目次9月号
巻頭言 「 チェンジ」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・例会
・例会風景
・没句転生
特別室
・アラレの小部屋
・インターネット句会
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・お便り拝受
・各地の大会案内
・編集後記

 


柳歩
整理  柳歩

吉崎柳歩
永井玲子
 

柳歩
清水信
橋倉久美子

たかこ

 

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21年 8月(188号)
21年 7月(187号)
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21年 4月(184号)

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21年 2月(182号)
21年 1月(181号)
20年 12月(18
号)
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20年 2月(170号)
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巻頭言


 チェンジ

 アメリカ大統領選挙におけるオバマさんのキャッチフレーズ「チェンジ」を拝借して、日本でも今回の選挙で民主党が圧勝して、政権交代を実現した。

 戦後、日本の政治は、細川さんや村山さんといった、自民党以外の総理大臣の時期も少しあったが、概ね自民党が政権を担って来た。一貫して政官財癒着の構図が続き、数々の不祥事などが発覚したのだが、選挙となると自民党が圧勝した。負けそうになると、小選挙区制度に変えたり、郵政改革、小泉劇場などで目先を変えたりして、国民の眼ををごまかしてきた。

「堪忍袋の緒が切れる」という言葉があるが、今回の民主党への風は、まさに緒の切れた堪忍袋の中から吹き出したきた強風なのだろう。
「このままでは駄目だ」という直感が国民の脳裏に働いたのかも知れない。 直感というものは、しばしば核心を衝くものである。政権交代は必然の流れだったのだろう。

 鈴鹿川柳会も、たかこ、柳歩政権?が誕生して八年目に入る。その時のマニフェストには、@例会を毎月開催し柳誌も毎月発行する(それまでは隔月開催、発行だった)。A席題を設ける。B会員費を年額四千円、誌友費を同三千円に各千円引き上げる。などとある。 以来七年間、この二人の体制が続く。鈴鹿市民川柳大会も七回手がけた。ホームページを開設してからも既に四年目である。二人が実権(?)を握り、好きなように(?)運営してきた。天下り官僚のように、役得と言えるものはないが、このままではマンネリが進み、「驕り」が生ずるかも知れない。

 鈴鹿川柳会には「句会部」も「編集部」も発送部」もない。「会計」以外はすべて二人の仕事である。  
党首、いや投手のたかこさんが内野ゴロを打たれれば急遽サードに走り、外野フライを打たれれば捕手の柳歩がレフトにまで走る。こんな状況では、今後エラーも多発するだろう。

 鈴鹿川柳会にも、役割分担などの「チェンジ=変革」は必要である。
                                                                         柳歩

 

すずか路より
ユーモアの小出しまだまだ先がある 沢越建志
貴賓席から見ると幸せそうな国 堤 伴久
タッパーを忍ばせて出る小さな胃 鈴木裕子
御先祖にすまぬ無職の墓参り 萩原典呼
叶わない夢ひとつずつ消してゆく 鍋島香雪
ゴルフして俄かセレブの軽井沢 山本鈴花
ガム噛み噛み仕事ができるプロ野球 山本 宏
フォアグラとキャビアを好む独裁者 高柳閑雲
合併で遠くになった投票所 鈴木章照
手伝いをするたび寺に頼られる 加藤峰子
不器用でいいさ一途に打ち込める 青砥英規
着付けして花婿の母できあがる 秋野信子
気にしてたままの流れに乗っている 寺前みつる
去年より隣に来ないお中元 山本喜禄
朝のコラム妻との話すれ違う 水谷一舟
祭りでもだれも来ぬから早寝する 加藤けいこ
ため口に変わり付き合い深くなる 西垣こゆき
お〜いお茶ペットボトルにだけ言える 松岡ふみお
辻褄を合わせるために化粧する 坂倉広美
冷夏なぞ何のとセミが鳴いている 橋倉久美子
席がえに期待している新学期 北田のりこ
雨降りも晴れも気になる農作業 高橋まゆみ
当たっても当たらなくてもいい予報 落合文彦
二人して行くこれからの向かい風 浅井美津子
捨てられず痩せる日待っている背広 加藤吉一
ポスターには賞味期限を書きなさい 長谷川健一
人生の一端を見る甲子園 竹内由起子
鳴るような気配受話器を置き直す 水野 二
独酌に見かねた妻が酌をする 瓜生晴男
鎌倉へはるばる孫の晴れ舞台 安田聡子
例えばに合った例えが浮かばない 吉崎柳歩
赤ペンを持って真剣勝負する 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

    
  187号から                                       永井玲子

気がつけば女難が消えていた手相    山本  宏
 
さぞかし華やかな話題をほしいままにされたのであろうと想像する。作者の少し自慢げな顔が目に浮かぶ。今はきっと、ハンサムな初老(? )の紳士でしょう。

何時でも目覚めれば朝わたし流     山本 喜禄
 何とも贅沢な暮らし振りである。でも、自由すぎるのって淋しくはありませんか、なんて余計なことは言いますまい。お元気でこの生活が続きますように。

給付金ぶくぶくぶくと泡になる     沢越 建志
 
様様な論議を呼んだが、結局配布された給付金。経済の活性化にどれほど役立ったであろうか。「泡になる」は的確な判断ではなかろうか。同感―。

究極のエコだろうなあ手洟かむ     鈴木 章照
 
ちり紙を使わないし、手も洗わないだろう。何も消費しない手洟は、確かに究極のエコだろう。でもちょっと汚いなー。柳人ならではの発想を見た。

鏡にはよい姿しか見せてない      青砥 英規
 
鏡は怖い代物である。寝ぼけ顔、落ち込んだ顔と共に、心まで映し出す。だから、嫌いなお返しをされないように、鏡には良い姿だけ見せる。いい考えである。

お返しのカタログで選るいらぬ物    橋倉久美子
 
いらぬ物とはきつい決め付けではある。先方はお好きな物をどうぞといったつもりだろうにと思うからである。しかし、心無いという謗りもあるだろう。

「行ってらっしゃい」となんだか嬉しそ 北田のりこ
 子どもだろうか、夫だろうか、声が弾んでいる。作者の留守に何をエンジョイするのだろうかと気になる。作者も楽しい時間を過ごしに行くのならいいのだが。

