青砥たかこ 選(入選39句)
これですか虫の居所悪いわけ 岡嶋義幸
虫干しを忘れた脳に穴が増え
星野睦悟朗
*ざわざわと草書体から虫の声 青砥和子
*力作をごめんね蜘蛛の巣を掃う 小谷小雪
毒は吐く虫も殺せぬ顔をして
かっぱ堂
戦いが好きな地球の寄生虫
新家完司
アルコール消毒しとく腹の虫
照坊主
沈黙の空気も読めぬ腹の虫
汐海 岬
天災を恨むかちちろ隅で鳴く
翔のんまな
こらえてもぐぐぐぐぐぐぐ笑い虫
田村ひろ子
時として虫も殺さぬ顔になる
十六夜
居心地良い虫に好かれている我が家 竹口みか子
一寸の虫だが選挙権はある
西山竹里
虫食いの穴を埋めてる日曜日
十六夜
カメムシの臭いに近い加齢臭
新家完司
込み入った話になると団子虫
杉浦康文
虫食いのりんごプライドまだ捨てず
真田義子
*虫を食う小さな虫も生きている
真田義子
*虫愛ずる姫も今なら理系女子 廣田千恵子
*宝石になった琥珀の中の虫
北田のりこ
虫かごの中で怒っている亭主
とうちゃん
網じゃなくネットで虫を観察し
八十日目
満月の入浴剤は虫の声
良馬
やけ酒にちっとも酔えぬ腹の虫
竹中正幸
ストレスを餌に五臓を喰らう虫
伊東志乃
奇遇にも蓼食う虫でルビー婚
結び目
虫の名は娘が固く口閉ざし
りょうちゃん
*虫ピンに夢まで貫かれた蝶 結び目
蓑虫の気分炬燵が出られない
永見心咲
虫さされと言うが怪しいアザだな
早人
捕まえた子には立派な虫に見え
銀犀花
虫だって一発芸を持っている
青砥英規
害虫と呼ぶのはニンゲンの都合
上嶋幸雀
幸せがまた泣き虫な妻にする
しげのり
素直にはなれない虫が胸に棲む
ゆまろ
自分史が紙魚に喰われて穴だらけ 颯爽
秀3 ごめんあそばせと鳴きだす腹の虫
汐海 岬
秀2 若すぎた仕事の虫の偲ぶ会
竹中正幸
秀1 何があろうと武器は持たないダンゴ虫
上嶋幸雀
評
だんご虫は手も足もなく、まして鳴くこともない。武器を持てないのではなくて、
持たない、のがよかった。「虫一切」ではないが、「玉虫色」と「虫眼鏡」以外は入選
の対象にした。
軸 *押し花のように本から虫が出る
青砥たかこ