吉崎柳歩 選(入選39句)
知り合った頃は透明だった妻 |
宮本 信吉 |
変化する四季の空気が描けない |
糀谷和郎 |
*売れないと思うよ透明のマスク |
丸山 進 |
透明な箱で賄賂は贈れまい |
青砥たかこ |
不純物沈んで水が透き通る |
青砥たかこ |
安全のためにもガラス磨かない |
橋倉久美子 |
透明な狼煙を上げて君を待つ |
光畑勝弘 |
透明に無音に届く放射能 |
青砥和子 |
*透明な沼がターシャの森にある |
斉尾くにこ |
わさび田の優しく澄んだ水の音 |
宮井いずみ |
葛餅の透明感に溶けて行く |
上平 祥 |
*どこからか母の声する水鏡 |
小谷 小雪 |
愛しても手には取れない水中花 |
星野睦悟朗 |
透明な海戻らない辺野古崎 |
竹中正幸 |
忖度をするたび濁る透明度 |
大木雅彦 |
久しぶりの逢瀬アクリル板は邪魔 |
浩子 |
透明な壁いちまいのディスタンス |
澁谷さくら |
透明な瞳にウソを見抜かれる |
福多郎 |
*透明に成り切れないでいるお化け |
野平光太郎 |
夏風邪を招いた透明なパジャマ |
安藤なみ |
見つめられ何か言いたい水中花 |
田岡修二 |
沈黙で透明になるソーダ水 |
汐海 岬 |
*天窓のガラスよ空になりたいか |
柴田比呂志 |
*原稿を仕上げた夜が透き通る |
宮尾柳泉 |
日傘にはなれぬビニール傘の鬱 |
岡本恵 |
透明になりたい時がある授業 |
西岡ゆかり |
名水をグラスに満たす休肝日 |
颯爽 |
*手に掬うまでは確かに青だった |
平井美智子 |
*透明になれそう息を止めてみる |
まみどり |
プライバシーなど考慮せぬ金魚鉢 |
新家完司 |
無色透明悲しみ抱いた汚染水 |
圦山 繁 |
透明の雨ばかりではない地球 |
吉一 |
月に近づき透明になるかぐや姫 |
吉一 |
透明になれたらやめるダイエット |
澁谷さくら |
透明でも水質検査されている |
徳重美恵子 |
*透明になってしまった探し物 |
坂本加代 |
秀3 透明な瓶だと安く見える酒 |
西山竹里 |
秀2 透明でないと美味しく飲めぬ水 |
西山竹里 |
秀1 透明にできぬか高い防波堤 |
北田のりこ |
評
かつて白砂青松と称えられた日本の海岸線。工業化に加え大津波に備えるために作
られた防波堤によって目隠しまでされてしまった。透明化できたらどんなに良いことか。
軸
透明になるまで磨く猜疑心 吉崎柳歩