吉崎柳歩 選(入選39句)
乾いたら洗濯物に鳥の糞 はぐれ雲
乾かされ蜜柑の皮に二度の職 板垣孝志
乾き物とビールを配るバスツアー
片山かずお
乾き切る前に会いたい人ひとり 竹口みか子
人間でいます羽衣乾くまで 有海静枝
洗濯が乾く間に行くランチ 桐壺
逃げているんだね乾いた笑い声 森山文切
*充電中ですマニキュアが乾くまで 樋口りゑ
街路樹の落葉の乾く音を踏む つれづれ
ときめきが失せて乾燥肌になる まりえ
地球儀の乾いた場所で流れる血 青砥和子
母もので涙補うドライアイ 瀬田明子
*目も口も肌もこころも乾く老い こみち
舌先を少し乾かす歯の治療 加藤吉一
スポンジが乾く排水口乾く 森山文切
まな板の乾く間もないお正月 岡本 恵
縁遠い私に乾くくすり指 明太子
乾かないようにしっとり読む文庫 柴田比呂志
唇が乾く度胸のない証拠 大木雅彦
ベランダに犬のパンツも干してある 中川喜代子
枯葉舞う別れ話を聞きながら 丸山 進
心身共に乾き静電気の餌食 北田のりこ
国歌斉唱口パクで舌乾く まさじ
空っ風ますます乾くカバの口 板垣孝志
ギスギスと体が乾く休肝日 佐藤千四
*乾いたらかなり小さくなる魚 青砥たかこ
でこぼこになってだんだん乾く指 田村ひろ子
*お日様の匂いはしない乾燥機 濱山哲也
お日様が張り切っている物干し場 圦山 繁
*エルメスのタイに乾いたご飯つぶ アズスン安須
*乾くまでぼんやりしてる障子紙 平尾定昭
*干からびたへその緒自立しているか 久保卓子
*干乾びた愛が栞にされている おさ虫
*幸せな屋根だ蒲団が干してある いわさき楊子
朝刊の記事を乾かす夕刊紙 角丸弘之
棒鱈のように乾いて十二月 新家完司
秀3 濡れ衣はそう簡単に乾かない
おさ虫
秀2 優勝の涙はじわじわと乾く
柳谷益弘
秀1 乾いたら洗濯物はほめられる
柳谷益弘
評 お日様のおかげ、という視点はよくあるが、洗濯物そのものを擬人化した句は見
たことがない。洗濯物だって、ちゃんと乾こうと頑張っているのだ。
軸 *乾くまでそのまま立てておくテント
吉崎柳歩