お帰りの声はとびきりはずませる    高橋まゆみ
 
掲載の五句と共に、この句も作者はどんなにか、かわいい奥様であろうかと思わせる。喜寿になろうとする老妻である私の大いに見習いたいところである。

夾竹桃の図々しさを見習おう      吉崎 柳歩
 
夾竹桃は夏の花木。7月頃からピンクや白色の花をつけはじめ10月頃まで炎天下に咲き続ける。「まだ咲いてるの」と言いたい程。図々しさは言い得て妙。

やりくりをすれば時間も貯まるはず   青砥たかこ
 
出来ることなら忙しい日のために、時間を貯めておきたいものである。例えば、煮炊きをしながら物書きをすれば、時間を貯めたことになるのだろうか。

                            (川柳展望社会員 箕面市在住)

8月22日(土)例会より
宿題「 痺れる 」 吉崎柳歩 選と評
  おばさんになるとそれほどしびれない 橋倉久美子
  抜歯後のうがい思わぬ方へ飛び 西垣こゆき
 秀 自分史にひとり痺れている升目 坂倉広美
マネキンのポーズ痺れたまま続く 吉崎柳歩
宿題「 まちがい 」 竹内由起子 選
  占いの女難の相はまちがいだ 長谷川健一
  宿題を間違えたのはおじいちゃん 吉崎柳歩
 秀 まちがいを母の涙に諭される 瓜生晴男
原爆のまちがい平和への祈り 竹内由起子
宿題「 まちがい 」 坂倉広美 選
  誤配ハガキ何ときれいな女文字 鈴木裕子
  ミスプリントのまま流れ出る噂 北田のりこ
 秀 まちがいは皆無白紙の答案氏 橋倉久美子
まちがった理屈で歪む股関節 坂倉広美
席題「 勝つ 」 清記互選 高点句
 9点 夏に勝つために太ったままでいる 青砥たかこ
 7点 誘惑に勝って寂しい夜になる(注)
(26.12.1) 川上三太郎に(
誘惑に勝って淋しい夜の鏡(正夢))という先行句があるという指摘がありました。
 
橋倉久美子
  勝ったのですぐに帰してもらえない 橋倉久美子
 6点 妻に勝つための努力はむだなこと 青砥たかこ
  言い勝ったあとが淋しい帰り道 西垣こゆき
 5点 勝つたびに寄付金が増す甲子園 加藤けいこ
特別室

口語文芸                                        清水信 

 鶴彬のことを長々書かせてもらったが、俳句で言えば、赤城さかえが生誕百年である。父は東大教授で国文学者の藤村作。その三男として広島に生まれた。両親は教育者だったが、反発するように、地下活動に入り「赤旗」編集部に所属した。東大卒後、松永妙と結婚、長女燿子を得るが、坐骨神経痛のため召集を解除される。昭和13年には、北海道の鉱山ストライキのため、単身赴任、昭和15年結核発病、その頃から句作をはじめ、加藤楸邨へ師事、『寒雷』『沙羅』に拠って活動。

 第一句集『浅蜊の唄』は昭和29年刊。清瀬村の国立療養所、東京第一病院、東京癌研究所などに入退院をくり返す内、離婚。第二の妻山崎聡子と再婚し、横浜に移住。

 昭和42年、結腸癌のため58歳で死去したが、晩年は『赤旗』『国鉄文化』『人生手帖』『全逓新聞』『療養新聞』等の句壇選者を勤めた。評論集に『俳句におけるリアリズム』がある。

・ふきげんに似て懐手いつまでも
・小春日の子等に囲まれビラを貼る
・霧の夜のさよなら彼に闘志もどれ

 その若き日の活動ぶりがよく分かる句である。藤村作は戦争中、北京で教職についていて識っていたが、その帰国を迎えての作がある。

・青柿や父子相逢へば国憂ふ

 このごろ、児童文学者の藤村純子と相識るようになり、いっそうその縁の不思議を思っている。口語文芸への挑戦を試みた作品を挙げる。

・浅蜊鳴かせ国への愛憎根かぎり
・すててこに西瓜にじませ稿進まず
・喪われた秋空のもとインコ埋める
・街は夜霧劇中の貧しさとわが貧と
・あす仕事始め泊船の巨きな尻

 赤城作品を読むと、自浄の思いに駆られると原子公平は言った。国を憂うることで入党していたのだ。清瀬時代、石田波郷や吉行淳之介と交流があって、一種のダンディを貫いた人でもあった。

 嶋田青峰の『土上』同人だった芝子丁種と激しい論争をしたが、赤城さかえの転向のいきさつや、「蔓延している現実べったりの、報告型表現」(望月たけし)への戦いや、口語文芸への傾倒を理解しないではおれない。

 その反体制の姿勢は、百年の歴史の中で輝いていると思われる。

                                                                 (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 幽霊 』
 1 2 あきらめが良くて幽霊にはなれぬ 岩田眞知子
   8 幽霊の組織へ動く黒い金 福井悦子
   幽霊もどこかに混じる盆踊り 吉崎柳歩
    7 起きぬけの顔ユーレイと間違われ 鍋島香雪
    水増しの患者に二本足が無い 沢越建志