目次4月号
巻頭言 「 哀悼」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・例会
・例会風景
・没句転生
特別室
・アラレの小部屋
・インターネット句会
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・みんなのエッセイ
・各地の大会案内
・編集後記

 


柳歩
柳歩整理

柳歩
くのめぐみ
 

柳歩
清水信
橋倉久美子

たかこ

 

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巻頭言


 「哀 悼」

三重県川柳界の重鎮が相次いで亡くなった。昨年十二月十一日に市岡靖之助さん、本年一月十一日に稲垣さだ子さん、三月十一日には奥野誠二さんが天国に旅立ってしまわれた。   

 靖之助さんは平成七年八月、番傘桔梗川柳会に入会、平成十三年から亡くなられるまで三川連の理事を務められていた。また、桔梗川柳会の機関誌「木の芽」の編集にも携わり、初句集を発刊した直後のご逝去。享年七十四歳。

 絶好調待てのサインももどかしい
 花道を通りそびれた主役です
 エンディングノートに書いたありがとう

 さだ子さんは、一月十日の三重番傘創立六十周年の句会には、元気なお姿を拝見したのに、翌日夜急逝されてしまった。三重県の川柳界の草分けで、連盟創立メンバーのお一人である。三重番傘の世話役だけでなく、平成十六年まで、三川連の理事も務められていた。享年八十四歳。

 お目出度の鶴にあやかるまで生きる
 愛いっぱい何時でも胸の底にある
 にぎやかな会だ一緒に踊ろうか

 誠二さんは三重県を代表する川柳作家の一人であった。年初、体調不良により三川連の理事を伊勢星人さんに交替されたい旨、私に要請があった。一月末の理事会で承認されたのだが、永年理事を務められ、三川連を引っ張っていただいた。また、三重川柳協会機関誌「川柳三重」の編集にも、ずっと携わってこられた。享年七十八歳。

 死んだ娘が夢に出てくるほうほたる
 ひとりぼっちがいちばんの敵らしい
 伊勢弁を使うとちゃんと出る力

 三人の大先輩の享年は、決して早いというわけではない。しかし、亡くなる直前まで川柳を愛し、川柳を詠まれていたお姿を拝見していた私たちにとっては、早すぎるご逝去であった。

 お三方の情熱を引き継ぐことをお誓いし、心から哀悼の意を表したい。

                                                                  柳歩

 

すずか路より
賑やかな猫のロミオとジュリエット 山本喜禄
裸まつり神もはだかが好きらしい 水谷一舟
腹痛はもしやきのうの非常食 加藤けいこ
ダイエット開けては閉める冷蔵庫 小川のんの
とつぜんの夫の客に耳を立て 廣瀬まさこ
少しだけ迷子でいたい時もある 青砥英規
旅のチラシ安い方から見てしまう 西垣こゆき
神様の習作らしい僕の顔 松岡ふみお
逃げられぬ誘いピンクの月が出る 坂倉広美
引き取り手ないか今年も出ぬ内示 橋倉久美子
喫煙所健康捨てに行く所 北田のりこ
飲みっぷり夫をしのぐ婿が来る 高橋まゆみ
歓声と悲鳴PK戦つづく 落合文彦
序でにと後回ししてもう忘れ 浅井美津子
ごめんねと詫びて二個買う桜餅 鈴木裕子
少し無理言って相手の器量読む 加藤吉一
小女子を煮込む匂いのする白子 長谷川健一
親孝行まず健康でいて欲しい 竹内由起子
年金にセールス足の向きを変え 水野 二
心境の変化か孫がやる気出す 瓜生晴男
ハクモクレン鳥の群れかと見違える 安田聡子
飲めぬけど見ますお酒のコマーシャル 鍋島香雪
値札見るまではうっとりしたドレス 鈴木章照
ジョーカーにされて戻ったブーメラン 沢越建志
第三のビールに負けているビール 山本 宏
薬屋でお酒と米を買ってくる 加藤峰子
遅疑逡巡吾がためにある四字熟語 堤 伴久
さくらさくらさくらは蕾誠二逝く 寺前みつる
袴穿き卒業生の顔になる 秋野信子
瓶の蓋まだわたしにもある出番 吉崎柳歩
ちょっとだけ不幸なところ好きになる 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」

    
  194号から                                      くのめぐみ

涙溜めホントの男泣いている      高柳 閑雲
 
俺は男だ、泣かないが胸の内に涙を溜めて平気な顔をしている。ホントの男に惚れてしまいそうですね。

あれ何をしに来たんだろこの部屋に   鈴木 章照
 
あります、あります。「私って三歩の○子よ」と、言ってた人が何人いることやら。モチロン私も、普通のことですが、ちょっと淋しい普通ですね。

世の中の武器焼き尽くせどんど焼き   山本  宏
 
こういう句に出会うとホッとします。焼き尽くせと言っておられる。わたしもどういう形で焼き尽くす行動に参加できますでしょうか。

心根の良い人声も透きとおる      加藤 峰子
 
言葉って、こころの匂いがするわと言った友達がいました。わたしもどん底の時、たしかに匂った言葉をもらったことがあります。峰子さんもきっとすきとおった声をしていらっしゃるのではないでしょうか。

