくる
圦山小夜子
ひと口ですすり切れないほど長い
橋倉久美子
前奏がめちゃくちゃ長い揉み手歌
結び目
*しんにょうを伸ばしたような田舎道
青砥和子
*ご無沙汰を詫びるかたちに貼る切手
和田洋子
長い舌人を転がすのが上手い
石橋芳山
よそ行きの顔を作った日が長い
かきくけ子
百年を生きる幸せ不幸せ
こみち
*長いすにポツンとすわる秋の月
平子久仁子
目立とうとするから長いなと思う
杉山太郎
*定年後ひとたび捨てた夢を追う
船岡五郎
一点差勝利へ長いロスタイム
わこう
欠伸出て長い小言がまた延びる
端流
*長すぎる祝辞に鯛の大欠伸
田地尚子
耐えている牛の涎となる祝辞
大田はる
長すぎるとからまる脚も文章も
橋倉久美子
*十万年払い続ける核のツケ
西山竹里
長い前置き本論が溶けていく
芦田敬子
トンネルが長いと電池切れになる
永見心咲
生きるため右手が少し長くなる
光畑勝弘
踏切が長い話を終わらせる
十六夜
秀3 秒針がのんびりしてる待ち合わせ
明太子
秀2*長いこと暮らして魔女と知りました
西村みなみ
秀1
神も悩んだ小腸の納め方
青砥英規
評
小腸が大腸の3倍も長いことを知らない人も多いと思う。 神が悩ん
だ…などさもありなん詠み方が面白い。
軸
他人より長い物差し持った母
青砥たかこ