吉崎柳歩 選(入選39句)
一年を一字で締める年の暮れ |
おさ虫 |
行く年を締める貫主の太い筆 |
竹中正幸 |
*緩んでる箍締めなおす初日の出 |
満月庵 |
ボディービルで締めた体を見せたがる |
はっつん |
使うところが無い引き締めたボディー |
藤井智史 |
締め切りの間際にパッと咲かす花 |
丘きらら |
年末は力仕事で締めくくる |
井手ゆう子 |
寸胴にきりっと帯の締め心地 |
わこう |
窓際で今日をゆっくり締めくくる |
真田義子 |
コンビニの夜食が今日を締め括る |
柴田比呂志 |
三分粥いのちの味を噛み締める |
よしひさ |
女子会の三本締めが艶っぽい |
颯爽 |
締め出され月と一緒に明かす夜 |
安井紀代子 |
ほろ酔いに月も締まりのない夜道 |
小林祥司 |
*ひとつずつ螺子締めていく月曜日 |
十六夜 |
中締めのあとは静かに消えるだけ |
上村夢香 |
言い訳にだんだん締まる包囲網 |
福多郎 |
スキヤキの締めはうどんに決めている |
森清泰範 |
雑炊か麺かで悩む鍋の締め |
橋倉久美子 |
*締め切った部屋で溺れている私 |
真田義子 |
*突発の客で帳簿の締め直し |
加藤当白 |
締まって行こう掛け声の要る草野球 |
加藤吉一 |
締め込みに水含ませる押し相撲 |
甲斐良一 |
*真夜中に蛇口の栓を締めなおす |
ねこママ |
*定年後なのにネクタイ締めたがる |
ブランクながい |
*わたくしの元栓締めて今日終える |
十六夜 |
*引き締めて給料日へとたどりつく |
丘きらら |
*締めが無いまま主婦業は正月へ |
たごまる子 |
被災地も今年を締める除夜の鐘 |
渋谷重利 |
鉢巻を締め除夜の鐘聞いている |
絹田あさ |
ぬる燗で締めるひとりの大晦日 |
こみち |
一日の締めになくてはならぬ酒 |
澁谷さくら |
しぶちんと言われてるのは知っている |
べにすずめ |
ネクタイを頭に締めている幹事 |
堀 敏雄 |
定員に満たずに受け付けを締める |
青砥たかこ |
記入漏ればかりの家計簿を締める |
橋倉久美子 |
秀3
ネジ山を潰さぬように締めるネジ |
西山竹里 |
秀2
戸締りがとっても楽なワンルーム |
北川律子 |
秀1
締め切りがないことはないプロポーズ |
平尾定昭 |
評 私のもう一つの句は「締切りがあったらできるプロポーズ」だった。この句の
「ないことはない」という、もどかしい表現に「負けた」と思った。
軸
酔っぱらい同士締まりのない会話 吉崎柳歩