現実と夢の間で待つ三十路       青砥 英規
 いいですねえ、現実と夢の間で、不安だった頃が懐かしい。もう今は、現実九十パーセント。夢十パーセントの間で、オバはんになっていくのがちょこっと淋しい。

耳鳴りのそのまた奥の風のおと     坂倉 広美
 
自分にしか聞こえぬ、風の音を聞かれた時は、どんなときだったのでしょうか。何度も、何度も読ませていただきました。

女湯でさりげなく見る比べてる     高橋まゆみ
 
うふふと、思わず笑ってしまいました。誰でもしますよね。私もしたことありますよ。

ふりだしに戻るすごろくから学ぶ    長谷川健一
 
ふりだしに戻るのは、ホント勇気がいると思います。何度も、行きつ戻り不安にかられたこともありますもの。すごろくって辛抱すれば必ずゴールできますもの前向きな健一さんに万歳と申し上げたい。

                                            (愛知県在住)

3月27日(土)例会より
宿題「 友だち 」 青砥たかこ 選と評
  君は本私は酒を友とする 長谷川健一
  友だちじゃないと言われてほっとする 小川のんの
 秀 友だちということにして逢っている 吉崎柳歩
置き傘のような友だち持っている 青砥たかこ
宿題「 外れ 」 浅井美津子 選
  仲間外れミス日本を妻にして 水谷一舟
  予想外出口調査を狂わせる 水野 二
 秀 桁外れのダイヤやっぱり諦める 鈴木裕子
音符から外れた祖母の子守り唄 浅井美津子
宿題「 外れ 」 吉崎柳歩 選
  予想外出口調査を狂わせる 水野 二
  中心を外れた独楽の軽い音 坂倉広美
 秀 外れではあるが一応とっておく 橋倉久美子
いい方に外れ文句は言わせない 吉崎柳歩
席題「 回る・回す 」 清記互選 高点句
 9点 観覧車キスもせぬうち降ろされる 橋倉久美子
 7点 近道をしたはずなのに回り道 小川のんの
  皿見ると傘で回してみたくなる 青砥たかこ
 6点 苦手な人が来た 逆回りする散歩 北田のりこ
 5点 作法など知らぬがちょっと回しとく 橋倉久美子
  カーナビに回され元の道に出る 加藤吉一
特別室

朋誌清評(1)                                      清水信 

 歌誌は毎月十三冊戴く。自分は歌人でもないので、有難く思っている。

『短詩形文学』の近刊2月号は、通巻637号であり、老舗と言えよう。その時評欄の中で、東歌子が「歌人とは何だろう」と問いかけている。
 防人や東歌の作者を、誰も「歌人」とは呼ばないはずである。しかし、彼らの遺した歌は、千三百年も後の我々の心を衝っている。「歌人」という肩書きは果して、短歌という文芸に対して必要なのか。そう絶えず問い続けて多くの歌誌を読んでいるという。正論だろう。
 巻頭作家は鷲尾酵一の紹介である。気骨ある90歳だという。映画「鶴彬・こころの軌跡」を観ての感慨。

   ・九十のよはひ愧ぢてむ鶴彬国家に抗ひ二十九にて獄に果つ

 鶴彬は一九三八年獄死した川柳作家であることは、本誌の読者なら、誰しも知っているはずである。
 鷲尾は一九六三年に「ゴーガン忌」によって角川短歌賞を得て、鮮烈なデビューを飾ったのに、その後の厳しい社会評のために、歌壇から追いやられた人である。次の如き、その強い反歌壇精神を見よ。

   ・流亡のこころなく歌壇上位で物言ふ者らをこころでころす
・権力に同じ流亡の精神はや無みせしか蔑みされよ歌会始選者
・悲惨なる生といふとも崇高なり松倉米吉・江口きち

  歌誌『火の群れ』からの抄出という。

『短詩形文学』は多摩市発行だが、歌稿送り先は三重県多気町の釜田美佐になっており、事実上の編集は、この人がやっているらしい。
 鈴鹿市の南部湧子さんが参加しているので、毎号楽しんで読んでいる。
 今回は、夫君と参加した北京旅行を素材にした連作十首である。

 ・国慶節祝ふ北京の街のいろ目抜き通りはおしなべて赤
 ・公園の太極拳の輪に入りて北京市民とひとしきり舞ふ
 ・登り来てはるか見渡す長城の嶺の紅葉うすら陽に照る

   この歌誌、3月3日に東京・日本青年会館で全国集会を開く。丸木正臣のエッセイが、いつも充実している。

                                                                 (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 嵐 』
 15 口火切り嵐の中に立たされる 高木みち子
 10 休校になって嬉しい嵐の日 吉崎柳歩
   9 点 声援の嵐が重いアスリート 濱山哲也
    嵐来る兆しか今日の妻無口 山本 宏
   8 五割引嵐のように客がくる 鈴木章照
    だんまりが続く嵐になる予感 岩田眞知子
   7 点 店仕舞い嵐の如く客が来る 松岡ふみお
    熟年の恋は嵐になりにくい 橋倉久美子
    青年を嵐の中で鍛え抜く くのめぐみ