目次11月号
巻頭言 「 五分間」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・みんなのエッセイ・その他
・大会案内
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

柳歩
飯田重樹
たかこ


柳歩

清水信
橋倉久美子
柳歩



 

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巻頭言


 「五分間」

 十月二十五・二十六日と郵政川柳全国大会に広島まで行ってきました。今月「リレー鑑賞」をお願いした重樹さんをリーダーに、東海ブロックから十名の参加でした。  

広島は竹細工で有名な「たけはら」の奥深い温泉ホテルが会場でした。
 さて東海ブロックのメンバーのSさんは、会でも最高齢者で九十三歳。前日は雨の中岡山城近辺散策も皆と一緒の足並みで、大会でも、お元気に何度も呼名をされ、終了後の「たけはら」の町並み散策も、一度も遅れを取らず歩いておられました。
 散策が終わって、JRの竹原駅から新幹線に乗るため三原駅まで鈍行に乗りました。その車中、Sさんは
「三原に着いたら、新幹線の発車まで五分しかない、構内でもたもたしていると間に合わないかもしれない」と何度もおっしゃるので、私はバッグを引き寄せ、すぐ降りられる姿勢でいました。短距離走なら負けない自信があったのです。三原に着いたとき、ひとりの男性が私の前にすっと立ち、ドアが開くと同時に、こっちだよと言うそぶりで走り出すのです。階段を上がると改札口が目の前に広がりましたが、さっきの男性が、左を指差すので左に向かって走りました。先には階段があって降りると少し左に「広島方面」の掲示板があるだけで、一瞬躊躇したところへまた男性が現れて、右だと言うのです。はるか右奥に「大阪方面」の表示。エスカレーターを駆け上がると、新幹線がドアを開けて待っていました。後続のメンバーが来るのを、入り口に右足を入れて仁王立ちで待ちました。今にも発車ベルが鳴りそうで、冷や冷やしましたが、次々メンバーの姿が見えたときにはホッとしました。

あの随所随所で先導してくださった見ず知らずの方、きっとSさんの危惧を帯びた話を聞いておられたのでしょう。御礼も言わず失礼しました。もちろん、Sさんを含む全員がきちんと乗ることが出来ました。

                                                                  たかこ

 

すずか路より
平和ボケ検事が被告席に居る 堤 伴久
ストーブを出して納める扇風機 山本喜禄
反省の酒居酒屋は酔いやすい 水谷一舟
行列に並んでもいい一人旅 廣瀬まさこ
三足のワラジで稼ぐフリーター 加藤けいこ
視覚より味覚で秋を感じ取る 松本諭二
歯が抜けて勝手の違う歯を磨く 西垣こゆき
ストップのスイッチ欲しい歯のドリル 松岡ふみお
鳩尾に入った虫が妥協せぬ 坂倉広美
肌身離さず持っているから傷もつく 橋倉久美子
患者さんでいいんじゃないの患者さま 北田のりこ
B級がA級になるグランプリ 落合文彦
暗い道疑心暗鬼ですれ違う 浅井美津子
もう一度ふとんにもぐる休肝日 鈴木裕子
よく流行る医者でやっぱり待たされる 竹内由起子
ご主人が倒れ夏草よく繁る 加藤吉一
経済に松茸不作響かない 長谷川健一
足音が迫る訃報を聞く度に 水野 二
空耳であなたの声を聞いた午後 竹口みか子
つきたてのお餅頬張りライブ聞く 野村しおひ
爽やかな風古刹巡りの背中押す 瓜生晴男
遠慮無く大きな欠伸して笑う 安田聡子
親バカと笑われたって子を庇う 鍋島香雪
言い訳が完璧すぎて怖くなる 小出順子
自叙伝にまだ隠された過去もある 加藤ミチエ
バーゲンの衝動買いで寸足らず 鈴木章照
お隣にたわわに実る柿がある 沢越建志
脳味噌が煮こぼれそうな夏だった 山本 宏
茶柱が立っていい日と信じ込む 高柳閑雲
とつぜんの進化息子に期待する 加藤峰子
早起きの甲斐なく時間持て余す 青砥英規
熟睡ができてしっとり朝のお茶 鶴田美恵子
わたくしの抜け毛をゴミ箱に捨てる 吉崎柳歩
私だけのために一日使い切る 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」


 201号から                                      飯田 重樹

あきらめがとっても早いのが救い     鍋島 香雪
 
諦めることは、未練もあり、なかなか難しいことです。逃げないで、正面からぶつかり、割り切ることが重要と思います。香雪さんから、その方法を教えて頂きたいです。またストレス解消にも大変効果があると思われます。

