目次3月号
巻頭言 「 文芸賞を考える」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・例会風景
没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・みんなのエッセイ・その他
・大会案内
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

柳歩
川瀬渡風
たかこ


柳歩

清水信
橋倉久美子
柳歩



 
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巻頭言


 「 文芸賞を考える」

 今年も鈴鹿市文芸賞の表彰式が三月十二日に開催される。
私がこの賞を初めて知ったのが十七年前の第二回だった。これまで懸賞マニアだったペン先をちょっと目先の変わったほうへ向けたのが「童話」の応募だった。ビギナーズラックで奨励賞を獲得。その頃鈴鹿川柳会に入会したこともあって、第三回からは、散文型・短詩型とどちらにも応募していった。

 当時は応募者も多くて、選考委員の方たちのうれしい悲鳴も聞こえてきそうだった。最優秀賞の賞金は今も、働いていない主婦や年金生活者にはおいしいクラスである。だが、年々応募者が減ってきた。理由のひとつに最優秀賞をもらった部門にはもう応募が出来ないことがあった。昨年からその壁が撤去された。

 にもかかわらず、昨年応募締め切りに数週間前、事務局の方から、「川柳の応募が現在ゼロなんですよ」と電話をいただいた。ゼロは困るなあ、と一肌脱ぐ思いで応募用紙をめぼしい(気持ちよく出していただけそうな人)所へ郵送してみた。もらったほうは迷惑な話だっただろうと思う。応募しよう!と思う気持ちは自然と沸くものである。無理にこじあけても心のほとばしりには出合えない。半分お義理で出してくださって遭えなく没になってしまった人には顔向けが出来ない思いである。が、懲りない私はその方たちのリベンジを待つ、心から。

 もうひとつ三重には四日市文芸賞がある。清水先生がこちらも主宰されている。清水先生に敬意を表して小説を出している。ところが昨年またしても奨励賞を戴いてしまった。応募ぎりぎりに原稿用紙に換算したら八十五枚(五十枚以下の規定)になっていて必死で削った拙文中の拙文。読んでくださった方から来る来るブーイング。選考委員の方からも「テーマが絞られていない、登場人物が多すぎる」など不評。めげない私は、きっと賞を戴いたのは「出すぞ」という情熱が伝わったのだと自負している。

                                                                たかこ

 

すずか路より
酒粕の甘酒に酔う下戸の僕 瓜生晴男
向き合っているからたまにかくれんぼ 安田聡子
ときめいて今青春へ逆戻り 鍋島香雪
切り売りは出来ぬが肉はたんとある 小出順子
三回忌終えても慣れぬ独り酌 鈴木章照
絵に描いた餅を撒き餌に選挙戦 沢越建志
女医さんと言うから期待したのだが 山本 宏
よい花の香りはいつまでも続く 高柳閑雲
会員にさせて私を縛る店 加藤峰子
家族増え実家の冬は温かい 青砥英規
そこそこの仕合わせ捨てるゴミがある 堤 伴久
斎王に着物を着せる梅まつり 秋野信子
ポイントを溜めたお店が見当たらぬ 山本喜禄
食い違う意見で父をだまらせる 水谷一舟
甘酒もほろ苦くなる無縁寺 加藤けいこ
雨音を聞いても少し朝ねぼう 小川のんの
人生の春もこれからやって来る 松本諭二
あの空のどこかで兄は千の風 石谷ゆめこ
ストーブを片付けそうになる四温 西垣こゆき
習うより逃げ足早い物忘れ 松岡ふみお
曇天を走りつづけるカレンダー 坂倉広美
これ以上飛ぶには疲れきった羽 橋倉久美子
お化粧をサボりたいのでするマスク 北田のりこ
無理をして背伸びした分元通り 落合文彦
記念日の一人ぼっちの雪見酒 鈴木裕子
移植先の臓器の長寿まで祈る 加藤吉一
腰痛がまだまだ続く遠い春 長谷川健一
遮断機に苛立っている救急車 水野 二
じんじんと骨が解凍されるお湯 竹口みか子
わたくしを叱ってくれる人は好き 吉崎柳歩
特別機でたれ目のパンダご到着 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」


 205号から                                       川瀬渡風

異動でもしないと苔が落せない       橋倉久美子
まだ見えるのに見られなくなるテレビ    山本  宏
 「川柳」は、読む人に「合点(がってん)」がいかなければならない文芸である。NHKの番組「ためしてがってん」は、国民的に「がってん」の行く番組である。アナログでまだ見えるテレビを、地デジに変えろとは、がってんがいかない。

庭に来る野鳥も危険かも知れず       北田のりこ
木枯らしにまだしがみつくセミの殻       同
寒くても見たくなるのが流れ星       落合 文彦
 「川柳」は。子規の「病床六尺」に負けじと、自然に対する「観察力」や、「洞察力」を養うことによって、着想・発想の幅を広げることが出来る。「柳俳一如」を、快く受け入れる度量を持つことも大切と思う。

何もない毎日がいいそう思う        竹口みか子
気が若いこれは財産だと思う        沢越 建志
股引きを穿くふんぎりのつく寒波      吉崎 柳歩
張り紙の人と似ているどうしょう      小出 順子
生き様を笑ってござるスケジュール     鈴木 章照
 「川柳」は、しっかりと自己を見つめ、訴えてみる。それが、たとえ、「自嘲」であったり、「自惚れ」であっても、真摯に向き合ったものならば、読み手の心に「温み」を与え、和ませる。さらには、「ペーソス」さえ与える。

