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目次8月号 ・巻頭言 「 球児の夏」 ・すずか路 ・小休止 ・柳論自論 ・リレー鑑賞 ・例会 ・例会風景 ・没句転生 ・特別室 ・アラレの小部屋 ・インターネット句会 ・前号印象吟散歩 ・誌上互選 ・ポストイン ・みんなのエッセイ ・各地の大会案内 ・編集後記
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柳歩 柳歩整理 伴久・柳歩 福井悦子
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巻頭言 | |
幼馴染みに、T君という野球少年がいた。私より一歳年長だが、物心ついた時から一緒に遊んでいた。同じ社宅に住んでいて、家族ぐるみの付き合いだった。
中学校の時には野球部に入り、投手として活躍した。高校は、徳山市(現周南市)の山口県立徳山商工に進学し、もちろん野球部で活躍した。 残念ながら甲子園出場はならなかったが、卒業後、彼は野球の技量を買われて、大阪の、当時八幡製鉄に就職し、社会人野球の選手となった。 私が二十歳を過ぎたころ、四日市の職場から彼に電話したことがあった。 「成人の日」も過ぎたある日、職場から帰宅すると、「Tちゃんが亡くなったってよ」と、母から一通の手紙を渡された。成人式前後に帰省して、野球仲間と飲みに出かけ、未明にタクシーに撥ねられたらしい。「あまりのことに涙も出なかった」と、T君の母親の手紙に書かれていた。社会人になってT君と再会することは叶わなかった。 今年も、熱い球児の夏が来た。 柳歩 |
すずか路より |
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リレー鑑賞「すずか路を読む」 |
手を少し添えたら出来た逆上がり 浅井美津子
認知症の予防菖蒲湯に入る 長谷川健一
愛犬に急かされ今日も海に行く 竹口みか子
楽しみなパワースポット雨の中 竹口みか子
へそくりが発覚妻の怒り買う 瓜生 晴男
うどんにも憂さがあるのか吹きこぼれ 加藤けいこ
どこをどう歩いても良し万歩計 吉崎 柳歩
もてなしの気持ちをフワリ包み込む 青砥たかこ (各務原市在住・名古屋番傘同人) |
7月24日(土)例会より | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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特別室 |
紙類絶滅考(2)新聞
ペーパー・レスの時代がくるという。
自分は新聞が大好きだ。 そして何よりも、その翌年、永井荷風の『濹東綺譚』がアサヒの夕刊に連載されて、文学に対して眼を開かれた時期でもあった。昭和12年には盧溝橋事件が起り、日中戦争が幕を切った。 テレビのない時代で、社会や外部の情報源としては、ラジオと新聞しかなく、時間の自由を保証してくれる新聞に、とりわけ自分は熱中していた。プロ野球の記事も、戦争の記事も同じように、中学三年生から四年生にかけての柔軟な自分の脳髄に沁み込んだ。 新聞を開いた時の紙とインクの匂いは、格別に魅力的であった。もちろん、今より紙もインクも上等ではなかったろうから、匂いはきつかったのだと思う。 今、明らかに新聞は斜陽である。また活字の大きくなることも、全面広告がやたらに多くなったことも、その一証であるが、県内文芸欄の統合も、その一例である。東海版になって文芸欄の歌壇に載った首位の作を引く。 ・寂しくてついつい水をやりすぎる君が残していったシクラメン わが橋倉久美子の作であり、うれしかったので、切りとっておいた(5月2日号)。 ともあれ、国民の新聞離れは大且つ急で、どうにも止まらない。それは、世界的な現象で、わが国だけの事情ではないのだが、どこの地区でも購読数は全戸数の半分以下になり、夕刊は十分の一に及ばないという。特に若者の新聞離れが予想外に拡大しており、夕刊の廃止は必至の情勢である。 全面広告は、あたかも、その没落直前の華やぎであって、後世研究に足る素材になるだろうと、自分はその収集を始め、今や百枚を超す量となった。やけのやん八と言えば、そうだが、そこに最後のアイディアをふりしぼっている企業や広告マンの必死の姿勢を評価しているのである。鷗外の句。 筆とれば若葉の影す紙の上 (文芸評論家) |
誌上互選より 高点句 | |||||||||||||||||||||||||||
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