マネキンが確かに着てた服なのに     小出 順子
 
マネキンが着ていた服に一目ぼれし、衝動買いしました。夫から冷やかされました。でも自分が気に入った服なら、堂々と着ましょう。ただT・P・Оを忘れないで。

打ち水の乾かぬうちの夏を賞め      堤  伴久
 折角打ち水をしたのに、もう愚痴が普通ですが、猛暑を賞賛するとは、素晴らしいプラス思考の伴久です。

あさがおが閉じてしまうよ朝寝坊     廣瀬まさこ
 
朝寝坊の起し方に、この様な優雅な方法があるとは思ってもいませんでした。参考にさせていただきます。

遠雷にこっちへ来てと頼む夏       西垣こゆき
 
この炎天下お気持ちよく判ります。稲妻と雷鳴は嫌いですが、雨だけは欲しいものです。

さすが蝉鳴く声歳を取ってない      長谷川健一
 
実は蝉も地中生活が長く歳を取っています。しかし生きることに全力投球です。蝉を見習いたいものです。

夏バテで暦ばかりを追う暑さ       水野  二
 
お気持ち理解できます。しかし秋の好季節は短く、次は激寒の冬が待ち構えています。

年金があれば骨でも生きている      松岡ふみお
 
時事川柳です。戸籍上、最高百五十歳以上の老人が生存されていることが分かりました。また生死不明者も、沢山出てきました。親子の絆はどうなったのでしょうか。
 このような日本の現状を憂います。

                                       (郵政川柳会東海ブロック理事・愛知県在住)

10月23日(土)例会より
宿題「 減る 」 青砥たかこ 選と評
  秋ですね入道雲のこぶも減る 廣瀬まさこ
  底見えてきたのでケチケチと使う 北田のりこ
 秀 ローソクを吹き消すたびに減る余命 吉崎柳歩
腹切って二倍は早く減るお腹 青砥たかこ
宿題「 釘 」 西垣こゆき 選
  あの日から胸に刺さったままの釘 吉崎柳歩
  釘も止まらないあなたの二枚舌 廣瀬まさこ
 秀 賛成の釘が打たれている会議 加藤吉一
まっすぐに打てぬ親父のような釘 西垣こゆき
宿題「 釘 」 加藤吉一 選
  まっすぐに打てぬ親父のような釘 西垣こゆき
  どうせならまっすぐ打ってほしい釘 青砥たかこ
 秀 母が打つ釘だ急所にきいてくる 水谷一舟
延命は無用の釘が揉めさせる 加藤吉一
互選 席題「 めまい 」 高得点句
 8点 遊園地めまいをさせて金をとる 坂倉広美
 7点  めまいする言葉を僕は待っている 長谷川健一
  心地よいめまいあなたに見つめられ 吉崎柳歩
 5点 めまいにも耐えて続けるダイエット 吉崎柳歩
  野菜高家計がめまいおこしそう 北田のりこ
特別室

批評の明暗(2)ガニメデ
                                            清水信 

  ボクは、何でも読む。
『ガニメデ』49を読んだ。偏向詩人たちの集う豪華な詩誌である。49号は336ページという厚さだ。
 いつもは、詩人の紫圭子(豊川市中条町)から贈って貰うのだが、この号は新加入の人見邦子(津市一身田町)からも贈られた。

 詩人はもちろん偏屈が一番なので、その代表格である編集者の武田肇の書く「編集後記」が常に楽しみである。
 今回も『現代詩手帖』のつまらなさに噛みつき、第一回鮎川信夫賞受賞の谷川俊太郎の人選のまずさに食ってかかり、大井康暢の『静岡県詩史』のバカらしさを批判して、それは正当と言わなければならぬ。

 しかし卆寿の仲嶺真武についての発言は、どんなものか。
「九十年という歳月、その存在に、私は畏敬の念を抱く」と本人が書いていて、その「自己の宇宙的把握」に感動しているが、それはどうか。
 自分も卆寿で、去る7月9日には名古屋で「お祝いの会」を開いてもらったし、1113日には、鈴鹿でも「お祝いの会」を開いてもらうので、それを踏まえて言っても、90歳なんて中年だ。
 百歳以上の高齢者が、今の日本には帳簿上は五万人もいるけれども、役場がその存在を確認できるのは、三千人足らずに過ぎないという。死んだのに、届出させずに、年金を受けとっている極悪の家族がいるか、殺してウラの畠へ埋めたまま、知らぬ顔をしている家族がいるということらしい。

 中嶺は「ごめんなさい」という詩で、こう書いている。
「私は地球上の生きものである/体を温めながら地上の一隅で生きている/命を繋ぐために物を食べ、水を飲む/母なる大地よ、地面への私の放尿と脱糞を、お許し下さい」

 次の三句は、武田の近刊句集『ダス・ゲハイムニス』(銅林社刊)から引いたものである。

・修羅ふたり生きのなごりの春蚊かな
・チエリストがチエロを離るる夜の秋
・冬銀河この世に錠をおろす音

実はウラ表紙の広告から引いたので、句集は未見である。さらに後記から。
「詩というものが好きだ。定型でもなく、散文でもない、ひとかたまりのゴミのような」と三井葉子は言ってるそうで「ゴミ(芥)のような」が、良い表現だ。

                                                                 (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 頼る 』
 16 お互いをつっかい棒にして生きる 青砥たかこ
 12   ゴミ出しと溝さらいだけ頼られる 青砥たかこ
  9 体重が増えて男に頼られる 西垣こゆき
   7 便利屋に頼る先祖の墓まいり 福井悦子
  外国産に頼る危うい自給率 北田のりこ
  頼りたい頃に気付いた子との距離 加藤吉一