人知れず流す涙が美しい          鍋島 香雪
人柄を目から声から感じとる          同
寒空の中ではしゃげぬ犬と僕        松本 論二
 「川柳」は、人間の「機微」を詠うポエムでもある。
確かな目で、他人の心や、身体の動きを捉えてみる。
そして、他人は自分を写す鏡でもあることに気付いた時、納得する一行詩に仕上がって来る。

事務局に事務局長がいるばかり       吉崎 柳歩
人の世も男と女いて平和          山本  宏
お毒味を夫にさせる賞味切れ        水谷 一舟
くせになる美味しいものも喝采も      青砥たかこ
 「川柳」には、基本の一つである、「穿ち」と言う、「スパイス」を「隠し味」として、潜ませるテクニックを磨くことも大切なことだと思う。

   (遠くから「川柳すずか」のご発展を祈りつつ。
                                           川柳「路」吟社 同人 小田原市在住)

2月26日(土)例会より
宿題「 甘い 」 青砥たかこ 選と評
  フルムーン甘い言葉が出てこない 吉崎柳歩
  石垣の甘い石から崩れかけ 坂倉広美
 秀 攻め方の割りには甘い後始末 加藤吉一
スイーツもあるとそば屋さんのメニュー 青砥たかこ
宿題「 習う 」 沢越建志 選
  習い覚えた酒に人生狂わされ 水谷一舟
  外国語習い外人雇用する 水野 二
 秀 習い事講師が美人だと続く 松本諭二
免状の一つも欲しい習い事 沢越建志
宿題「 習う 」 北田のりこ 選
  左利きの人から習う左利き 吉崎柳歩
  習ったということだけは覚えてる 橋倉久美子
 秀 人生の息つぎ習いたいものだ 青砥たかこ
婚活で料理を習う男の子 北田のりこ
互選 席題「さっぱり 」 高得点句
11点 さっぱりですだけで通じる同業者 加藤吉一
 9点 失言後さっぱり映らない議員 加藤吉一
 8点  化粧取る武装解除をするように 橋倉久美子
 7点 開店はしたがさっぱり来ない客 吉崎柳歩
 5点 さっぱりの顔で戻ってきた離婚 沢越建志
  さっぱりと忘れた母を抱きしめる 鈴木裕子
特別室

白鳥忌とは何か
                                              清水信

 先きに触れた『河』の624号は、あたかも「白鳥忌」の特集号の観を呈している。レクイエムであって、俳句には、そういうジャンルが存在する。川柳界としては、何も争うことは無いのである。短詩型文学の構成員は、今や殆んど高齢者に他ならない。

 平成22年8月18日、91歳で逝去した俳人、森澄雄の命日を、白鳥忌という。死の前日が、先立った妻、アキ子の命日で、この日、最後の第15句集『蒼茫』が出来上ったのだった。
 つまり、遺書ともいうべき書を携え愛妻の許へと旅立ったのだ。
 先ず巻頭に角川春樹代表の百句近い追悼句があるのに、驚く。

・限りある命を生きて花の雨
・白鳥忌未完の空のあるばかり
・白鳥忌いのちの詩をこころざす
・ひとなくて落花を急ぐ百日紅
・生きるとは紫苑の丈の空の青
・落ち鮎の寂しきいのち箸にせり
・悲しみの置きどころなき九月かな

 ひとり角川代表だけでなく、全員が追悼句を寄せている。

   佐川広治
・さるすべり寝釈迦のごとく澄雄逝く
 小島健
・秋風の上を雲ゆく別れかな
 松下由美
・月光にいのち還りし車椅子
 横塚春江
・生きるとは残されること花カンナ

 さて、またその前日がエルヴィス忌である。まだ歳時記には登載されぬ新語だが、アメリカのロック歌手エルヴィス・プレスリーは一九七七年に自宅寝室で急死。呼吸器疾患に伴う心臓発作で43歳の死だった。睡眠剤、覚醒剤と薬びたりの晩年であった。
 福原悠貴
エルヴィス忌一番列車のベルが鳴る
 伊藤実那
エルヴィス忌落語を聴いて暮れにけり
 石橋翠
ジーンズの膝すり切れてエルヴィス忌
 角川春樹
エルヴィスや晩夏の雨が降りにけり

 他にも「エルヴィス忌今日もあなたの空であり・菊地悠太」や「夏逝くやジャン・コクトーの貝の耳・舟久保倭文子」や「迢空忌葛が夕べの雨こぼす・岡部幸子」などがあって、悼句は川柳界でも嫌うべきものではないのである。(河それからB)

                                                                                                                  (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 布団』
 15 住職の座布団だけがしびれない 岩田眞知子
 13 ふとんから柩 この世の旅終わる 吉崎柳歩
 12 座布団が用意してある天下り 岩田眞知子
 11 安い筈自分で布団敷く旅館 山本 宏
  8 病院の布団寂しい音がする 北田のりこ
  客布団圧縮されたまま五年 福井悦子
  酔い醒めてみれば覚えのない布団 関本かつ子