橋倉久美子 選(入選38句)
日が暮れて捜索隊の重い足 青砥たかこ
*御嶽の秋が途方に暮れている おさ虫
風鈴を吊るしたままで秋も暮れ
小林祥司
日が暮れて佳境に入る炭坑節
松長一歩
暮れてなおライト連なる里帰り 閑鳥居
暮れてなお諦め切れぬ大晦日 十六夜
髪白くなってわたしが夕暮れる 濱山哲也
明日もまた鳴けるか蝉が夕暮れる 佐藤千四
もう暮れる朝のお茶碗浸けたまま 入来もんじょ
朗報は途方に暮れる頃に来る 森山文切
取り立てて何もせぬうち今日も暮れ
片山かずお
防犯灯がもう点いている茜曇 吉崎柳歩
バス停で途方に暮れる田舎道 紫敷布
暮れてなお色残したい西の空 pp
*お日さまが早く寝たいと秋の暮れ 圦山小夜子
夕暮れが忘れた恋を呼び起こす 中嶋安子
点滴の眠れ眠れに今日も暮れ 田村ひろ子
転ぶから暮れる前には帰ります 西垣こゆき
日が暮れて家路を急ぐプチ家出
竹中正幸
飲兵衛が早く暮れろと急き立てる
極楽トンボ
日が落ちてから本当の酒の味
まりえ
人生の暮れを知らせに来る役所
中川喜代子
道草が一番星に立ち止まる
ころのすけ
日暮れまで草を抜いてる小さな背
ぷいこると
菓子つまみLINEしてたら日が暮れる
こう☆らむ
八合目あたりで沈みだす夕日
よしひさ
今年又断捨離出来ず大晦日
由美子
*老いふたり禅問答で今日も暮れ
沢田正司
*とっぷりと暮れて張り切るナビの声
加藤吉一
夕暮れて金木犀の自己主張
颯爽
一日が暮れて秋刀魚が香ばしい
安藤なみ
*日が暮れてほっとしている影法師
田村ひろ子
稲刈られ途方に暮れている案山子
西山竹里
残業をせずとも冬の5時は暮れ
毛利由美
夕暮れてジャングルジムは独り占め
高浜広川
秀3*夕間暮れ砂場もホッと息をつく
陽香
秀2*暮れてから残業らしくなった窓
吉崎柳歩
秀1*あの世まで続く日暮れの散歩道
新家完司
評 「あの世まで続く」が意表をついている。散歩ついでに元気にあの世まで歩いていけたら、それはそれで幸せかもしれない。
軸 日暮れ時ふいに電話をしたくなる
橋倉久美子